教えて!
「仕事」と「スポーツ」の
関係

ケガ、結婚・出産、引退後のセカンドキャリア
ルーティンをこなして平常心で挑んだリオ五輪
大学1年生で世界一という目標が視野に入り、2016年のリオ五輪でそれは現実となりました。決勝では因縁の相手と戦うことになり、しかも試合残り45秒まで劣勢の状態。
「世界選手権で3連覇しても、五輪はこれで終わりなのか」という思いが頭をよぎったのですが、そこからスイッチが入り、残りの時間は無我夢中で…。実はそのときのことは全然記憶にありません。でもそういうときこそ、いかに普段通りの自分が出せているかが、勝負の決め手となるんですよね。

五輪では「日本を代表している」という重圧がかかります。世界選手権で3連覇を果たした私は、周りからは勝って当たり前と思われていたかもしれませんが、実際には対戦相手との力は僅差。この評価のギャップがとてもプレッシャーになっていました。
こうしたときでも過度に緊張しないために、私はルーティンを大切にして平常心を保つようにしています。ルーティンは、朝起きたら歌う、試合の前は必ず左足からレスリングシューズを履くなど、小さなものから競技に関わるものまでいくつもあります。それをこなせると気持ちが落ち着くし、「今日は大丈夫だ」とも思います。
どんなに練習しても本番でうまくいかないと意味がありません。それは就職活動でも同じことだと思います。スポーツをやっている学生の皆さんなら、日々のルーティンがある人もいると思いますが、それをうまく活用して常に平常心でいることを大切にしてもらえたらと思っています。
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1
朝の15分だけ集中した時間を作る
納得のいく就活を行うためには、きちんと準備を行う習慣が大切。まずは規則正しい生活を意識しつつ、時間を決めて仕事研究やエントリーシートの作成など就活に取り組む習慣を日々の生活に組み込もう。
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2
部活を終えたらSNSよりニュースをチェック
就活は情報をインプットすることも重要になる。部活で疲れていて、考える作業を避けたいときでもなんとなくSNSを見て時間を費やすよりは、気になる企業のニュースをチェックすることを優先しよう。
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3
寝る前に面接のイメージをする
寝る前の心身共にリラックスしているタイミングで、面接がうまくいくイメージをしよう。具体性を持ってイメージを膨らませるほど、本番当日もプレッシャーに動じず臨むことができる。
就活準備に役立つルーティンワーク例
後回しになりがちな就活はあらかじめ日常に組み込む
毎日、忙しい学生生活では就活に取り組むことが後回しになりがち。「毎日この時間は就活関連のことをやる」と決めて、短い時間でもいいので取り組むようにすると、準備不足に陥ることがなくなる。
手術しても復調しない足の負傷
リオ五輪後、長年痛みに悩まされてきた足の親指の付け根の手術をすることにしました。しかし手術後も思ったようには回復せず、得意のタックルのときに踏み込むと痛みが出て自分のレスリングができませんでした。

結婚をしたのは、そのような状況の中でした。こうした人生の転機を迎えつつ、ケガの影響で100%レスリングに打ち込めないことや、女性としての今後のキャリアを考えたときに子どもがほしいという思いが重なって大きくなっていきました。そして実際に妊娠出産を経て、子育てと競技の両立の難しさや、復調しない足の状態など、直面するいくつかの問題が理由となって引退を決意しました。
引退後のキャリアについて
2022年に引退し、その翌年一般社団法人スマイルコンパスを立ち上げました。メンバーの一人は2011年になでしこジャパンのメンバーとしてW杯で優勝したサッカー選手の岩渕真奈さん。彼女は私のリハビリ仲間でした。そしてもう一人はリオ五輪の会見のときに知り合ったテニス選手の穂積絵莉さんです。
この二人と競技の枠を超えて手を組んで、スポーツの楽しさを伝える活動を始めることにしたのです。多くのアスリートの先輩たちが、さまざまな活動のために団体を起こしたり起業したりしています。まだ、現役だった頃から「私たちも何かしていきたいね」という話をしていたこともあり、引退後、何年か経ってから動き始めるのではなく、今、動こうと…。そのようなことを考えて、あえて引退直後から活動を始めました。
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業界研究大図鑑社団法人の代表理事としての活動
スポーツの楽しさを伝えるイベントはいくつも開催されているものの、その多くはアスリートをゲストとして招くものがほとんどです。
そのような中で、自分が団体の代表理事として、組織を運営するという大きな挑戦をする意味は、主体性を持って自分のやりたいことをやるためです。
スポーツには勝ち負けを競う面白さだけでなく、できなかったことができるようになっていく楽しさや、それに向けて頑張る力を育てること、スポーツを通じてコミュニティーができることなどいい面がたくさんあります。そういうことを健常者のみならず障がい者や、スポーツを楽しむ環境が整いづらい離島に住む子など多くの子どもたちに伝えたいと思っています。
