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Q テーマ解説
インタビュー

「デジタル田園都市国家構想」実現に向けて、国の力や支援を最大限活用したアイデアを大学生ならではの視点で提案してください

中央省庁等グループ(人事院)

小川 純子さん/人事院 人材局企画課長補佐
奥村 知加さん/内閣官房 デジタル田園都市国家構想実現会議事務局参事官補佐 


教育、経済、医療、福祉、そして暮らし。私たちの暮らしに様々な場面で関わる国家公務員の仕事。今回は、そんな国家公務員の人事管理に関する公正の確保や利益保護等を行う人事院さんから出題をいただきました。プロジェクトに臨むにあたって、課題の見つけ方から活用すべき国の力をどのように探すのかまで、企画のヒントを人事院の小川さんと、内閣官房で「デジタル田園都市国家構想」に携わる奥村さんのお二人にお話を伺いました。

影響範囲が広いからこそ大変だし、やりがいがある。

───テーマについてお聞きする前に、まずは国家公務員の仕事について教えてください。

小川さん きっと学生さんに限らず多くの方が、国家公務員がどんな仕事をしているのかあまり知らないと思うんですね。でも日本で生活をするなら、実はありとあらゆる場面で国家公務員の仕事が関わっています。大学生の皆さんに身近なところでいえば、例えば、大学の設置基準、基準がなくてどんな機関でも「大学」と言えてしまったら「大学卒業程度」というような目安は成り立たなくなってしまいますね、学生の十分な修学環境を担保するためにも必要です、これは文部科学省ですね。スーパーに買い物に行くと、食品に、賞味期限などの表示がありますね、こうしたルールには消費者庁や農林水産省、厚生労働省などが関わっています。
アルバイトをすれば、最低賃金や労働者を守る就業条件など厚生労働省がルールを定めています。挙げればキリがないのですが、周りを見渡すとほぼすべてのものに国の仕事が関わっている。これらは、どこかの時代で社会課題を解決するために新しく創られたルールです。それを運用する中でまた生まれた課題に対処するために改善したり新しいルールを更に作ったり。その繰り返しが今のみなさんの暮らしの基盤をつくっています。

───昔作られたものがあって今の日本があるように、今の日本を守ると同時に未来の日本もつくっているんですね。

小川さん まさに、そのとおりです。政策を実行するには、法令からガイドライン、啓発や広報、補助金や税制、審査や承認、監視、国による直接事業など、効力やアプローチの仕方の異なるツールが沢山あります。国家公務員の仕事というのは、これらを使いこなして、今の社会課題を解決し、国民の安心・安全を守った上で、今後の国の方向性の旗振りをして民間企業や国民と一緒に、より良い未来をつくること、というとイメージしやすいかもしれません。国全体の今を守って将来を創るルールですから、影響範囲がとてつもなく広い。違う分野と齟齬が生じて全体でマイナスの効果にならないかなど、考えなければいけないことは沢山あるので、大変さはもちろんありますが、とてもやりがいがあります。


───仕事をする上ではどんな姿勢で臨んでいるのでしょうか?

小川さん 私個人として、とても大事にしていることが2つあります。一つは、本当に必要な政策を考えるために、現在と将来の2つの視点でつねにみなさんの声やニーズにアンテナを張っておくこと、もう一つは、主体は国民のみなさんであるという意識を忘れないことです。近年、以前にも増して、一人一人の国民の意識や意向が多様化しているし、その人を取り巻く環境も多様化しています。その中で、この2つを意識しながら、今の日本を守って将来の望ましい姿を描いていくというのは本当に難しいことですが、決して忘れてはいけない視点だと思っています。今回のプロジェクトを通じて、学生のみなさんにも「日本のことを考える、良い社会をつくるっていうのはこういうことなんだな、国家公務員ってこういうことをしているんだな」というイメージを少しでも持ってもらえたら嬉しいです。

社会課題の解決に、国の力を使ってもらいたい。

───出題テーマについてもお伺いしたいと思います。まず「デジタル田園都市国家構想」について教えていただけますか?

奥村さん 簡単に言えば、デジタルの力を活用して、地域の個性を活かしながら、地方の社会課題の解決・魅力向上の取組を加速化・深化していくことを目指す構想です。デジタルの力を活用した地方の社会課題解決を、国が様々な施策により支援することで、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指します。解決すべき課題としては、人口減少や少子高齢化、東京圏への過度な一極集中などを挙げていますが、それぞれの地域ごとの様々な課題が成長の原動力になると考えています。

───今回は、なぜこうしたテーマになったのでしょうか?

