

介護・福祉業界を選んだ理由、入職の決め手を教えてください
- 伊丹
- 臨床心理士として病院に就職しようと思っていましたが、実習で障がい児入所施設に行ったことで福祉業界を意識するように。施設ではうまく過ごせているけれど、成長した後、この子たちはどうなるんだろうと漠然とした疑問を感じ、病院ではなく地域で彼らをサポートする仕事がしたいとこの道を選びました。み・らいずのことは合同説明会で知ったのですが、ほとんどの法人が臨床心理士としての募集がなく、「臨床心理士かぁ…」と苦い顔をするなかで、み・らいずの方々は私の資格に興味を持ち、「福祉ってこんなに楽しいんだよ!」とイキイキ話してくださって。ここなら障がいを持つ人たちをずっと支えられ、発信すれば私も何かを変えられるかもしれないと思えたことが入職の決め手になりました。
- 畑中
- 私は子どもの頃から保育園の先生になると決めていて、高校もわざわざ保育科のあるところを選んだほど。もちろん大学も幼児教育学科に進んだのですが、いざ就職活動をする段階になってもあまり気が進まなくて。気づけば就職先が決まっていないのは私だけ…そんな時に友達から「実習に行ったすごくいい保育園がある」と聞かされ、すぐ電話したんです。もう、ここからがちょっと神がかっていて(笑)、電話した翌日が最終だった園見学にギリギリ滑り込み、多くの志望者がいた狭き門を潜り抜けて合格!これで憧れのプロジェクト保育(テーマに沿って主体的に学ぶプログラム)に携われると、本当に嬉しかったことを覚えています。


- 柿窪
- すごくパワフルでドラマチック…それに比べたら私なんて…実は私、小さい頃から夢がなくて、大学や学部も何となく選んだという感じ。就職活動もやりたい仕事がないので何となく始めて、何となく色々な企業を受けて。だから、まったく決まらなくて、これじゃダメだと就活を一旦リセットして、改めて始めた時に気になったのが福祉だったんです。ちょうどその時、おおとり福祉会の体験があって「介護施設ってきっと暗いんだろうな」なんて思いながら参加したら、これが想像とまったく違ったんです!お年寄りも職員もみんな笑って、楽しそうで、元気があって、それを見て「私、ここで働かなくちゃ」って、もう直感ですよね。ここならきっと私も成長できると思えたのが入職の決め手です。
- 藤崎
- 大丈夫、柿窪さんも十分ドラマがありますよ。私は新卒のみなさんとは違い、保育士からの転職なんですね。前の仕事もとてもやりがいがあったのですが、もっと自分にぴったりの仕事ってないのかなと考えるようになって。そんな時、以前、友人が施設に実習に行ったと言っていたのを思い出して、施設もアリだなと。その日のうちにネット検索して見つけたところをリストアップ。片っ端からHPを見ていきました。なかでも気になったのが阪南福祉事業会が運営する児童養護施設「あおぞら」。働きながらボランティアに参加して、施設での様子を体感しながら採用が掛かるのを待って応募へ。やっと、自分にしかできないと思える仕事への第一歩を踏み出すことができたんです。
仕事をするなかで感じる課題は何ですか?

- 藤崎
- 施設に入所している間は何人ものケアワーカーがそれこそ過保護なくらい子どもたちの世話をするわけですが、一定の年齢が来て施設を出たら、何もかも自分でしなければならない状況へと変わります。伊丹さんもおっしゃっていましたが、その後の彼らをどう見守ればいいのかというのは私たちにとっても課題。里親さんとか、心を許せる大人がそばにいてくれる子はいいですが、帰れる場所は施設だけという子も少なくありません。施設を卒業する前から、ひとり立ちした後の子どもたちを支えてくれる存在があればと思いますね。
- 伊丹
- そうですね。私も子どもたちと一対一の関係を結ぶ大切さを実感しています。み・らいずにも相談機関がありますが、特定の大人というのとはちょっと違うかなと。一人の支援員がすべてをケアするのは難しいですし、一人ですべてをとなると逆に支援員が疲弊してしまう。私自身もまだ1年目なので体力、メンタルの両面で壁にぶつかることもありますが、先輩方に適切なアドバイスをもらうことで乗り越えられる。子どもたちにもそんな距離の近い存在が必要ですよね。
- 畑中
- 課題というのとは少し違うかもしれませんが、1年目に最初に担当することになった子どもたちを縁あって3年間担当していて、今年はその子たちを見送る年になるんです。なので、きちんと見送ることが出来れば、と思っています。新米だった頃は四苦八苦しながらの保育でしたが、3年目の今、やっと「自分の保育」が出来るようになってきていて…。私、何でも本気なんです(笑)鬼ごっことか、トランプでもつい本気で子どもたちに勝ってしまうんですよね。それで子どもたちも、「先生もう一回!」とやる気になっているみたいです。でも、こうして成長できたのも子どもたちのお陰。私たち保育士は子どもを育てる側ですが、本当に教えられることが多いなと感じています。

