<中編>投資とは「エネルギーを投じて、未来からお返しをいただくこと」です。投資家・藤野英人さんに聞く、「ありがとう」が最強の投資である理由

前回は、受動的な姿勢から脱し、自ら人生を切り開くことの大切さについてお話をお聞きしました。ただ、そう聞いても、生まれ育った環境や能力など「生まれた時からの環境や持ちもので人生は決まってしまう」と感じてしまう人もいるかもしれません。
投資家として、また、経営者として、多くの人を見てきた藤野さんは決してそうではないと言います。そして、そこで重要なことは「ありがとう」という言葉にあると言うのです──。いったい、その真意とは? 藤野さんに聞いてみましょう。
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プロフィール

藤野 英人(ふじの・ひでと)さん
レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役会長兼社長・最高投資責任者。1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。著書に 『投資家が「お金」よりも大切にしていること』、 『投資家がパパとママに伝えたい たいせつなお金のはなし』など。
Q2.成功している人に共通していることはありますか?
A.「まわりの人を幸せにしているかどうか」です。みなさんも「ありがとう」という最強の投資を続ければ、きっと人生は幸せな方向に進んでいくはずです。
近年、「太親」とか「親ガチャ」というような言葉をよく聞くようになりました。生まれ持った才能や家庭環境、頭のよさなどの能力で人生が決まると思っている人がいるのかもしれませんが、それは成功の必要条件ではありません。
もちろん、実家がお金持ちだったり、生まれ持って何かの才能に秀でていたりすると、成功しやすくなるかもしれません。でもそれは、「必ずしも必要なこと」ではありません。最初は何も持っていなかったとしても成功して幸せに生きている人は、世の中にたくさんいますよね。
私の経験上、成功している人に共通していることは「まわりの人を幸せにしているかどうか」です。たとえば芸人だったら多くの人を笑顔にすることだし、ビジネスだったら商品やサービスで多くの人に喜んでもらえること。いかに相手が喜ぶことをするかが何よりも大事です。
まわりの人を幸せにすることが、自分の成功や幸せにつながる。そのことに自分自身で腹落ちすることが、成功への一番の近道だと私は思っています。人の不満や不安、悲しみを発見し、それを埋めてあげる人が、真の意味での成功者なんですよ。ぜひ、この発想を若いうちに手に入れてください。
そのために、一番小さなところで日々実践できるのは、「ありがとう」という最強の投資をすることです。
まわりの人に「ありがとう」と伝えるのは、誰もが簡単にできる上に、コストをかけずに人を幸せにする方法です。
自分が今ここに存在しているのは人の役に立っているから──。人間は、そう思いたい生き物です。だから、一番ほしいのはこの言葉。「ありがとう」と伝えることは人を幸せにする、最強の投資です。
もちろん、「ありがとう」と伝えたからと言ってお金が生まれるわけではないですし、すぐにリターンがあるわけでもありません。でも、感謝できる人の信頼って上がります。そして、信頼は未来にお金を生む可能性があるんです。
僕は、「お金」と「信用」だと、信用の方が大事だと思っています。クレジットカードの「クレジット」は、信用という意味ですよね。信用されている人は、お金を借りることができます。このように信用はお金を生むけれど、お金は信用を生みません。ビジネスも同じで、お金とは結局、信用を積み上げた先に生まれるものです。
「信用」は、「ありがとう」と感謝することをはじめに、ウソをつかない、時間や約束を守る、明らかに不愉快なことを言わない… など、基本的なことから積み重ねていくことができます。
もちろん、誠実に信用を積み上げて生きたからと言って、必ずしもビジネスで成功できるとは限りません。信用があれば絶対に成功できるほど、世の中は甘くない。
でも、もしビジネスで成功できなくても、友達に恵まれたり、パートナーと出会えたり、プライベートでいいことが起きるはず。少なくとも、信頼されない人より、信頼される人の方が確率が確実に上がります。
投資とは、「エネルギーを投じて、未来からお返しをいただくこと」です。「ありがとう」の投資は、あなたの人生を幸せにする。それは間違いないことだと思います。
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スタッフクレジット:
取材・執筆:あかしゆか
漫画:水縞アヤ
撮影:菊田 香太郎