小川さん 大きく三つの理由があります。一つ目は、初めにお話したように、皆さんの生活のあらゆる場面に国は関わっていますが、普段そのことをあえて意識して生活することはないと思います。ですが、行政サービスの受け手であり、政策の影響を受ける皆さんが、国の政策に関心をもち、意見を出していくことは、この国をもっと良くするためにとても重要なことです。デジタル田園都市国家構想には、ほぼすべての府省が何らかの形で関与していますし、皆さんにとって身近な地域の課題を扱っていますので、国の政策が皆さんにどのように関係するのかイメージしやすいのではないでしょうか。今の仕組みを前提にするのではなくて、社会の課題を解決するために、「国を使う」、「国を巻き込む」、「国を動かす」そういう気持ちで、視野を広く、自由に考えてもらいたいですね。

───「国の力を使う」! そう聞くと大きなことができそうな気がしますね。

小川さん二つ目は、地方自治体や民間企業だけでなく個人も、国と一緒になって未来を考えることが必要だということを伝えたいという思いです。デジタル田園都市国家構想では、国や地方自治体、民間企業、教育機関、NPOをはじめとする様々な団体、一人一人の国民、多様な主体が協力しあって、様々な社会課題に取り組んでいます。今後、社会に出ていく学生のみなさんにも、このテーマを通じて、是非「みんなの力を合わせてできることはすごいんだ」ということを実感してもらい、自分もどんどん参画していきたいと思ってもらえたら嬉しいです。

──────三つ目の理由はなんでしょうか?

小川さん最後は、「デジタルの活用」という点です。デジタル田園都市国家構想は、社会課題の解決に対するデジタル技術の可能性に着目した構想です。やはり技術分野の活用というのは、現在、そして将来の社会課題の解決や社会変革の大きな鍵となるものです。私自身は今30代後半ですが、我々の世代よりも今の学生のみなさんのほうがずっとデジタルに慣れ親しんできた世代だと思うんですね。だからこそ、上世代が思ってもみなかったような発想が生まれると思います。皆さんのアイデアで私自身も含め上世代を驚かせたいということと、その反応に接することで、学生さん自身にも、デジタルネイティブの強みやその発想が社会で一層必要とされていることを実感してもらいたいと思っています。

出発点は自分とその周りにしつつ、誰もが取り残されないアイデアを。

───テーマの中で「国の力や支援を最大限活用したアイデア」とありますが、国の活用ってなかなか想像しづらい部分があると思っていて……。どんな活用ができるのか、何か参考になるものはありますか?

奥村さん じつは、2022年度の夏と冬に「Digi田甲子園」としてデジタルを活用した社会課題解決の取組の募集を行いました。夏は地方公共団体から、冬は民間企業・団体から取組を募り、有識者の審査と国民によるインターネット投票により優勝を含む受賞事例を決めるというものです。そのような優良事例の横展開を、国は交付金などを活用して支援しています。インターネット投票対象事例はサイトで公開しているため、これらの取組は参考になるかもしれません。

  

小川さん また、デジタル田園都市国家構想に限定したものではありませんが、一般的に、省庁ごとに、または横断的な分野ごとに、その現状や取組内容をまとめた「白書」というものを作成しています。解決したい社会課題がある場合、一度関連した白書を見てみるといいかもしれません。課題に対する認識も深まりますし、どんな政策が行われているのか、参考になると思います。


───「Digi田甲子園」と「白書」ですね。これは大きな参考になりそうですね。

   

小川さん この国は、国や自治体のものではなく、この国に暮らす人たちのものです。今回のプロジェクトに関しては学生のみなさんの「今日本に暮らす一人の若者」としての視点を大切にしてほしいと思いますし、この先の日本の主役は若いみなさんです。「全体のことを考えたらこれぐらいが妥当かな」「こうしたら上の世代に受けるかな」というような考え方ではなく、自分ならどういうふうにしたいか、自分の家族や同年代の友達、後輩など年下の子供たちならどう思うか。そうした近い視点から生まれるアイデアを期待したいですね。


───なるほど。課題を探すために、まずは“自分事”で考えてみることがヒントになりそうですね。一方で、そうやって考えるときに気をつけたほうがいいことはありますか?

