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保育業界の用語集

あ行
インクルーシブ保育
いんくるーしぶほいく
子どもたちの多様性を尊重し、障がいの有無にかかわらず同じ空間の中で保育を提供する考え方。障がいのある子どもは、必要な支援を受けながら、障がいのない子どもと同じ空間で共に生活し、学ぶことができる。インクルーシブ(inclusive)は「包括的」「包摂的」を意味する。
インクルーシブ保育のメリット
- 障がいの有無で保育の場所を分けると、それにより否応なく両者が引き離され、社会的な断絶が生まれてしまうが、インクルーシブ保育では両者が共に生活する中で相互理解が生まれ、共生社会実現の第一歩となることが期待できる。
インクルーシブ保育の懸念点
- 障がいのある子どもが劣等感を覚えたり、自分なりのペースで成長することが難しくなったりする側面もあるといわれる。
- 障がい児保育の十分な教育を受けていない保育者にとっては、負担となる可能性がある。
おむつの持ち帰り
おむつのもちかえり
保育施設で子どもが使用した紙おむつを保護者が自宅に持ち帰ること。従来、使用済み紙おむつを保育施設側で処分せず、保護者が持ち帰ることになっているケースが一定数見られてきた。その場合、衛生上の問題または臭気に対する配慮から保護者の行動が制限されたり(帰宅途中に買い物ができないなど)、特に複数の子どもを預けている場合は重量が負担になったりすることがあった。また、保育者の側としても使用済みおむつを子どもごとに管理する手間がかかっていた。そこで、厚生労働省は2023年1月に「保育所等における使用済みおむつの処分について」を発表し、保育所や幼保連携型認定こども園、地域型保育事業所などにおいて、使用済み紙おむつは保育施設側が処分を行うことを推奨することにした。
厚生労働省 保育所等における使用済みおむつの処分についてか行
子ども・子育て支援新制度
こどもこそだてしえんしんせいど
子育てと就労の両立への不安や、待機児童といった様々な課題を解決し、安心して子育てに取り組めるよう、2015年4月に施行された制度。子どもの年齢や親の就労状況などに応じた多様な支援で、子育ての選択肢を増やす「量の拡充」と、幼稚園や保育所、認定こども園などの職員の給与アップや研修の充実などの処遇改善によって質の高い人材を確保し、保育サービスの質を高める「質の向上」の二軸で、様々な制度が整備された。
子ども・子育て支援新制度の目的
- 質の高い幼児期の学校教育・保育の総合的な提供
- 地域に根ざした子育て支援の充実
- 待機児童問題解消
新制度では地域の実情に応じて、2006年に設置がスタートした「認定こども園」への移行を推進するほか、市区町村の認可事業として待機児童が特に多い0~2歳の子どもを少人数で保育する「地域型保育」制度が設けられている。主な事業形態は以下の4つ。
- 家庭的保育(保育ママ)
- 小規模保育
- 事業所内保育
- 居宅訪問型保育
こども大綱
こどもたいこう
2023年4月施行のこども基本法に基づき、同年12月に閣議決定された、わが国初となる大綱。従来の「少子化社会対策大綱」「子供・若者育成支援推進大綱」「子供の貧困対策に関する大綱」を1つに束ね、さらに必要なこども施策を盛り込み、従来以上に総合的かつ一体的にこども施策を推進するため、今後5年程度の基本的な方針や重要事項をまとめた内容となっている。すべてのこども・若者が身体的・精神的・社会的に幸せな状態(ウェルビーイング)で生活を送ることができる「こどもまんなか社会」の実現をめざしている。
基本的な方針
- こども・若者は権利の主体であり、今とこれからの最善の利益を図ること。
- こども・若者や子育て当事者とともに進めていくこと。
- ライフステージに応じて切れ目なく十分に支援すること。
- 良好な成育環境を確保し、貧困と格差の解消を図ること。
- 若い世代の生活の基盤の安定を確保し、若い世代の視点に立った結婚・子育ての希望を実現すること。
- 施策の総合性を確保すること。
さ行
児童手当
じどうてあて
子ども・子育て支援法に基づき、児童を養育する保護者に対して支給される現金給付で、公的扶助に該当する。2024年2月、政府は「次元の異なる少子化対策」を具体化するため子ども・子育て支援法などの改正案を閣議決定し、その中で児童手当の拡充が図られた。同改正案が国会で成立すれば、2024年10月支給分より拡充された児童手当が支給される見込み。
- 支給対象:高校生年代までの児童を養育する保護者
- 所得制限:なし(従来あったものが撤廃された)
- 手当月額
- 0~2歳未満→15,000円
- 3歳~小学校修了まで→10,000円
- 中学生→10,000円
- 高校生年代→10,000円
※第3子以降は年齢を問わず月30,000円が支給される。
児童福祉法
じどうふくしほう
「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない」「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」という基本理念を実現するため、児童の福祉を担当する公的機関の組織や、児童の健全な育成・権利・生活保障などについて定めた法律で、社会福祉六法の一つに数えられる。2024年4月より改正児童福祉法が施行されている。
改正児童福祉法(2024年4月施行)のポイント
