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CBT&OSCEを徹底解説!

薬学共用試験(CBT&OSCE)の概要と攻略法

医療系の学生にとって実習は成長の大きな機会となりますが、薬学生の場合は実務実習に臨む前提としてCBTとOSCEで構成される「薬学共用試験」に合格する必要があります。薬学部4年生の大きな関門ともいえるこの2つの試験の概要を押さえ、抜かりなく対策を進めましょう。

※本ページ記載の内容は、2022年1月時点の情報に基づいています。

Index

なぜ、薬学共用試験が必要?

CBT——薬学の知識と問題解決能力を評価する客観試験

OSCE——技能や態度を評価する客観的臨床能力試験

なぜ、薬学共用試験が必要?

薬学生は、卒業するまでの間に、実務実習などを通して薬剤師としての基礎的な実践能力を十分に修得しておくことが求められます。一方で、薬学生が調剤行為を行うと、薬剤師法第19条の「薬剤師でない者は、販売または授与の目的で調剤してはならない」という規定に抵触してしまいます。

この矛盾を解消するために実施されるのが、薬学共用試験です。各大学は、この試験の合格をもって学生の基礎的知識や技能・態度が基準に到達していることを保証し、それにより合格者は実務実習へ参加することが許されるのです。

薬学共用試験は、基本的な知識を評価するCBT(computer-based testing)と、基本的な技能・態度を評価するOSCE(objective structured clinical examination)から成り、この両方に合格する必要があります。全国薬科大学長・薬学部長会議の下に設置されたNPO法人薬学共用試験センターが統括し、全国の薬科大学で共通の試験を実施するため、大学間の格差が生じることもなく、実習生のレベルを一定の水準に保つことが可能となっています。

実施時期は、実務実習の前年となる4年次であり、原則として12月1日~1月31日の2か月間のうちに各大学が設定した日程となります。試験会場は、受験生が所属する大学です。薬学共用試験に関しては、ほとんどの手続きを大学が一括して行うため、自身が所属する大学のスケジュールを確認し、指示に従って動きましょう。薬学共用試験センターは受験生からの直接の問い合わせに対応していないため、試験に関する疑問などは各大学の担当者に質問してください。各試験の結果は試験後1週間以内にセンターから各大学に送付され、これに基づいて各大学が合否の判定と通知を行います。

CBT——薬学の知識と問題解決能力を評価する客観試験

CBTは、薬学生が実務実習を行うために必要な知識が一定の基準に達しているかどうかを問う試験です。コンピューター画面上に表示される問題を次々に解答していく形式で、合計310問の多肢選択問題が受験生ごとにランダムに出題されます。ランダムとはいっても、CBT体験受験(後述)や過去の試験結果から得られた期待正答率の和が等しくなるように問題が組み合わされて作成されるため、各受験生が受ける試験の難易度は同等となる仕組みです。

01.CBTの出題範囲と問題数

CBTの出題範囲は大学1~4年生で学んだすべてのことであり、薬学教育モデル・コアカリキュラムに準拠した項目により、3つのゾーンに分けて実施されます。試験時間は各ゾーン2時間で、休憩を挟んで1日で終了する構成です。

問題の内容は、各分野で取り扱われる重要なキーワードや項目についての基本的な知識を問うレベルです。1問当たりの解答時間が約1分以内となるよう調整されています。原則として五肢択一問題であり、薬剤師国家試験のような正答を2つ以上選ぶ問題は出題されません。社会情勢や法規・制度の変化に合わせて毎年問題が修正され、随時新しい問題も追加されています。

合格基準は正答率60%(186/310)以上で、この基準に達しない場合は再試験を受けることができます。また、病気などのやむを得ない事由で受験できなかった場合は、追試験の対象となります。再試験や追試験は、本試験と同じ年度内に各1回のみ実施されます。

