
モーダルの中身
大学では専門を絞らず、グラフィック、プロダクト、空間デザインなど多領域を学んだ松本さん。企業選びにおいても、まずは領域を絞らずメーカーやITなど多分野の企業を見比べることから始めました。
就活について考え始める大学2年生の時にコロナ禍になってしまいました。先輩たちの活動の様子がまったく見えなくて不安だったこの時期におこなったのが、学外のオンラインワークショップへの参加です。美大生や院生、デザイン系の専門学生のほか、企業で働く人など多様な人たちの考え方を知り、視野が広がりました。彼らとの交流で不安・悩みの共有や情報交換もでき、就活への意識を高めることにもつながったと思います。
インターンシップへの参加を考えたのは2年生の冬です。春開催のプログラムに参加しようとエントリーしたら、結果は不合格。準備不足だった自分の甘さを痛感し、対策を始めました。まず取り組んだのがポートフォリオづくりです。外部のワークショップや展覧会参加用に作成したものをブラッシュアップし、企業の選考でも存在感を示せるクオリティを追求しました。
同時に進めたのが企業研究。マイナビなどの就活サイト、デザイナー専門の就活アプリに登録し、情報収集を始めました。まずは自分がよく知る大企業をチェックしていましたが、それだけでは限界があります。そこで美術・芸術系大学から採用している企業を調べていくと多岐にわたる業界・業種が洗い出され、選択肢が広がったのです。
その結果、3年生の夏のインターンシップでは、メーカーを中心にエントリーすることにしました。選考に向けて重視したのはエントリーシートです。なぜその企業に応募するのか、自分はどういう人間なのか、何ができるのか。そうした“自分の軸”がしっかり伝わる文章にこだわりました。また、ポートフォリオもエントリーする企業に合わせてカスタマイズし、アピールポイントや作品の見せ方に変化をつけました。
“自分の軸”は、企業研究を続ける中で形成されていったように思います。例えば、採用サイトを見ていると、全体のデザインやメッセージからその企業のキャラクターを読み取ることができます。それと自分の考え方、性質などをすり合わせることを繰り返すうち、企業と自分それぞれに対する理解を深めることができました。
8社にエントリーし、実際に参加したのは3社。いずれもオンライン形式で、数日間にわたって課題に取り組み、最終的にプレゼンするというプログラムでした。1社目のメーカーの課題はプロダクト開発。大学では発案からフィニッシュまで5週間かけていたところ、3日間で仕上げなければなりません。限られた時間の中でアイデアを出し切る手法、企画の進め方を実践的に学ぶことができました。
担当者とのやりとりを通して、その企業での働き方や業界・会社の特性を感じられるのもインターンシップのメリット。2社目の大手家電メーカーでは企業におけるデザイナーのあり方を知り、3社目の企業では、IT業界ならではのフットワークの軽さ、仕事のスピード感に驚きました。三者三様のプログラムを経験し、それぞれの特徴をよく理解できたと思います。
ポートフォリオは第一印象を決める最重要アイテム。自分のポリシーを表明するものです。だから、伝えたいことがひと目でわかるタイトルやレイアウトにこだわりました。それを実感したのは、ある企業の採用実習。課題の講評時に「松本さんらしくないね」と言われたのです。事前に私のポートフォリオを丁寧に見てくださっていたからこその指摘でした。企業は、ポートフォリオを通して学生の本質を見極めているんですね。
実は、冬のインターンシップでは第一志望の大手家電メーカーの選考に漏れてしまいました。一度は「終わった」と思いましたが、本選考への希望を捨てずに就活を続けました。そして最終的には内定を獲得。開発・研究・広告クリエイティブも自社で一貫しておこなうスタイルは、クリエイターとして私がめざす姿です。インターンシップを通して企業研究と自己分析を深めたおかげで、理想の企業に出会えたと思っています。
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