面接
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面接もエントリーシート(ES)と目的は同じ、「企業が採用したい」と思えるような情報提供です。 ESは基本的に文字情報であり、一方的に送るものであるのに対し、対面で行う面接は学生と企業側の間でインタラクティブに行われる双方向コミュニケーションになります。
この「双方向性」は面接の最も重要なポイントです。実践的コミュニケーション能力とも表現できますが、これは決して上手なプレゼン能力だけを意味するものではありません。「双方向」ですから、自分が意見を述べるだけでなく、相手の意見をしっかり聞き取れなければ双方向のコミュニケーションは成立しません。社会人が学生に対し「コミュニケーション能力が必要」「コミュニケーション力がない」というのは、この双方向性を理解していないことが多いからです。一方的なスピーチやプレゼン能力はコミュニケーションにおいて、ただの一要素でしかありません。
また面接では、さまざまな質問が行われ、中には返答に困るものもあるでしょう。しかし専門分野を持っている理系学生は、「エントリーシート編」の基本で押さえた「自己PRと志望動機が柱」という方針に変わりありません。基本に沿って双方向コミュニケーションができることが面接対策といえます。
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面接の実際
面接の実際
面接は段階や目的によっていくつか種類があり、理系の場合、グループワーク(GW)/グループディスカッション(GD)、個人面接、集団面接、技術面接、社長/役員面接などがあります。全部が順番通り行われるのではなく、大抵、この中のいずれかが組み合わされます。
自己PRと志望動機を柱として答える面接の例
国立大機械工学科3年 総合電機メーカー・生産職へのES情報
自己PR
私は研究で鍛えた粘り強さに自信があります。実験がうまく行かないときは研究室に泊まり込みで作業することもありますが、必ず「原因」があるからこその「結果」だと考え、それを追求しています。単調なデータの中に不規則点や異常値を発見すると、宝を見つけたような喜びがあります。地味な性格が研究活動では成果に生かせていると実感しています。
志望動機
低環境負荷なデバイスの勉強をしているので、(貴社の)低消費電力型SiCパワーデバイスがすばらしいと思い志望しました。貴社が産業インフラなどの分野で広くインバーター技術で実績をお持ちなので、私もいつか自分の製品を世に出し、市場をリードしたいと思っています。
- 入社後にやりたい仕事は何ですか?
- 製品開発の仕事に携わりたいと思います。デバイスの研究で、省エネルギーをテーマにしていました。
- 5年後(10年後)のキャリアプランは何ですか?
- いつか自分の製品を世に出すことが夢ですので、自分で責任もって製品作りに携われるよう、まずは生産現場でみっちり経験を積みたいです。5年後までには部門の一部であっても完結できるような責任ある仕事ができるように。10年後はさらに自分一人ではなく、同僚や後輩、部下などチームでより大きな成果を上げたいと思います。
- 自分を物にたとえると何ですか?
- 省電デバイスです。うまい表現が浮かびませんが、日夜研究しているので、いつの間にか自分自身がデバイスであるかのように感じることがあります。あるいはまるで友達のように感じることもあります。研究に没頭し過ぎて、ちょっと疲れているせいかも知れません。(笑)
- 自分を動物にたとえると何ですか?
- モグラでしょうか。どんくさい自分ですが、どちらかというと鼻が利くタイプだと自分では思っていて、実験していても、「あれ? ここ何かおかしいな」と感じることがあります。よくは知らないですがモグラは臭いで方向も分かるそうなので。
どれもがベストアンサーという例ではなく、素材として自己PRと志望動機から答えを組み立てていることを理解してもらえればと思います。
面接の質問に対して、一つひとつ新たな情報など探さずとも、「柱」がしっかりしていれば、普通に的外れではないコミュニケーションを取っていけるものです。
コミュニケーションに自信がなくてもできる対策
・ES・面接の基本である「自己PR」と「志望動機」をしっかり作成する。
・「まず結論から」。決してプレゼン上手な人のような、ひねった回答をしない(しゃべりに自信のない人ほど前置きが長く、内容が分かりにくい。)
・口べた話べたな人は、とくに「話すこと」より「聞くこと」を重視し、面接官の質問をちゃんと聞くこと(話すことに必死で質問をちゃんと聞いていない人が非常に多い)。
面接とESの関係
選考で成否を分けるのはESと面接です。適性検査なども課されることが多いと思いますが、採用されるのはESと面接の両方を通過した人だけです。ある程度勉強して点数を上げることができる適性検査は理系学生が比較的得意とするジャンルです。しかしあくまで適性検査は採用の補助であり、中心ではありません。就活ではESと面接が非常に重要だということを忘れないで下さい。