- 柿窪
- それは介護の現場でも感じます。高齢者と一括りにしても様々で、色々な身体状況の方がいらっしゃいますし、考え方も価値観も人それぞれ。そんな方々と接することで私たちは成長させてもらっているんでしょうね。ただ最近、私自身が少し残念に思うことがあって。デイサービスに通ってくださっていた方が突然利用休止になってしまったんですね。ご家族の意向もあって他のデイに移られたんですが、通所開始時と比べると明らかに状態が良くなっていた矢先に来られなくなってしまったのが残念で。ケアマネージャーやご家族ともっと連携できていれば、おおとりのデイを続けていただけていたのではないか、その方の状態がもっと良くなっていたのではないかと反省しています。
携わる仕事のやりがいを含め、学生のみなさんにメッセージをお願いします
- 藤崎
- 小学生から18歳まで幅広い年齢の子どもたちと接するので、低学年の子には大好きと慕われても、思春期の子からは暴言を吐かれることも。でも、口ではそう言いながら、こちらの反応を見て距離を測っているケースもあって、じっくり関係を築くことで少しずつ分かり合える喜びを実感しています。児童養護施設に来る子は凄まじい体験をしているだろうから…と最初は構えていましたが、意外と普通(笑)。素直に接することが大事だと思いましたね。人と接する仕事には答えもマニュアルもありませんが、先が分からないからこそ面白い。自分の働きかけ次第で子どもたちが変わっていくやりがいを、学生のみなさんにもぜひ味わってもらえたらと思います。
- 畑中
- 子どもによっては家庭で過ごす時間より、園にいる時間の方が長い子もいます。それだけ密接に関わるので保育士が担う責任は重いですが、一方で自分が育てたという自信にもつながります。特に私は3年間、同じ子どもたちを担任として受け持ってきたので、思い入れはひとしお。本気で向き合ってきた子たちから「大きくなったら先生みたいに(保育士に)なる」と言われると、自分のしてきたことが伝わっているんだと嬉しくなります。最近は「休みは?」「お給料は?」「離職率は?」と条件ばかりを気にする学生が多いと聞きますが、好条件の仕事を選んでもその仕事を好きでなければ続けることはできないはず。子どもが好きで、保育士になりたいと思う気持ちがあるのなら、ぜひチャレンジしてほしい。子どもを育てるこの仕事は、必ず選んで良かったと思えますから。
- 柿窪
- 今は現役を引退されている方も、聞けば昔は大工だった、競馬の騎手だったなど豊富な人生経験を持つ方ばかり。そんな高齢者の方々と関係を築き、敬い、時に軽口を叩きながらふれあえる仕事が私を成長させてくれていると実感します。お年寄りと接する仕事ですから、昨日まで元気だった方が突然亡くなられ、最期のお別れすらできなかったという悲しい経験もしています。でも、だからこそ今、この瞬間のふれあいを大切にしたいと思えるのではないでしょうか。この仕事に出会うまでの私はまったく自分に自信が持てなかったけれど、おおとり福祉会で働くことで成長できた。学生のみなさんにも、そんな素晴らしい経験をしていただければと思います。
- 伊丹
- 私も同感です。関わっている人も、自分も成長できる仕事って素晴らしいと思います。み・らいずは小学生から大人まで、障がいのある人もない人も幅広い人と関われる仕事です。関係を築くなかで、よそよそしかった子が自分の感情をぶつけてきたり、目を合わせることすらしてくれなかったお年寄りがうつむいていた顔を上げてくれたり。ほんの些細なことですが、自分が関わることで確実に何かが変わっていくのを体感できるのがこの仕事のやりがいです。私も最初は臨床心理士の資格に捉われた仕事選びをしていましたが、資格や出身学部に関わらず自分が興味を持てることを仕事にしてほしい。福祉に興味がなかったとしても、一度、施設を見学するだけでもそのやりがいを実感してもらえると思います。

