入社を予定する企業は、小学生の時から憧れた会社です。東京都立産業技術高等専門学校に進んだのも、その会社に一歩でも近づくためだったかもしれない、と濵口深心人さんは振り返ります。工業技術の素晴らしさに、最初に感動を覚えたのも子どもの頃。少年時代に抱いた憧れと感動を高専で掛け合わせ、さらに学びの中で「自分の得意」を発見したり磨き上げたりして、夢を実現。気がつけば自他ともに認める内向的な性格は、過去のものになっていました。
内定者インタビュー Vol.01

東京都立産業技術高等専門学校
ものづくり工学科 生産システム工学コース
濵口 深心人さん
在学中に一番力を入れていたことは何ですか?

本校は、小・中学生向けにプログラミング講座を開いています。私もその地域活動に加わり子どもたちにプログラミングを教えながら、IT活用の面白さを伝えました。私が高専に進んだきっかけは、「技術ってすごい!」と小学生の時に感じたこと。その体験を、今の子どもたちにも味わってほしかったのです。
プログラミングは、中学まで未経験でした。ですから小・中学生に教えている知識と技術は、すべて高専で身に付けたものです。高専を卒業した後、進学か就職かの進路を自分の意思で選べるよう成績を高く維持することに努めました。学業に力を注いだ成果を、地域活動にも生かすことができました。
学業や地域活動と併せて力を注いだのが、産技祭実行委員会の活動です。3、4年次は司会を担当し、イベントを盛り上げました。こうした行事や実習科目を通して仲間と力を合わせて目標を達成する喜びを知ったことは、内向的だった性格を変えて自分の成長につながる私の財産になりました。
就職活動を振り返ってみて、どうでしたか?
進路を就職に絞ってから内々定を得るまでは、約5カ月間ありました。4年生から5年生になるその期間に私は、働くことへの期待感や意欲が増していく不思議な感覚を経験しました。就職活動に取り組み始めたことで、漠然としていた夢が実現を目指す具体的な目標に変わっていったのかもしれません。
就職活動のために熱心に取り組んだのは面接対策です。十分な面接対策は就職支援室に紹介してもらった、志望企業に勤務する卒業生からもアドバイスをもらいました。研究室の先生や就職支援室の方を面接官に見立てた模擬面接を繰り返す中で、大きな目標を達成するために小さな実行を重ねる大切さを教わりました。
「小さな実行」として努力したのは、自分の考えを正しく伝える力を強化することでした。また自分の強みをアピールするときは、それを示す事例を添えて話せるようにしました。たとえば臨機応変や用意周到である自身の特長は、産技祭で司会をするための準備や本番での対応を具体例として語りました。
就職活動中につらかったことは何ですか?

卒業後の進路を就職と決めたのは4年次の秋。それまでは専攻科に進む計画だったため、夏のインターンシップには参加していません。就活を始めてからはその対策に全力で取り組み、冬季のそれも目に入らず。志望企業でなくても、在学中しかできないインターンシップは経験してもよかったと後になって思いました。
最終面接を終えて結果が出るまでの2、3日は、気持ちが追いつめられました。その間にやれることは何もなく、連絡を待つしかない時間が長く感じられました。内々定の通知をいただいたときは、本当に嬉しかったです。就活を支えてくれた両親には電話やメールではなく、対面で直接報告しました。
面接では、練習通りに回答できたと思います。取り組むべきことの準備は注意深く整え、臨機応変に対応できるという強みをアピールし、高専で鍛えた伝える力を生かし、技術がもたらす感動を広めたいという夢も語れたことに満足しています。そうした主観的な意見に、いかに客観的な価値を持たせるかは今後の課題と考えています。
入社予定の企業を選んだ決め手は?
入社を予定する会社は、子どもの頃からの憧れでした。小学生の頃、友達の家の近所にあった本社から出てくる人たちの表情が明るく、活気を感じたことが志望企業に引かれたきっかけです。成長してからもその記憶は薄れず、また技術の会社であることから就職活動の志望先に選ぶのは当然でした。
とはいえ子どもの時に抱いた憧れですから、それは漠然としたもの。就職活動のための情報を集めてみると、テレビCMなどで知っていた製品は、その会社が開発・製造する製品のごく一部であることがわかり、入社を目指す会社として見るようになってから魅力が増し、就活準備への意欲が高まりました。
私は機械技術者として内々定をいただき、入社後は設計か品質管理の部署に配属される予定です。また勤務してからの学習と努力次第で、海外赴任を含めて他の職種に就く可能性もあります。子どもの頃に抱いた夢の実現に挑んだ就職活動のように、入社後もチャレンジを続けたいと心に決めています。
後輩に向けてメッセージをお願いします

進学や就職の志望先は、自分の興味や得意を磨き上げ、とがらせることができそうな学校や会社を選んでみてはいかがでしょう。私の場合、それは数学でした。高等専門学校に進学したのも、技術に興味があり、数学好きを伸ばせる環境を求めた結果でした。
「自分の得意」を磨き上げること、磨き上げてとがらせた得意を生かせる仕事に就くことがなぜ大事か? 結果としてその仕事が、最も社会のためになると思えるからです。広く学ぶ中で苦に感じなかったり夢中になれたりすることがあれば、それが得意なことなのだと思います。
「自分の得意」がわからなければ、友達や先生、両親など身近な人に聞いてみましょう。自分が気づけていない、人に勝る点や個性を教えてもらえるかもしれません。周囲に見られている「自分」と、一人で考える「自分」には差があるようで、私も仲間との実習で、思いも寄らなかった「自分の得意」を発見できました。