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薬学生の業界研究 治験業界(CRO,SMO)で働く
Introduction

現代の治験を成功へ導く上で、CRO・SMOの存在感はますます高まっています。ここでは、CRO・SMOで治験支援業務を担うスペシャリストである臨床開発モニター(CRA)と治験コーディネーター(CRC)の仕事を中心に、果たすべき役割やキャリアパスなどを解説します。

Index

CRO・SMOの最新動向

今後の展望

CRA・CRCの仕事

就職活動&キャリアパス

CRO・SMOの最新動向

複雑化する治験のアウトソーシングは需要大

新薬開発という壮大なプロジェクトにおいて、治験を安全かつ円滑に進行することは極めて重要です。治験業務がより大がかりに、そして複雑化していることから、製薬会社や医療機関だけですべてを担うことは難しいケースも少なくありません。そこで、治験業務の一部または全体を「アウトソーシング」する先として、CRO(contract research organization)やSMO(site management organization)が頼りにされているのです。

CROは、製薬会社から依頼を受け、臨床試験や承認申請、製造販売後の調査などを幅広く支援します。SMOは、治験実施施設である医療機関と契約し、治験を開始・実施するための補助、IRB(治験審査委員会)設立・運営の補助、CRAの教育や派遣などを行います。同じプロジェクトを異なる側面から支えるようなイメージで、いずれも治験の運営をサポートするプロフェッショナル集団であり、同じ目的を実現しようとするパートナーともいえるでしょう。

今後の展望

日本市場においてはまだまだ伸びしろが大きい

ここ数年の動向として、日本CRO協会の会員企業の総売上高は2000億円弱、日本SMO協会の会員企業の総売上高は約300~400億円程度(SMO事業のみ)で推移しています。規模の拡大を図る企業も多く、毎年スタッフが大幅増員されるケースも珍しくありません。米国などと比べると、日本ではまだまだ治験がアウトソーシングされる割合が低いことを考えても、成長の余地が大きい領域だといえるでしょう。

一方で、現状では日本における治験数は増加傾向にありますが、その増加率は少しずつ低下しており、将来的には横ばい~減少に転じる可能性も指摘されています。治験におけるICTの活用も含めて、CRO・SMO業界でもよりいっそうの業務効率化が図られていくことは間違いないでしょう。

出典元:日本CRO協会 2020年年次業績報告書

CRA・CRCの仕事

多数の関係者との連絡調整がカギ

CROのCRAとSMOのCRCは、いずれも治験に関わるスペシャリストであり、薬学部出身者も多く活躍しています。CRAの役割は、治験の適正な実施・進行をサポートすること。特に重要なのがモニタリング業務で、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)や治験実施計画書が遵守されているかどうか、客観的な立場で確認しながらデータを収集します。また、症例報告書の管理や各種契約・手続きも担当するなど、治験のプロセス全体で力を発揮します。

CRCは、治験を実施する医療機関において、医師をはじめとする医療従事者や患者さん(被験者)を支援することが主な役割です。具体的には、医療機関内の各部署の調整、製薬会社への報告書作成の支援、患者さんの来院・検査スケジュール管理、インフォームドコンセントの補助など。治験において被験者の存在は欠かせず、直接コミュニケーションを図ることで不安や心的負担を軽減することが重要です。CRCは、被験者に寄り添うことで精神的にサポートすると同時に、仮に治験を途中離脱するようなことがあっても、その後の治療で不利益を受けないよう権利擁護していきます。

就職活動&キャリアパス

就職活動のポイント

「チームで動く力」があることをアピールしよう

多くの薬学生にとってCROやSMOという業種はなじみが薄く、業務の実態をとらえにくいもの。だからこそ就職活動においては、情報収集の質が命運を分けるといえそうです。業界や職種を深く理解することはもちろん、自身にマッチした理念や雰囲気の企業を志望先として、説得力のある動機を伝える必要があります。インターンシップ&キャリアなどの機会を存分に活用し、十分な比較検討を重ねましょう。

高度な専門性に加えてコミュニケーション能力が必須となる仕事なので、選考過程でもしっかりと先方にアピールしたいところ。特にグループワークがある場合は、やみくもに目立とうと焦るのではなく、チームとして目標達成するための振る舞いを意識するといいでしょう。なお、国際共同治験の増加を踏まえて、今のうちから英語力を磨いておくこともお勧めです。たとえTOEICの点数などによる足切りがなかったとしても、入社後の実務を考えれば、英語での会議やメールのやり取りに対応できるレベルに達しておくと理想的です。

キャリアパス

「治験のプロ」としての可能性が広がる

CRA・CRCのいずれもプロフェッショナルな職種なので、その専門性を究めていくのが主流です。例えば、CRAなら、複数の領域で第I~III相試験を担当したり、医療機器の治験や市販後調査、医師主導治験など幅広い経験を重ねていったりすることが考えられます。また、将来的にマネジメント層をめざすルートも一般的です。企業ごとに呼び方は異なりますが、グループリーダー、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーといった役職を段階的に昇っていくイメージです。特にCRAの場合は、データマネジメント業務、統計解析業務、監査業務、メディカルライティングといった領域にキャリアチェンジする方向性もあり得ます。

向いている人

粘り強くプロジェクトを推進できる人

人命に関わる仕事である以上、法律やルールを遵守するといった、コンプライアンスに関する意識の高さは絶対条件だといえるでしょう。担当する疾患や領域への知識を深めるため、卒業後も学びを継続することが求められます。また、治験を円滑に進めるための調整能力やコミュニケーション能力が欠かせません。社内外はもちろん、時には海外の協力先とも連携しながら、粘り強く案件を進行させていく力が必要です。さらに、多忙を極める医療従事者、あるいは不安な思いを抱える患者さん(被験者)やそのご家族をしっかりと支えるという意味では、細やかな気配りができる人にマッチしている仕事だといえます。

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