ESも面接も、さまざまな質問に答えるという点でスタイルは似ています。しかし、「回答」を文字情報で表現するのがESで、話し言葉でコミュニケーションするのが面接という違いがあります。両社は表現方法が違うのだと考えるといいでしょう。
自分が欲しいもの、やりたいこと、好きな研究、好きな仕事を訴える以上に、自分が会社に対して貢献できることが何なのかを伝えてください。単に「貴社のお役に立ちたい」「経営理念に共感し」というような表面的な表現ではなく、理系としての能力や視点、忍耐力や観察力など、「相手」の目線を忘れないでください。
以下のポイントを事前に整理して、いつでも説明(ESなら文字にして、面接なら口頭で)できるようにしておくと良いでしょう。
ポイント1 「専門分野の説明」
学部学科、研究科・専攻、ゼミ・研究室で行っている専門の勉強や研究については理系就職の最も基本となるアピールポイントであり、きちんとした説明ができるようにしておく必要があります。ESや面接で聞かれる基本事項でもあります。
ポイント2 「専門の応用・実用」
ポイント1の専門性を、同じ専門分野の大学教員や研究員に説明する場合であれば、専門用語や知識の有無を気にする必要はありませんが、企業であればたとえ専門分野の会社であっても、社員全員が研究員ではありません。人事部門や営業部門など、必ずしも専門的知識を持たない方はたくさんいます。
コミュニケーションのポイントは、相手が専門家でなくとも自分の価値を評価できるよう、専門的な能力や知識を応用すると何ができるかといった、分かりやすい表現をすることです。実現の可能性の高さなどには関係なく、わずかでも応用・実用・転用などの可能性があるのであれば、具体例を用いて、知識のない人にも自分の専門性の有用性を分かりやすく伝えられるようにしっかり準備しましょう。
ESに書いたことと面接で聞かれることは同じだったり、表現は違っても似た主旨だったりすることが多く、回答も同じになるのは普通です。ただしESの記憶力を試しているのではありませんから、ESの記述そのままを暗唱する必要は一切ありません。
ESも面接も、採用選考の2大ポイント「自己PR」「志望動機」が基本である以上、暗記していなくとも似たような表現をするのは当然ですので、ESと同じかどうかはあまり気にする必要がありません。ただし、ESも面接も、「模範解答」をする試験ではありません。企業が望む、もっともらしい答えをインターネットで見つけ、キレイな言葉を並べたからといって、採用に結びつくわけではありません。就活とは「仕事をしたい」学生と、「働いてもらいたい」企業の、需要と供給のマッチングの場です。
ウソや「盛り」
「ウソのエピソードで面接も通った」という武勇伝を語る人もいますが、そのエピソードだけを面接で語るわけではないので、本当にそれが選考を通った理由であったかは確かめようがありません。プロの採用担当を相手にウソをつき通すのは至難の技です。
面接はおもしろエピソードを発表する場ではありません。成果を盛ったから採用されるのではなく、「どのように」「なぜ」「どれだけ変化した」といった、科学的な説明能力が見られています。面接のように自分だけではコントロールできない双方向コミュニケーションでは、ウソや盛りは無意味というより、疑われたらアウトなリスキーなことなのです。
困った時の対応
困った時の対応
面接は用意していた答えを発表する場ではありませんので、答えづらいテーマに話が及ぶ恐れは十分あります。「自分の欠点」「不得意・苦手なこと」「失敗談」などを聞かれると、マイナス材料を探られているのかと勘違いする人もいますが、それは誤解です。
得意なことしかないとかポジティブな面しかない人間はいません。「仕事」という人生の大部分を占めるキャリアを決める過程で、良い面ばかりではなく悪い面、ネガティブなことについても自分で把握しているかを確認しているだけです。自分の欠点を自覚しているという冷静な態度が評価されるでしょう。
また長所と短所は表裏一体で、性格や考え方をどちらから見るかの違いだけともいえます。つまりは長所は良い点ばかりとは限らず、行き過ぎたりすれば他人に迷惑をかける短所にもなります。何と答えるかではなく、どう自分はとらえているかという考え方や思考パターンを問われているのです。
圧迫質問
答えづらいことを聞いたり、回答に対してネガティブなことを言われたり、回答の矛盾点を次々突いてくるようなものを圧迫質問、もしくは圧迫面接といいます。 かつては顧客対応の多い営業職やサービス業、接客業などで、耐性を測るために行われていたもので、最近は減ったといわれます。これも、勘違いしている学生がとても多い要素と関連しています。とくに「良い結果」となる面接では、何事もなく順風満帆に進むことは、ほとんどなく、逆に当たり障りなく終わった面接は「良くない結果」になることの方が多いのです。繰り返しますが、面接は面接官の期待する答えを当てる試験ではありません。
