何をやる仕事？
航空機を構成する、機体、エンジン、装備品などが所定の強度や精度で正しく機能するように点検・保守するのが航空整備士の仕事。航空機は部品点数も多く配線や構造も複雑で、さらに機体内のシートやギャレー（乗客に食事を提供するための航空機内にあるキッチン）内の装備品も航空整備士が担当するので、作業内容は多岐にわたる。そのため、通常はそれぞれ専門のチームに分かれて、点検・整備・修理作業を行っている。
また、空港での重要な業務としてグランドハンドリングがある。主に空港の駐機スポットで行う業務で、よく知られているものとしては、到着した航空機のパイロットに指示を送り、周囲の安全を確保しつつ航空機を正確な停止位置まで誘導する作業がある。他にも荷物の搭降載、航空機とターミナルをつなぐパッセンジャーボーディングブリッジの移動、自力で後進できない航空機を空港の誘導路まで押し出すプッシュバックなど、さまざまな作業がある。
航空整備士の業務を大別すると、「ライン整備」、「ドック整備」、「ショップ整備」の3種類がある。
「ライン整備」
空港の駐機場（スポット）に駐機された航空機の点検・整備のことで、フライトごとに行われる。出発時間までの短時間で、エンジン、機体外部の状況、車輪、コックピット（操縦室）内の計器などをチェック、異常が発見された場合は修理や部品交換を行う。また運行が終わった後にも、消耗部品の交換や機器の点検・整備を行う。
「ドック整備」
機体をハンガーと呼ばれる格納庫に入れて行う大掛かりな点検・整備のことで、一定のフライト時間を経過した旅客機に対して行う定期点検。1～2カ月かけて、エンジン、車輪、コックピット内など、航空機を構成するさまざまな部品の点検・整備を行う。不具合があれば、修理や部品交換を行う。また、金属疲労の有無を確認する非破壊検査や、機体の再塗装などもドック整備中に行う。
「ショップ整備」
航空機の心臓部と言えるエンジン、油圧系統部品、電装部品などの重要部品を機体から取り外し、精密に点検・整備を行うのがショップ整備で、工場整備とも呼ばれている。エンジンは専用工場で分解し、不良箇所や磨耗部品の修理や交換を、自動航法装置や自動着陸装置は、防塵機能を施した特別の部屋でコンピュータ機器の点検・整備を行うなど、非常に高度な専門知識と経験、技術が必要とされる作業。上位資格を持つ各装置のエキスパートが作業に携わる。
航空整備士になるには、国家資格である「航空整備士」を取得する必要があり、学科試験と実地試験に合格する必要がある。受験するには整備経験が必要なため、大学の技術系学部や専門学校を卒業し、航空会社や航空整備会社に就職して経験を積んでから受験する。または、「国土交通大臣指定航空従事者養成施設」となっている航空専門学校に入学し、在学中に小型機の整備などができる資格取得を目指す方法もある。
航空整備士の資格は、取り扱える機体の大きさや種類によって、5種類の資格がある。「二等航空整備士」、「二等航空運航整備士」は主に小型機の点検・整備を行い、「一等航空整備士」、「一等航空運航整備士」になれば、大型機の点検・整備を行える。
なお、「航空運航整備士」と「航空整備士」の違いは整備の業務範囲。「航空運航整備士」は業務範囲が軽微な修理、保守に限定されているが（いわゆる「ライン整備」）、「航空整備士」は「ライン整備」に加えて、「ドック整備」も担うことができる。
また、「航空工場整備士」は、ショップ整備（工場整備）に携わるために必要な資格で、航空機を構成する部品整備を行うスペシャリスト。機体構造関係、機体装備関係、ピストン発動機関係、タービン発動機関係、プロペラ関係、計器関係、電子装備品関係、電気装備品関係、無線通信機器関係の9つの専門分野に分かれており、担当者は限定して整備作業を行う。
