早稲田大学

早稲田大学
総長

田中 愛治

田中 愛治写真

東京都出身。1975年早稲田大学政治経済学部卒業。1985年オハイオ州立大学大学院にて政治学博士(Ph.D.)取得。早稲田大学政治経済学術院教授等を経て、2018年11月より早稲田大学総長に就任。

「学びたい」を貫いた10年の留学、やり抜く価値を学んだ時間。

挑戦を後押しした「逃げない」という意地

今でこそ大学の総長という立場で、人前に出ることも多い私だが、子どもの頃はシャイで引っ込み思案な性格だった。しかし、一度挑戦したら何があっても逃げ出さない、そんな負けん気は昔から誰よりも強かったように思う。大学時代は体育会の空手部に所属したが、週6日の激しい練習で同級生はどんどん減っていく。そんな中で私は「逃げるようには辞めたくない」との思いで空手部をやり通した。
学業では、恩師である政治学者・内田満教授の影響で「計量政治学」に熱中した。計量政治学とは、政治現象を数量データを用いて分析する学問領域。当時、その最先端はアメリカにあった。「いまアメリカでは、隣接諸科学と連携し、大型計算機を活用しての分析手法が主流になっている」との内田教授の言葉に大いに触発された私は、早稲田大学卒業後にアメリカに渡ることを決意する。

厳しくも海の向こうから見守ってくれた恩師

当時の私には、アメリカで学びたいという思いはあっても、専門の授業を受けるほどの英語力はなかった。そこで、まずはジョージタウン大学に併設された語学学校に通い、英語力を徹底的に鍛え直すことから海外生活は始まった。次にバージニア州の州立大学で研究内容の基礎を固め、念願のオハイオ州立大学大学院へ進学。アメリカでも恩師に恵まれ、計量政治学の研究に本格的に打ち込むことができた。
ただ、日々の生活は過酷だった。翌日の授業予習に追われ、就寝は毎晩午前2時、3時が当たり前。試験前には、そのわずかな睡眠時間も削って、机に向かうことも少なくなかった。それでも学びを積み重ね、1985年に政治学博士(Ph.D.)を取得するまでには、実に10年半の歳月を要した。
その厳しさに耐えられたのは、「一度挑戦したら逃げない」という意地、「計量政治学を極めたい」という強い探究心、そして多くの先生方の支えがあったからであると思う。帰国してから10年以上が過ぎた頃、「早稲田に来ないか」と、あの内田教授からお誘いを受けた。私をこの道に導いた恩師にようやく認められたのだと、胸がいっぱいになった。

やり抜いたからこそ、掴めたもの

留学で得た最大の収穫。それは「やりたいとの思いで進んだ道は、間違いではなかった」という確信である。空手で培った胆力は不条理に抗う力となり、10年半の留学経験は自力で道を拓く基盤となった。また海外での異文化との接触は視野を広げ、計量分析の必要性から文理横断の学びの意義も自覚した。現在、私が総長として取り組む大学改革でも、目標はぶらさず、しかし方法は柔軟に変えるという姿勢を貫き、早稲田に本当に必要な改革を推進している。

学生への応援メッセージ

自分が「本当に」やりたいテーマを見つけ、その追求に打ち込んでください。興味のある対象に向き合うと、人は120%の力を発揮できる。そして、それはやがて高い評価につながるはずです。やりたいことを一つに絞っても、可能性が狭まるわけではありません。私自身、留学を通じて世界はむしろ広がった。人類の多様性に触れ、政治学の外にも学ぶ領域がいくつも見えました。だからこそ何でもいい、心から惹かれるものを見つけて、徹底的に追求してみてほしいと思います。