緊張もあって上手な説明ができない時はあわてて答えようとせず、「すみません、考えがまとまりません」といって少しじっくり考えてはどうでしょうか。何も言わずに突然黙られると面接官には異様に映ります。
とくに話に自信のない人ほど「早く答えよう」とする人が多いようです。面接は早押しクイズではありませんから、急げばそれだけ質問の理解も浅くなって回答もまとまらず、不利なだけです。「急がなくて良いのだ」と自分に言い聞かせ、しっかり質問を聞き取りその意図を理解して答えるようにしましょう。
それでも答えられなかったり、何度も根拠を繰り返し聞かれて、答えに詰まるようなら、最後は自分の好みであり、そう感じたからだと開き直る手もあります。怒ったりパニックになるような情緒的反応をするような人は、あまり社員として雇いたくないと考えるのは普通の感覚です。分からないことは素直に「分かりません」と答えればよいでしょう。
最後の質問(逆質問)
面接の最後には必ず「何か質問はありますか?」などと聞かれ、質問の機会が与えられます。それを予定して、質問を考えて面接に臨みましょう。
ただしあまり専門的過ぎる内容や、答えようがない質問はする意味がありません。また会社のWEBサイトを見れば分かる程度のことを聞いたり、待遇や教育など、自分にとってのメリットばかり聞いたりするのは避けましょう。ちゃんとした会社であれば、採用時に必ず労働(雇用)契約書を結びますので、条件はそこに書かれています。面接の場であせってすべての条件を聞く必要はありません。
理系学生の場合、研究開発や技術について詳しく聞きたいということがあります。その面接が技術面接やその製品やサービスの担当者によるものとはっきり分かっている時はよいですが、企業には人事を担当する人も製造開発以外の人もいます。それまでの面接のやり取りにおいて、技術面など専門分野に精通していそうだと感じた場合は問題ないでしょうが、そうでない人に突如詳しすぎる質問しても、答は得られないかも知れません。
面接が長時間に及んだり、用意していた質問がすでに面接中に説明されてしまった場合、どうしても思いつかなければ「お尋ねしたかったことをすべてお聞きできましたので、質問はもうありません」と説明すればよいでしょう。何も言わず「質問はありません」というのは、もっとも評価が下がる態度です。
マナー
社会人としてのマナーもチェックされます。ただしそれは礼儀作法の達人を求めているのではありません。入室時にノックするとか、出入りの際にお辞儀をするという最低限のマナーを知っていれば十分です。
マイナビ2026では、OB・OG訪問、企業説明会、そして就活時に役立つマナーなどを紹介していますので、目を通しておくとよいでしょう。
一般的な理系の就職であればあまり細かい点、お辞儀の角度などは気にせず、それよりもちゃんとあいさつをする、はっきりと自分の名前を名乗るなどの基本的な対人マナーができるようにしておきましょう。
実験や研究が忙しくとも、就職活動は公的な対外交流ですから身だしなみをおろそかにせず、髪の毛を整える(ボサボサのまま、フケが多い、前髪で目が隠れているなど公的な場にそぐわない状態はすべてNG)、服装に気を付ける(Yシャツ、スーツのしわやネクタイの結び方)といった基本的な礼儀だけは押さえましょう。 どれだけ学力や知識を有した人でも、こうした常識的なことをわきまえていなければ、企業という組織社会で受け入れられることはありません。
オンライン対応
コロナ禍のなかで、一気に広まったのがオンライン就活です。遠隔地の企業でも、オンラインであれば大学や自宅にいながらにして説明を聞けたり、面接までも実施できるというメリットが多く、就活において欠かすことのできない手段となり、定着しました。
対面と異なる点で、いくつか留意点があります。それはやはりオンライン化によって伝えられる情報が制限されてしまうことです。直接対面するのと、モニターを通して話すのでは印象は異なります。特に声が小さい人やあがりやすい人などは、対面よりモニター越しの方が話しやすいということもあり、就活学生にメリットは少なくありません。
一方で声が届かなかったり、電波状況が悪いようだと、せっかくのアピールも届かないことになります。対面会話よりも意識的して、明確にはっきり話す訓練をして臨みましょう。大学のキャリアセンターなどでは、オンライン面接の練習などやっているはずですので、ぜひ利用して訓練して下さい。 特に大学院生などで、研究説明やプレゼンテーションを求められる場合は、一度動画に撮って見直すなど、「伝わりやすさ」に留意しましょう。
企業においても在宅勤務やリモートワークはどんどん普及しています。入社後の働き方の練習にもなるオンライン対応は必ず事前準備をして下さい。