- 要保護児童等への包括的かつ計画的な支援の実施の市町村業務への追加
- 市町村における児童福祉及び母子保健に関し包括的な支援を行うこども家庭センターの設置の努力義務化
- 子ども家庭福祉分野の認定資格創設
- 市区町村における子育て家庭への支援の充実
少子化
しょうしか
- 女性の高学歴化と社会進出
- 晩婚化
- 未婚化
- 住環境の問題
- 教育費の問題
出生率の低下に伴い、総人口における子供の割合が低下すること。一般に「合計特殊出生率(15~49歳の女性の年齢別出生率を合計したもの)」で表され、その数値が2.08を下回ると少子化と言われる。
原因としてはさまざま考えられるが、
が挙げられることが多い。
少子化により、高齢者の福祉問題と労働人口確保のミスマッチが問題化している。
新子育て安心プラン
しんこそだてあんしんぷらん
2013年度からの待機児童解消加速化プラン、2018年度からの子育て安心プランに続く位置付けの、待機児童の解消をめざす子育て支援事業。2021年度から2024年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備することを目標に、さまざまな施策を打ち出している。
新子育て安心プランにおける支援のポイント
- 地域の特性に応じた支援
- 保育ニーズが増加している地域への支援
(例)新子育て安心プランに参加する自治体への整備費等の補助率の嵩上げ - マッチングの促進が必要な地域への支援
(例)保育コンシェルジュによる相談支援の拡充
(例)巡回バス等による送迎に対する支援の拡充 - 人口減少地域の保育の在り方の検討
- 保育ニーズが増加している地域への支援
- 魅力向上を通じた保育士の確保
- (例)保育補助者の活躍促進
- (例)短時間勤務の保育士の活躍促進
- (例)保育士・保育所支援センターの機能強化
- 地域のあらゆる子育て資源の活用
- (例)幼稚園の空きスペースを活用した預かり保育や小規模保育の推進
- (例)ベビーシッターの利用料助成の非課税化
- (例)企業主導型ベビーシッターの利用補助の拡充
- (例)育児休業等取得に積極的に取り組む中小企業への助成事業の創設
た行
待機児童
たいきじどう
保育に欠ける児童が保育所(認可保育所)入所申請をしているにもかかわらず、希望する保育所の施設定員を超過する等の理由で入所できない状態、またはその状態にある児童のこと。
待機児童数の推移
かつては待機児童が大量発生(ピークとなった2017年に26,081人)したことで社会問題にまで発展したが、その後の対策で大幅に数を減らしている。2023年4月現在、全国の待機児童数は2,680人で、前年と比較して264人減少した。約86.7%の市区町村で待機児童ゼロとなり、待機児童数が50人以上の自治体は6自治体まで減少している。
こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ(令和5年4月1日)な行
日本こども育成協議会
にほんこどもいくせいきょうぎかい
保育所等、保育事業を行っている民間事業者を中心にし、設立した一般社団法人。次世代を担う子どもたちの健全なる育成と、子どもの心が豊かに育つ社会の実現を目的としている。会員保育所及び保育者の保育の質の向上に向けての研修活動、行政への政策提言に取り組み、日本の保育・保育政策等の調査と研究、それに基づく情報発信・広報活動等を行っている。また、就業支援のための講習及びインターンシップ等も積極的に行っている。
一般社団法人 日本こども育成協議会乳幼児突然死症候群(SIDS)
にゅうようじとつぜんししょうこうぐん(しず)
特段の予兆(その時点での健康状態や既往歴など)がないまま、主に1歳未満の乳児が原因不明の突然死を起こす症候群。死亡状況調査や解剖検査によっても原因を同定することはできず、単一の要因で起こるのか、複合的な要因が絡み合って起こるのかも解明されていない。保育施設でのSIDSのリスクは高く、特に預け始めの時期(預け始めから1週間~1カ月以内)に起こりやすいとの調査報告もある。
認定こども園
にんていこどもえん
幼稚園、保育所等のうち、「就学前の子どもに幼児教育・保育を提供する機能」「地域における子育て支援を行う機能」を備え、都道府県が定める認定基準を満たしたものとして、都道府県知事から認定を受けた施設。教育・保育を一体的に提供することができ、幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持つ施設だといえる。
認定こども園の4つのタイプ
- 幼保連携型
認可幼稚園と認可保育所が連携し、一体的な運営を行うことで、認定こども園としての機能を果たす。 - 幼稚園型
認可幼稚園が保育所的な機能を備え、認定こども園としての機能を果たす。 - 保育所型
認可保育所が幼稚園的な機能を備え、認定こども園としての機能を果たす。 - 地方裁量型
幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が、認定こども園として必要な機能を果たす。
は行
ピアジェ理論
ぴあじぇりろん
「20世紀の発達心理学の父」として世界中の教育に深く影響を与えた心理学者、ジャン・ピアジェ(1896年-1980年)によって考えられた幼児教育理論。「子どもは大人のミニチュアではなく、子どもの発想は子ども自身独自のものである」ということを見出し、子供の発達段階に応じた適切な教育を行おうというもの。