小川さん 自分や身の回りを出発点に将来を見据えたアイデアを考えてほしいのですが、それによって誰かが不利益になったり、暮らしにくくなったりする可能性を無条件に許容しないでほしいですね。デジタル田園都市国家構想では「誰一人取り残されない」ことが重要なコンセプトの一つです。例えば、行政手続をオンライン化するなら、デジタル技術に不慣れな方へのサポートも同時に考えますよね。「将来を考えて確実にこちらの方がいい」というアイデアでも、それによって不便さを感じるだろう人がいるのならその人へのフォローも併せて考える必要がありますし、実質的な不利益はない又は少ないけれども感情的に受け入れがたいということであれば、伝え方等の工夫や丁寧な説明で納得いただけるかもしれません。審査項目として「誰もが快適に」という項目を挙げているとおり、持続可能性を考えつつ、みんなが納得できて、みんなを大事にできるアイデアであるかは、一番大事なポイントと考えています。

20年後の自分は、どんな生活をしているだろうか。

───先ほど「まず、自分や身近な人、地域から考えて……」というお話がありましたが、例えば国全体の課題を解決するアイデアでなくてもいいのでしょうか?

奥村さん 人口減少や少子高齢化、東京圏への一極集中などは、日本全国共通の課題として、みなさんも認識していると思います。ですが、日本にはいろんな地域があって、当然風土や文化も違えば生活環境自体も様々ですので、抱えている課題も違うはずです。私たちも課題を掘り起こして分析する、ということを行っていますが、そこでも挙がってこないような課題が当然あると考えています。「デジタル田園都市国家構想」は、まさに地域の個性を活かしながら、そのような地域の課題を含めて解決していく構想だと考えています。


───確かに。その地域の人にしか見えてこない課題を見つけて解決できたら、それは住んでいる人たちにとってすごくいい提案な気がします。



奥村さん 地域が抱える課題って、もちろん一つだけではなくて、その組み合わせも色々だと思うんです。取組によっては「ここの人たちには役立つけど、別の地域の人たちには他の取組の方が適切かもしれない」ということもありえます。一見同じように見える課題でも、地域ごとで解決策が変わることもきっとあると思います。

小川さん 国全体を網羅する解決策を考えようとすると、すごく難しいですし、アイデア自体が薄くなってしまう可能性があります。もちろん、そういった国全体の大きな社会課題に挑戦しても構いませんし、一部の地域や、年配の方や移住者など、特定の人たちの課題に着目した解決策を考えていただいても構いません。それに、自分たちの地域が抱えている課題の解決策は、横展開でほかの地域にも応用できて、結果的に国全体の課題解決につながる例もたくさんあるんですよ。


───ありがとうございます。最後に、改めて学生の方々へ期待することを教えてください。



小川さん あまり難しく考えずに、まずは、自分自身、家族、友達、住んでいる街など、身近なところを見渡して臨んでもらえたら嬉しいですが、思いつかない時は、例えば10年後、20年後の自分を想像してみてもいいと思います。どんな生活をしているだろうか、子供がいるだろうか、親は何歳になっているか、そんなことを想像してみると、「将来こんな社会だったらいいな」という気持ちが出てくると思います。それが見つかったら、今に視点を戻して、じゃあ、今のまま時間が経ったとしら、将来「良いな」と思った社会になっているだろうか、なっていないなら、どうしたら望ましい社会に近づけるかというふうに考えてみると良いかもしれません。先ほどもお話したように、自分たちのより良い未来のために、国を使う、巻き込む、変えるというふうに視野を広げて自由に考えてもらえたら、きっとみなさんと私たちの力が合わさって素晴らしいアイデアが出てくるのではないかと思います。


───本日はお話いただきありがとうございました!


■デジタル田園都市国家構想について
・デジタル田園都市国家構想の詳細はこちら 
・デジタル田園都市国家構想に関する動画(Digi田甲子園の事例等)はこちら

小川 純子 さん
人事院人材局企画課長補佐

2007年人事院入庁。新人事評価制度導入にあたっての国家公務員の任用法令の改正、全府省合同研修の企画・実施をはじめとする人材育成業務、裁判類似の仕組みによる個々の国家公務員の人事上の不利益救済等の業務や厚生労働省・内閣府への出向を経て、2022年10月より現職。新卒を中心とした国家公務員採用の広報戦略に携わる。


奥村 知加 さん
内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局参事官補佐

2015年財務省入省。通貨制度や財政投融資、地震保険制度に係る業務や、近畿財務局・預金保険機構への出向を経て、2022年7月に内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局に出向。同構想の推進・地方創生などに携わる。