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コミュニケーション
の基礎講座 - 第1回
コミュニケーション
の基本
第1回
コミュニケーションの基本
最初に、利用者さんとのコミュニケーション全般について意識しておきたい、基本的な点を確認しておきましょう。期間が限られている介護実習において、利用者さんとより良い信頼関係を築けるような関わり方とはどんなものでしょうか?
実習では「うまくいかない」のが当たり前!
まず知っておいてほしいのは、たとえ介護実習でコミュニケーションがうまくいかなくても、焦る必要はないということ。利用者さんとのコミュニケーションは「支援の基盤」ともいえるほど重要ですが、その能力を短期間で伸ばすことは難しいものです。「まだ上手にできないからこそ実習で学んでいるのだ」という意識を持ち、一歩一歩成長していくことをめざしてください。
学生さんからは、「利用者さんと会話が続かない」という悩みをよく聞きます。沈黙の時間が続くことで気まずくなり、あたふたしてしまったり、思いがけないことを口走ってしまったりする経験は誰にでもあるもの。 しかし、「コミュニケーション=会話」と考えるのは早計です。肝心なことは、利用者さんに心地良い時間を過ごしてもらえるようにするとともに、相手の気持ちをしっかりとくみ取ることのはず。そうした意味では、会話をせずそばに寄り添う時間や、非言語コミュニケーションが必要とされる場面もあります。相手の表情やしぐさなどから見えてくるものもあるでしょう。 「何かを話し続けなければ」という思い込みは捨て、何のために利用者さんと関わっているのか、本来の目的を思い返してみることが大切です。
「開かれた質問」と「閉じた質問」の使い分け
利用者さんに何かを質問したいときは、目的や内容に応じて尋ね方を工夫してみましょう。具体的には、「閉じた質問」と「開かれた質問」の使い分けを意識することで、より深いコミュニケーションを実現することができます。
- 閉じた質問
「はい」「いいえ」など限定的な答え方になる。
例:〇〇がお好きですか? - 開かれた質問
自由度が高く、様々な回答の仕方があり得る。
例:なぜ、〇〇がお好きなんですか?
閉じた質問は、話が苦手な人でも答えやすく、短時間で情報を集めやすいというメリットがあります。一方で、話し手が自身の気持ちまで表現することが難しく、コミュニケーションが広がらなかったり、事務的なものになりかねなかったりという点では注意が必要です。
開かれた質問は、うまくいけば会話のキャッチボールが続き、相手の思いやニーズをくみ取りやすい方法です。ただし、話し手には「自分が言いたいことを要約して伝える」という技術が必要になるため、答えにくいと感じる人もいるでしょう。「最初は閉じた質問をして、場が和んできたら話題を絞って開かれた質問をする」というように、両者の性質を踏まえた使い分けができると理想的です。
話題になりそうなテーマを事前に調べておこう
いざ利用者さんとコミュニケーションを取る場面になったら、緊張して頭が真っ白になってしまった――。こうした事態を避けるためにも、まずは「相手がどんな状況か/何をしているか」にしっかりと注目してみてください。その場面に沿った自然な問いかけにより、話がスムーズに進みやすくなるはずです。
例えば、食事の場面であれば、「今日の煮物、おいしそうですね! 味付けはいかがですか?」「あまりお食事が進まないようですが、魚はお嫌いですか?」といった具合です。利用者さんの服装や持ち物について触れるのもいいでしょう。
コミュニケーションがうまくいかない背景には、「共通の話題の不足」が隠れていることも少なくありません。特に高齢者施設の場合は、利用者さんと実習生の間に大きなジェネレーションギャップがあります。 そこで、当時の出来事や流行したものなど、話題になりそうなことを事前に調べてみるのも一案です。時代背景を知ることが会話の糸口をつかむきっかけになり、自信を持って実習に臨めるようになるはずです。もちろん、特定の利用者さんとの関わりを深めたい場合にも、事前の情報収集やアセスメントが大切になります。
相手に失礼のないマナー&積極的な姿勢が必須
利用者さんと関係が深まっていき、和気あいあいとした雰囲気になるのはうれしいものです。しかし、いくら話が盛り上がったとしても、マナー違反の言葉遣いになってしまうのはNGです。「やばい」「めっちゃ」「~っす」といった言葉は、実習生が利用者さんに対して用いる表現としては望ましくありません。もちろん、「タメ口」も同様です。実習中は、基本的にどんな場面でも敬語がふさわしいといえます。言葉遣いを崩すことは関係性を深めることとイコールにはならないと、肝に銘じておいてください。
また、実習生だからこそ特に意識したいのが、あいさつの重要性です。介護施設は利用者さんにとって生活の場であり、入居型の施設であればなおさら、家のような存在だといえます。「実習は利用者さんが過ごすプライベートな空間におじゃますること」だと考えれば、明るく元気にあいさつすることがいかに大切か分かるはずです。
加えて、わずかな時間でも積極的に利用者さんと関わり、率先してコミュニケーションするようにしましょう。そうした姿勢があってこそ、短い期間でも信頼関係を築いていき、介護過程をスムーズに展開することにつながります。
拒否されたら、連絡先を聞かれたらどうする?
会話や介助をしようとしたとき、利用者さんから拒否されてしまうケースも考えられます。それは必ずしも実習生の関わり方が原因とは限りません。長い時間をかけて関係性を築いてきたスタッフさんと比べて、まだなじみの薄い実習生との間で話したり、介助されたりするのに抵抗を感じる利用者さんもいるからです。悲観的になりすぎず、「そういうこともある」と冷静に受け止めましょう。
もちろん、拒否された利用者さんを避けるようなことをせず、その後の実習を通して少しずつでもコミュニケーションを図っていきたいところです。
一方で、利用者さんから連絡先を聞かれたり、プレゼントを渡されたりすることもあるかもしれません。利用者さんとの関係性が深まるのはいいことですが、私的なつながりを持つとトラブルにも発展しかねません。連絡先などの個人情報は伝えないようにしてください。
また、善意の表れだったとしても、利用者さんから金品を受け取るのはNGです。利用者さんの状況によっては、いったん受け取り、後ほど何らかのかたちで返却する選択肢もあり得ますが、いずれにしても実習指導者への報告・相談が必須です。