
モーダルの中身
名だたる複数のゲームソフト開発会社から内定を得た豊田さん。その成功には数々のインターンシップに積極的に参加した攻めの姿勢と、ポートフォリオに施したある工夫がある。大事なのは情熱か技術か、画力かアイデアか? 美大生が知りたい答えを、インターンシップを通して自らつかみ取った豊田さんの体験記は、さまざまな洞察にあふれている。
小学生の頃から「ゲームを作りたい!」という具体的な夢を描いていました。中でも興味を持ったのがキャラクターデザインです。「私もこんなモンスターが作りたい!」その願いを叶えるために、中学から女子美術大学の付属校に通い、大学ではデジタル系のカリキュラムが充実したアート・デザイン表現学科メディア表現領域を専攻しました。アニメーションやキャラクターデザイン、VRや3DCGなどいずれも興味のある分野で、友人たちもゲーム業界あるいはWebデザイン関連を志望しているような環境です。
キャラクターデザイナーに興味を持ちつつも、3DCGアニメーションを始めるきっかけとなったのが、中学3年生で出会った短編の3DCGアニメーションです。それをたった1人のクリエイターが作品を作り上げたと聞いて、「自分にもできるかもしれない!」と思い、早速アニメーション制作に挑戦しました。作品を作り続ける中で、どんどん3DCGへの興味が深まっていきました。
3DCGアニメーションを始める前は、動きのある漫画が好きで、ペラペラ漫画をよく作っていました。それが、3DCGアニメーションに挑戦するきっかけになったと感じています。
3DCGは普段は独学で勉強していたものの、大学に上がってからは独学だけでは学ぶことのできない、プロの視点での技術の習得のために、インターンシップに参加することを決意しました。大学2年生の6月には、3Dモデリングのスキルを就業形式で学べるインターンシップに初めて参加しました。普段の創作活動で使用するソフトとは異なり、日々発見を繰り返しながら作品を作成しました。実際に現場で求められるスキルのレベルも、インターンシップを通じてなんとなくつかむことができました。
同時に、大学内のグループワーク制作にも参加しました。これは実際に発売されるゲームを想定した企画・デザインをする活動で、ゲーム業界を目指す学生が集結しました。ゲーム開発会社の社員がフィードバックをしてくれるのですが、出来上がったものだけでなく、チーム内の動きについても細かな部分まで観察し、評価してくれました。これは後に就活で非常に役立つことになるのですが、ゲーム業界で活躍するにはチームワークやコミュニケーション能力が基盤になります。その意味をこのグループワークで実感できたのは成果でした。
ここまで順調にステップを進めているように見えますが、ゲーム業界を志望するうえでモデリングで行くか、3DCGアニメーションで行くか悩んでいました。直接的な解決とはならなくとも、見識を深めるために参加したプログラムは偶然その悩みを解決するヒントとなりました。
自身の将来の方向性を決めるきっかけとなったのが、大学2年生の終わりに参加したモデリングのオンライン塾でした。インターンシップではないため、ここには現役で働いているクリエイターの方も勉強しに来ていました。その方とゲーム業界のお話で盛り上がり、その際、自身の原点を振り返ることができました。
クリエイターの方に後押しされたこともあり、「やはり自分は3DCGアニメーションをつくりたい」と決心することができたんです。将来の方向性は決まったものの、ゲーム業界においての「ゲームのモーション」と「通常のアニメーション」と何が違うのか、全く無知の状態から3年生がスタートしました。
業界を知るためには2年生で参加したような夏のインターンシップに参加することが最善だと考え、そのために今できることから始めようと考えました。
まずは作品を作る上で欠かせない「観察眼」を鍛えるべく、画塾に通いクロッキーやデッサンを行うことで基礎画力を鍛えました。観察する力を鍛えることでより作品を客観的に把握できるようになったと感じています。
また「ゲームのモーション」について詳しく知るために参加した夏のインターンシップでは、課題作品で優秀賞をいただくことができました。そうすると中には自分に興味を持ってくださる企業も現れ、次のインターンシップへのチャンスに繋がることもありました。2回いただくことができた優秀賞は、作品の質だけでなく、積極性やコミュニケーション力も評価に加味されたように感じます。お世話になった会社と繋がりができるだけでなく、優秀賞をいただいた実績が他のチャンスを生み出すきっかけにもなりました。
ゲーム業界は人気が高く、クリエイターを目指す人は無数にいらっしゃると思います。課題の提出など大変なことは多々ありますが、自身の存在をアピールしやすいことは大きな強みになります。また、インターンシップに参加することで、そのゲーム開発会社がどんな人材やスキルを求めているのかも、実体験としてわかるようになります。
学生はそれぞれ自分の好きなジャンルや得意なジャンルを持っていると思います。ポートフォリオにも自分の好きな表現の作品を載せる方は多いかと思います。一方で社会人として企業に入ると、その企業が求めている作品を仕上げなければなりません。自分の「好き」は大切ですが、必ずしもそれが社会に通じるための「正解」ではないではないと考えています。
そのため、私のポートフォリオには、全作品夢中で作り上げているものの、好みの題材ではない作品も含まれています。私は社会で求められている「エンターテインメント」は、自分の好きなものを見せる場ではなく、誰かを喜ばせるためのものだと考えています。だからこそ、作品を通じて自分の持つ力や魅力を、いかに企業に伝えられるかを意識しています。
その点を理解するうえでも、インターンシップやプログラムを通して、企業のご担当者や現役クリエイターの方々と触れ合う機会は重要だと思いました。
ゲームクリエイターを目指すなら「熱意」が大切だと聞くことが多々あります。これはもちろん本当で、重要な要素ですが、恐らく同じ業界を目指す皆が強い熱意を抱いていると感じていたため、最終的には「技術力」での勝負になると就活を始めたての頃は考えていました。就活を続けていくうちに両方ともが大事で、そのためには積極的にインターンシップや数々のプログラムに参加し、学び取る姿勢が大切だと考えるようになりました。
たくさんの時間を使って様々な企業に触れることで、企業が学生に求められているものがわかり、自分がすべきことがわかってくると思います。
たくさんの出会いの中で新たな可能性の扉が見つかることを願っております。
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