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4つの選択肢から、生成AIの「目」を育てる

生成AIの能力は日々目覚ましい進歩を遂げていますが、決して万能とは言えません。時に事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション」や、学習データに起因した「知識の偏り」など、実用化に向けて乗り越えるべき課題は依然として多く存在します。
だからこそ、組織の垣根を越えた情報共有や、内部での継続的な学び合いが不可欠です。JAMSTECでは、研究や技術に携わる職員が集まり、定期的に勉強会を開催。現場での気づきや課題を共有しながら、技術への理解を深めています。
だからこそ、組織の垣根を越えた情報共有や、内部での継続的な学び合いが不可欠です。JAMSTECでは、研究や技術に携わる職員が集まり、定期的に勉強会を開催。現場での気づきや課題を共有しながら、技術への理解を深めています。
生成AIによる判断を複雑にする要因の一つが、深海ならではの環境です。海は、水深200mを超えると次第に光が届かなくなり、1,000mを超えるころには、太陽の光すら届かない「暗黒の世界」に。こうした条件が、生成AIによる正確な識別をさらに難しくしているのです。

川會
深海は光が極端に少ないために照明等の撮影条件によって対象がぼやけたり、海水の濁りや浮遊物で視界がさえぎられたりすることも多いんです。
さらに、ごみは変形していたり、堆積物に覆われていたりと見た目が一定ではなく、生成AIによって欲しい情報を抽出するためには工夫が必要です。生成AIが得意な撮影条件は何で、どのような情報であれば正確に抽出できるのか試行錯誤しています。
さらに、ごみは変形していたり、堆積物に覆われていたりと見た目が一定ではなく、生成AIによって欲しい情報を抽出するためには工夫が必要です。生成AIが得意な撮影条件は何で、どのような情報であれば正確に抽出できるのか試行錯誤しています。
今大切なのは、短期的な結果ではなく、着実に未来へとつながる道筋を築くこと。地道な積み重ねが、生成AIを実際の現場で使える技術へと近づけています。
生成AIとともに働くという選択
川會さんが初めて生成AIを使ったのは、2022年。アメリカのOpenAI社によって公開された「ChatGPT」がきっかけでした。論文の要約や、趣味で集めていた野鳥の音声データ解析などにその能力の一端を見て、面白さを感じたと言います。
それから数年。今では「使う側」から、その技術を研究や解析に応用する「開発する側」へ。生成AIの可能性を追求しながら、人間とのより良い協働関係を模索しています。
それから数年。今では「使う側」から、その技術を研究や解析に応用する「開発する側」へ。生成AIの可能性を追求しながら、人間とのより良い協働関係を模索しています。

川會
「生成AIに仕事が奪われる」という考え方も、一部にはあるかもしれません。でも私は、生成AIはライバルではなく、「一緒に働く仲間」のような存在だと思っています。生成AIの得意とする部分をうまく取り入れることで、私たち人間が本来向き合うべき本質的な探究に、もっと集中できるようになる。そう実感しています。
生成AIを「仲間」と捉えるからこそ、誤りが生じる可能性も理解しておかなくてはいけません。そのうえで、誤りを可能な限り減らしていくことが、開発する側である川會さんの重要なミッションとなっています。

川會
わずかな誤りが成果全体の信頼性を左右する恐れがあり、出力結果には細心の注意が必要です。そのため、妥当性を見極める確認のプロセスが欠かせません。
開発側としては、その確認作業の負担を減らすためにも、誤りを出しにくい設計を意識する必要があります。根本的なミスを完全に防ぐことは難しいですが、今後の伸びしろも大きいと感じているんです。
開発側としては、その確認作業の負担を減らすためにも、誤りを出しにくい設計を意識する必要があります。根本的なミスを完全に防ぐことは難しいですが、今後の伸びしろも大きいと感じているんです。
未完の技術だからこそ、
進化の過程を楽しみたい
JAMSTECが保有する膨大な観測データと、進化を続けるAI技術。この二つが掛け合わさることで、海洋・地球科学研究には新たな可能性が広がっています。
川會さんが取り組む深海映像データの解析技術のほかにも、海岸に打ち上げられた漂着ごみを写真から自動で判別・定量化する手法や、気候データから将来の植生分布を予測する生成AIモデルの開発……。さらには、海水に含まれるマイクロプラスチックの種類や量を解析するプロジェクトも進んでいます。
川會さんが取り組む深海映像データの解析技術のほかにも、海岸に打ち上げられた漂着ごみを写真から自動で判別・定量化する手法や、気候データから将来の植生分布を予測する生成AIモデルの開発……。さらには、海水に含まれるマイクロプラスチックの種類や量を解析するプロジェクトも進んでいます。

