宇宙ビジネス業界の「現在」と「未来」
3日間の宇宙旅行に成功。ネット接続など関連ビジネス拡大
アメリカの宇宙ベンチャー、スペースX社は2021年9月、民間人4人が搭乗した宇宙船により、3日間で地球を50回周回し帰還した。同社はすでに1,000機以上の人工衛星を打ち上げており、将来的には1万機の打ち上げを目指している。旅行よりも、同社がビジネスとして重視しているのは、宇宙インターネットだ。インターネットを利用できる環境下にあるのは世界の人口の半分程度だが、人工衛星によって接続環境を整備する。
宇宙ビジネスはインターネット接続だけでなく、宇宙旅行、宇宙からの映像のビッグデータ利用、惑星探査という4つのジャンルに分けられる。宇宙旅行は、文字どおり宇宙を旅するもので、スペースXだけでなく、数社が民間人も含めて利用できるよう準備を進めている。ビッグデータ利用は衛星からの広角で詳細な画像を解析し、事業の意思決定などに役立てる内容。惑星探査は月や火星を対象とし、将来的には人類が居住できるようなコロニー建設構想もある。
安価な衛星開発で民間参入急増。日本でもベンチャーが次々と発足
宇宙というと、以前は比較的大規模なロケットや人工衛星の開発が想定されていたが、現在では小型で安価ながら、高性能な衛星の開発に成功。純民間ベースでビジネス展開が可能になってきたことから、世界的に参入企業が急増。世界の宇宙ビジネス市場は現在、40兆円程度だが、将来的には100兆円とも予測されている。
日本でも宇宙ビッグデータ活用や、天候に左右されないレーダーを利用した宇宙からの撮影、宇宙ゴミの除去、宇宙関連の商社などのベンチャー企業が次々と誕生している。大手企業も将来性を見越し、すでに100社以上の上場企業が宇宙ベンチャーに出資したり、業務提携したりしている。
国内市場は約3,200億円。技術開発促す制度も始動
日本の宇宙ビジネス市場はどうか。日本航空宇宙工業会によると、日本政府や企業が管理している衛星は、20年4月時点で科学衛星が39機、実用・技術試験衛星が73機、運用中の放送衛星が25機となっている。国内の市場規模は、2020年度で前年度比2.1%減の3,216億円と予測。内訳は、ロケットと衛星の飛翔体が2,691億円、地上装置が271億円、ソフトウエアが254億円と、まだ小さい。
国の宇宙開発予算で見ても、21年度当初予算で前年度比13.6%増えたものの、1府8省にわたる総額では3,414億円と、アメリカの約5兆円と比べて低水準だ。それでも、政府が一定額の開発費用を負担し、民間企業が独自で技術開発して、それを政府が購入するアンカーテナンシーという手法を宇宙基本計画に盛り込んだ。この手法を使えば原価低減だけでなく、民間の技術開発力の向上が見込まれる。
日本企業は成功率が極めて高いロケット打ち上げ技術や、衛星関連電子機器、ソフトウエアなどの技術を保有しており、今後は世界市場への積極的な進出やビジネスの大幅な拡大に期待を寄せている。