信州大学
学長
中村 宗一郎
山口県出身。島根大学農学部卒業、鳥取大学大学院博士課程修了(博士(農学))。宇部短期大学、島根大学などを経て、2005年より信州大学教授。2021年10月より現職。
「夢中になることを恐れない」。私の学生時代をひとことで表現するなら、そんな言葉になるだろう。ワンダーフォーゲル部、ヨット部、演劇部と、さまざまな活動に夢中になった。もともと“挑戦すること”に前向きだった私は「面白そうだ」と思えたことには、次々とトライしていった。大きな目標などがあった訳ではない。それでも、それぞれの活動を、多くの仲間とともに、自分なりの手応えを掴むまでやり続けた。
一方で、私には一人で没頭する習慣もあった。「読書」だ。書庫として用いた下宿の押し入れには、教科書や専門書はもちろん、文学、哲学、経済、評論と、あらゆるジャンルの本が並んでいた。書店に足を運び、一食抜いても本を買う日があった。気になった本は片っ端から、時には複数冊を並行して読む。毎晩、夜が白むまでページを繰った。
漠然とした知への憧れがあり、未来もまた漠としていた。ただ「もっと遠くを知りたい」という欲求だけは燃え盛っていた。振り返ると、“乱読”こそ、私の学生時代の“没頭”を象徴する営みだったと思う。
心揺さぶられる経験を積み重ねる中、ワンダーフォーゲルからは厳しい自然を生き抜く根気やしなやかさを、ヨットからは仲間と協働する力を、演劇からは表現の力や度胸を学んだ。
乱読で培った速読力は、私に情報や状況を素早く理解する力を授けた。読書そのものが、知識の幅を広げ、視点を増やし、知恵を宿してくれたことは、言うまでもない。それぞれから得た力は、私の思考力と意思決定、コミュニケーション能力などを支える礎となっている。
学生時代の私は、今の私の姿を想像すらしていなかった。「こういう人間になりたい」という明確なイメージもなかった。しかし、当時のあらゆる積み重ねが、未来の自分の血肉に変わった。今日では、あの頃がなければ、今の自分も存在しないことを実感している。知の巨人の肩に乗れば、より遠くのものが見える。─多くの書物を通じて、幅広い知識をしっかりと蓄えたからこそ、より大きな世界へも自信を持って踏み出すことができたのだと思う。
何かに夢中になった、没頭した経験は、時間を超えて人生に影響を与える。ある日、それらが未来への最高の投資だったことに気がつく。 “夢中”と“没頭”には、時間を超えて人生を変える力があると信じている。
学生への応援メッセージ
「やってみたい」と心が動いたとき、それが将来役に立つかどうかなど、今は気にしなくていい。まずは一歩を踏み出す勇気を持ってください。仲間との経験や乱読が、学長となった今でも私の支えになっているのと同様に、皆さんの“没頭”もまた、未来のあなたを支えてくれるはずです。数々の経験が、いつか皆さんを大きな世界へ導く礎になっていくでしょう。




