川會
生成AIの導入によって、人間が担ってきた作業の一部が効率化されています。そうして生まれた時間を、新しい価値づけや未知の現象の発見といった、より本質的な探究に充てられるようになります。生成AIによって、膨大なデータを整理・活用できるようになれば、深海の環境や生態系に対する理解もより深まっていくと思います。
そうした変化の渦中で、川會さんは今、次なるチャレンジを見据えています。


川會
今後は生成AIを活用して、より複雑な情報にも挑戦したいと考えています。たとえば、深海には急な崖やなだらかな斜面、山のような隆起などさまざまな地形が映し出されますが、「この地点はこの地形」と全てを既存のカテゴリに当てはめられるわけではありません。
しかし、生成AIであれば「このグループに近い」「この地形に類似している」など、一つのカテゴリに断定できないような地形や状況も柔軟に分類できる可能性があります。こうしたAIによる類似性といった視点が加わることで、従来の分類には収まりきらなかった、曖昧な情報も整理できるようになるのではないかと思っています。
しかし、生成AIであれば「このグループに近い」「この地形に類似している」など、一つのカテゴリに断定できないような地形や状況も柔軟に分類できる可能性があります。こうしたAIによる類似性といった視点が加わることで、従来の分類には収まりきらなかった、曖昧な情報も整理できるようになるのではないかと思っています。
定型的な作業の効率化だけではなく、未知の可能性を探るヒントにもなる生成AI。目的や状況に応じて活用法を模索する工程自体が、川會さんにとってのやりがいになっています。

川會
生成AIは、まだ完成された技術ではありません。でも、だからこそ一緒に育っていける感覚があります。試して、考えて、また試す。その繰り返しが、研究開発の楽しさにつながっています。
深海に広がる「まだ知らない」を少しずつ明らかにしていく。川會さんが向き合っているのは、世代を超えて受け継がれてきた長期的な課題と、地球や生命の本質に迫る問いです。生成AIという新たな仲間とともに、その探究の航海は、これからも静かに続いていくでしょう。
会社紹介 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、海を舞台に地球環境や海洋資源に関する研究を行う公的機関。有人潜水調査船「しんかい6500」や、海洋データの公開システム「J-EDI」などにより、科学の発展と社会への貢献を目指している。 |
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仕事内容 | 深海映像や画像データの解析システムを開発・運用。膨大な映像アーカイブの中から、生物やごみを自動で判別・記録する仕組みを構築。教師データの作成、生成AIを用いた開発・評価などを担う。 |
仕事のやりがい | 生成AIを活用し、深海映像の解析や分類といった作業の効率化に取り組むことで、研究者がより本質的な探究に集中できる環境づくりに貢献できる点。また、生成AIを「育てていく」感覚や、試行錯誤を繰り返しながら開発する過程が、大きなやりがい。 |
現状の課題 | 深海特有の環境によって、撮影された映像の質が一定ではなく、正確な識別が難しいこと。また、生成AIが誤認識するリスクと、それに伴う確認作業の負担軽減が技術的な課題となっている。 |
今後の目標 | 単なる分類だけでなく、海底地形のパターン認識など、より複雑で曖昧な情報の解析にも生成AIを応用したい。生成AIとともに深海の未知なる領域に迫り、未来の研究に貢献できるデータ基盤を育てることが目標。 |
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選択肢には、深海でよく見られる、かつ見た目が似ていて識別が難しい生物をあえて並べるのがポイントです。実際にこの形式でAIに回答させたところ、正答率は50%未満。まだ専門家の目には及ばず、改良の余地があると感じています。