02.CBT体験受験を効果的に活用しよう

薬学部4年生を対象に、薬学共用試験センターがCBT体験受験を実施しています(毎年7~9月)。本試験と同じ環境でCBTを体験できる機会で、使用するシステムや問題のボリュームも一緒です。端末の操作方法や会場の雰囲気に慣れることができる上、本試験では通知されない分野ごとの採点結果もフィードバックされるため、夏の段階で自分がどれくらい習熟できているかの指標にもなります。体験受験を受けられるのは本試験を受験する年度に一度きりであり、CBT対策のカギとなる貴重なチャンスだといえます。

CBT対策を早く始めるに越したことはありませんが、現実的には多くの学生が体験受験を契機として4年生の夏に開始しているようです。基本的な問題であるため、1年次からの授業内容をしっかりと理解して積み重ねていくことが最も重要であり、教科書や参考書を反復学習することが一般的です。大学内外で開催されるCBT対策講座を活用するのもいいでしょう。

ゾーン別にみると、ゾーン1とゾーン2は主に1~2年生で習う基礎的科目であり4年生では記憶が薄れている可能性があるため、優先的に復習することをお勧めします。また、採点で国試の必修問題のようなゾーンごとの足切り設定は存在しないので、試験本番では得意分野で得点を稼ぐよう意識することも有効です。

OSCE——技能や態度を評価する客観的臨床能力試験

OSCEは、薬学生の基本的な臨床技能や態度、コミュニケーション能力などを客観的に評価するために開発された実技試験です。受験生は、調剤、模擬医師への疑義照会、患者・来局者応対など、種々の基本的課題が準備された「ステーション」と呼ばれる小部屋を順番に巡り、定められた時間内で課題に取り組みます。評価を担当するのは、所属大学の教員に加え、他大学薬学部教員や病院・薬局の薬剤師などであり、受験生1人に対して2人の評価者が付き、臨床能力の総合的な評価を行います。

01.OSCEの領域と課題

OSCEの課題項目は、医療現場で実務実習を行う前に修得度の確認が必須であるものばかりです。5領域6課題について、実地試験または模擬患者が参画するシミュレーションテストが実施されます。同じ大学の学生には同じ課題が出題されますが、大学ごとでは課題が異なるため、モニター制度を導入することで公平性や透明性を保っています。

細目評価として課題ごとに設定された項目をクリアできているかどうか1つずつチェックし、概略評価として全体を通した手際や態度を各評価者が6(優れている)~1(劣っている)の6段階で評価します。

合格基準は、細目評価で2人の評価者の平均点が70%以上であり、概略評価で2人の評価者の合計点が5以上であることです。合格基準に達しない場合や、やむを得ない事由で受験できなかった場合は、CBTと同様に再試験や追試験を受けることができます。

02.OSCEは減点方式ではなく加点方式

1課題当たりの課題表閲覧時間は1~2分、実技時間は5分であり、この制限時間がネックとなって強い緊張感を覚える受験生がほとんどです。「抑えようもなく手が震え、無菌操作時にガラスアンプルで手指を傷付けてしまい、自身の止血に時間を取られて失敗した」というケースもあります。自宅でできる対策として、折り紙と調味料を使って薬包紙を折る練習や、家族を相手にしたロールプレイングなどを積んでおくと安心できるかもしれません。

現在の薬学教育では、医療人としての薬剤師を育成することに重点が置かれており、ヒューマニズムや倫理など、医療人にふさわしい行動や態度を見る問題が盛り込まれていることを意識する必要もあります。頭の中で考えるだけではなく、実際に手を動かしたり、声を出したり、緊張しても自然に動けるよう練習を繰り返して体で覚えていきましょう。

OSCEは減点方式ではなく、加点方式であることに注意してください。加点方式であるということは、緊張のあまり失敗しても減点されることはないので、順番が前後してしまったり、間違った行動をしてしまったりしても、手を止めず着実に加点していくことが合格への近道となるのです。

薬学共用試験は、受験者を振り落とすためのものではなく、あくまでも「実務実習を行うための知識が備わっていることを保証する」ためのものです。合格率も例年97%以上で、薬学生が普段通りのことをできれば合格するように設定されています。過度に恐れることなく、日ごろの成果を発揮することを心がけてください。