芸術系学生のための就活の進め方

採用選考のための準備

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スポーツの世界で、高校、大学卒のルーキーが、チーム力を一変する大活躍を見せるのと同じように、専門分野への就職においては、芸術系の学生は、まさに「即戦力」となる技能と可能性を秘めています。

その一方で、個人での制作活動や研究、発表に学生生活の大半を費やす場合も多く、ビジネスの場での、コミュニケーションや、一般的なソフト(WordやExcel)を使う書類作成のスキルといったものに不安を感じる学生も少なくありません。
しかし、就活が本格化すると、企業や社会人と直接関わる機会が増えてきます。
「芸術系の学生だから、独自性がある、個性的だ」と、評価されることばかりではありません。
これは芸術系の学生に限ったことではありませんが、社会人を相手に失礼はないだろうか?考え方が偏りすぎていないだろうか?そもそも自分は場違いな格好をしていないか? といったことなどは、就活に向けて気を付けていきたいポイントです。
ここでは、就活をする上で不可欠な社会人としての最低限のマナー、企業の選考時に提出するエントリーシート(ES)、そして、ESの作成や、面接時の自己PRにおいて重要となってくるポートフォリオについて解説していきます。

就活マナー

理系学生と同様に、芸術系の学生は高い専門性を有する反面、作品の制作などで多忙なこともあり、専門分野以外にあまり興味が及ばない場合も少なくありません。また、正解のない中で、新しい物事を生み出す生活を普段からしているため、どちらかというと他人と違うことを優先する傾向があります。しかし、ビジネスにおいては、業界の基準や、クライアントの要望など、求められる答えがはっきりしているケースが多いものです。さらに企業の一員として働くには、所属する会社のルールに沿った行動を心掛けなくてはいけません。就活に取り組む前に、まずは社会人として働くうえでのマナーを身に付けておきましょう。一口にマナーといっても、シーンによって違いがあり、代表的なものでも
・身だしなみ
・持ち物
・挨拶
・言葉遣い
・Eメール対応
など、気を付けるべき点は多くあります。
採用選考に臨む前に、ぜひ参考にしてみてください。

エントリーシートの書き方

企業の選考を受ける際、芸術系学生も必ずといっていいほど、エントリーシートの提出が求められます。
エントリーシートに書き込む情報にも基本的なマナーがあります。
志望動機や自己PRを考えることも重要ですが、まずは下記のようなマナーを見落とさないように心掛けましょう。

エントリーシートを提出する際のチェックポイント

  • 日付
    応募書類全体で西暦か元号表記かを統一できているか。
  • 氏名
    「ふりがな」はひらがなで記入し、「フリガナ」はカタカナで記入しているか。
  • 住所
    都道府県から省略せずに記入し、マンション名なども忘れていないか。
  • 電話番号
    日中連絡が取りやすいものを記入しているか。
  • 印鑑
    印鑑はシャチハタではなく、朱肉で押しているか。
  • 学歴
    中学入学から記入しているか。
  • 郵送提出
    封筒の書き方は正しくできているか。

せっかくスキルや強みを生かした自己PRや優れたポートフォリオを準備しても、マナーがないと判断されると印象が下がります。良い印象を持ってもらえるよう、提出する際は細かいところまでしっかり確認しましょう。

エントリーシート作成に役立つコンテンツ

ポートフォリオについて

ポートフォリオを作る目的

ポートフォリオは、簡単に言えば「作品集」のことです。美術系の学生ならば、デッサンや絵画、イラスト、デザイン画などをファイリングしてまとめます。映像や音楽を専攻する学生ならば、作品の形式が音声や動画のデータになることもありますが、それを収めたDVDなどのメディアも、広い意味ではポートフォリオということになります。
個人的な作品集であれば、純粋な自己表現の手段として自由に作品を紹介すればよいのですが、就職活動で活用されるポートフォリオは、単なる作品集ではありません。企業に対して、「自分が志望する分野」、「特徴や技能」、「制作におけるアイデアやセンス」、「経験」、また、「作品のオリジナル性や世界観」といったものを伝えるという、はっきりとした目的があることを意識して制作しましょう。