ピアジェ理論の発達段階設
- 感覚運動期 (0~2歳)
- 前操作期 (2~6歳)
- 具体的操作期 (6~12歳)
- 形式的操作期 (12歳以上)
フレーベル
ふれーべる
フリードリヒ・ヴィルヘルム・アウグスト・フレーベル(1782-1852年)は幼稚園の創始者として知られるドイツの教育者、教育思想家。小学校就学前の子どもの教育に一生を捧げた。
保育施設における事故
ほいくしせつにおけるじこ
2017 年 11 月の児童福祉法施行規則改正により、認可外保育施設だけでなく、子育て短期支援事業、一時預かり事業、病児保育事業、子育て援助活動支援事業についても、事故の発生・再発の防止が努力義務とされ、事故が発生した場合における自治体への報告が義務とされた。
事故の発生状況
教育・保育施設等で発生した死亡事故、治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故等で、2022年1月1日~12月31日までの期間内に国に報告があったものの集計結果は次の通り。
- 報告件数は2,461件(対前年+114)であった。
- 負傷等の報告は2,456 件(対前年+114)、そのうち1,897件〔77%〕(対前年+9)が骨折によるものであった。
- 負傷等の事故の発生場所は、施設内が2,182件〔89%〕(対前年+80)、そのうち1,256件〔58%〕(対前年+12)は施設内の室外で発生した。
- 死亡の報告は5件(対前年±0)であった。
保育所保育指針
ほいくしょほいくししん
全国の認可保育所が遵守しなければならない保育の基本原則。厚生労働大臣によって保育指針が告示され、全国の公私立保育所においてこの保育指針を踏まえたうえで保育の質の向上をめざして保育しなければならないと定められ、保育所の役割や社会的責任、保育の目標や方法、保育の環境や配慮事項などについて規定されている。児童福祉法最低基準第35条の規定をもとに作成されている。2017年3月、約10年ぶりの大幅改定が行われ、2018年4月より施行されている。
保育ママ
ほいくまま
両親の就労等で保育に欠け、かつ保育所に入所できない主に3歳未満の児童を家庭で預かり保育する保育者の通称、または保育施設の総称。 国の要綱(昼間養育運営要綱、家庭的保育等事業実施要綱、家庭的保育事業ガイドライン)に基づいている。保育料やサービス内容は市区町村によって異なるが、自宅などの保育の場を提供できることが必須条件。「保育ママ」という呼称だが男性が従事することも可能。2008年の児童福祉法の改正により家庭的保育事業が法制化され、家庭的保育事業ガイドラインが制定された。
ま行
ムーブメント教育
むーぶめんときょういく
発達心理学者のゲゼルや知能心理学者ピアジェなどによる「子どもが力強い発達をするためには、まず、感覚や運動の育ちに通ずる「からだ」を軸にした教育法が必要である」との理論をアメリカのマリアンヌ・フロスティッグが体系化した教育法。1977年に日本で初めて紹介された。頭だけでなく、身体で人や物との関係や自分の存在を考え、身体を動かすことの喜びと自発性を重視している。
モンテッソーリ教育
もんてっそーりきょういく
「モンテッソーリメソッド」として世界中で支持され、教育界に最も大きな影響を与えた教育法の一つ。20世紀始めにマリア・モンテッソーリ(1870-1952年)によって考案された教育法。日本では1968年に日本モンテッソーリ協会が設立されている。
モンテッソーリメソッドの特徴
- 自由に個別活動
- 子どもの中の自発性を重んじる
- 異年齢混合の縦割りクラス
や行
夜間保育
やかんほいく
保護者が仕事の都合などで子どもを保育できない場合、それに代わって18時以降の保育を提供すること。夜間保育を提供する施設は、夜間保育所と呼ばれる。夜間保育を専門に提供する施設の他、延長保育として夜間保育を提供する施設もある。開所時間は「原則として概ね11時間とし、おおよそ午後10時までとすること」が定められている(厚生省児童家庭局長「夜間保育所の設置認可等について」)。
幼保無償化
ようほむしょうか
2019年10月1日(火)より施行。社会保障を全世代型へ抜本的に変え、子育て世帯の負担を軽減することを目的とし、同日施行された消費税率10%への引き上げに伴う増収分の一部が充てられる。幼児教育の無償化は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性や、幼児教育の負担軽減を図る少子化対策の観点から取り組まれる。
3~5歳児(※) | 0~2歳児 | |
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認可保育所・ 幼稚園・ 認定こども園 |
すべて無償 (幼稚園は月25,700円まで) |
住民税非課税世帯を対象として無償化 |
企業主導型保育事業 |
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幼稚園の 一時預かり |
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認可外保育施設・ サービス |
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住民税非課税世帯の子どもたちを対象に、月額4.2万円までの利用料が無償化 |
障害児通園施設 | すべて無償 | 無償化実施済 |