ポートフォリオの制作

就職活動が本格化してから、慌てて作品をポートフォリオにまとめようとするのでは、仕上がりにも高い完成度は見込めません。作り始める時期に絶対的なものはありませんが、準備は早ければ早いほどよいでしょう。学校の課題、オリジナル作品を制作するたびに撮影、スキャン、録音・録画などデータ化する作業をこまめに行いファイリングしていきましょう。長いスパンでファイリングを重ねることで、自身の作風の変化や、成長の過程、テーマの設定など、表現できるものも増え、手直しを繰り返しながらポートフォリオのクオリティーを高めていくことができます。ポートフォリオに載せる作品ジャンルや、その順序に決まりはありません。しかし、前項で述べた目的に対して、最大の効果が発揮できるよう、自分なりに何らかのテーマ、ルールを設けて制作します。また、掲載する作品の量にも配慮しなければいけません。書類などにおける審査、面接などの選考において、企業の採用担当者が、学生一人ひとりのポートフォリオに目を通す時間は限られています。そうした中で評価を得るためには、短い時間でインパクトを与えられる作品を吟味し、全体を通して目を通してもらえる適度なボリュームが大切です。紙素材の作品を、市販のクリアーファイルや製本してまとめる場合は、A4~A3サイズで20~100ページほどの分量が一般的です。ただし、志望する分野によっても、目安となる分量は違いますので注意しましょう。また、学校のキャリアセンターや資料室などで、卒業生のポートフォリオが閲覧できる場合もあるので、それらを参考にするのもよいでしょう。

ポートフォリオ制作手順の例

提出する先、作る目的を確認
業界や職種、企業の情報、自己分析をもとに、自分がポートフォリオで何を訴えるべきか考える。目的に沿って、できるだけ具体的なコンセプトを立てよう。
作品をファイリング
Illustratorや、Photoshopなどのデジタルツールの使用もPRの要素となる。製本、ファイリングのほかに、Webサイトを使う選択肢もある。
全体のテーマ・構成を練る
コンセプトに沿った作品を選ぶ。構成に合わせて、新たに作品を追加することも考える。印象度に大きくかかわる装丁や表紙周りのデザインは熟考しよう。
ブック形式にまとめる
学校の課題、自主制作、発表会・展示会への出展作品などを都度、ストックしていこう。テーマやジャンルなどであらかじめ整理しておくと便利。

ポートフォリオの提出について

完成した作品をモディファイして、バージョン違いのものを作っていくのと同様に、ポートフォリオも一度形にした状態から、ブラッシュアップや調整を重ね、希望の業界、職種や企業に合わせて改変しましょう。友人や先生など第三者に意見をもらいポートフォリオや作品の制作に取り込む姿勢を持つのも良いことです。このような、調整作業を考慮して、ポートフォリオの準備はできる限り早めに取り組み、余裕をもって完成させましょう。
また、完成したポートフォリオを企業に提出する際には、以下の点をもう一度注意しましょう。

企業にポートフォリオを提出する際のチェックポイント

  • 氏名、大学名が記載されているか。
  • 指定サイズがある場合、その指定に沿っているか。
  • 提出先の企業名に誤りがないか。
  • データで送る際は、ファイル名に半角英数記号で氏名、大学名を入力しているか
  • データにまとめたとき、容量が大きくなり過ぎていないか。
  • 作品の要点をまとめた資料を入れているか。

ポートフォリオの提出から選考について

クリエーティブ系の職種では、ポートフォリオの内容が採用選考で重視されます。芸術系の学生の就活においては、エントリーシートや履歴書の書類とともに、ポートフォリオの提出を求める企業がほとんどです。また、専門外の業界、職種を志望する場合でも、自分が学生時代にどのような経験を積み、スキルを高めてきたのかを端的に伝える大きな武器となります。クリエーティブな業務を抱える企業では、人事部をはじめとする採用担当者だけでなく、実制作に当たるその部門の責任者の意見も選考に大きくかかわります。例えば、デザイナーやディレクターといった立場の人間が、ポートフォリオに目を通す審査が行われます。

クリエーティブ系企業の選考例

ポートフォリオと
書類(ES・履歴書)選考
クリエーティブ系の職種、企業では、ESや履歴書などの書類とともにポートフォリオによる選考が行われます。書類で志望理由などを確認するほか、ポートフォリオによって学生の適性、将来性を計ります。
面接
面接では、学生の技量、専門的なスキルが確認される一方で、「マネジメント力」「協調性」「プレゼンテーション力」のようなビジネス上で必要な要素も判断されます。すべての面接官が、専門的な内容に対して理解があるとは限りません。面接の合否においては、クリエーティブな仕事を扱う部門だけでなく、人事など管理部門の意見も反映されることを忘れないようにしましょう。芸術系学生の場合は、専門ジャンルや作品性にかかわる話になると、そのこだわりや思い入れから、持論を展開してしまうことがあります。そこで自分の個性や、作品に対する分析力をアピールできれば良いのですが、それが偏って聞こえたり、一方的な発言に映ったりすると、ビジネスにおける協調性が問われる結果になる場合もあります。ですから、面接官の理解度を常に考慮しながら話を進めなくてはいけません。
課題審査
面接を行う際に、課題の提出を求められる場合もあります。実際の業務につながる内容を設定し、学生の適性を計るものです。面接日までに作業し、成果物を持参する場合と、面接時に課題が与えられ、その場で作業する場合があります。
採用
学校の課題、自主制作、発表会・展示会への出展作品などを都度、ストックしていこう。テーマやジャンルなどであらかじめ整理しておくと便利。

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