同志社大学

同志社大学
学長

小原 克博

小原 克博写真

1965年、大阪生まれ。マインツ大学、ハイデルベルク大学(ドイツ)に留学。同志社大学大学院神学研究科博士課程修了。同志社大学神学部教授、良心学研究センターセンター長。2024年4月より現職。

ボランティアを通じて得た視野と成長の原点。

ボランティアへの扉が開いた頃

学生時代は、生活が厳しく、学費と生活費を自分で稼ぐ必要があった。飲食店でのアルバイトのほか、建設現場や工場などでも働いた。少しでも効率よく稼ぎたいと考え、さまざまな仕事を経験した。「辛くなかった」と言えば嘘になるが、ここでの多様な人と出会いは、いい経験にもなった。
学業とアルバイトに追われる日々だったが、恩師や友人からの誘いをきっかけに、ボランティア活動にも精力的に取り組むようになった。
一年生の頃から、知的障がい者施設や、当時はまだ珍しかった高齢者向けのデイケアセンターへ、時間の許す限り手伝いに行った。大学のあった京都市内はもちろん、原付を走らせて隣県へも出かけた。

心が通い合う瞬間に気づいて

障がい者施設へ通い始めた頃の戸惑いをよく覚えている。重い知的障がいの子どもたちとは、会話によるコミュニケーションが上手くいかないことも多い。出会い頭に抱きつかれて、よだれが首筋に流れるようなこともあった。しかし、一緒に食事をしたり、遠足に出かけたりするうちに、言葉が通じないことや服が汚れることなど、どうでもよくなる。笑いあうなかで、「心が通い合った」と思える瞬間が増え、強い喜びを感じるようになった。
また、それぞれの施設には大学のキャンパス内では出会えない人々がいて、全く違う人間関係があった。時に生々しい現実に触れ、重い課題にも直面した。行政との関わりや、施設の運営にまつわる困難も知った。私は持ち前のタフネスを鍛え、資金繰りのための交渉術などに関する知識を培っていったが、自分が強くなるだけでは解決できないことも多く、他者と力を合わせる必要性も思い知った。周囲を巻き込み、知恵を集め、チャレンジを繰り返す。どれも極めて新鮮で、学びの多い経験だった。

好奇心に導かれた没頭と今へのつながり

ボランティア活動を通じて、私は“新しい世界に関わること”に没頭していたのだと思う。大学生活だけでは見えてこない世界と関わりを持てたことは、間違いなく私の人間観を広げた。「社会に必要なことを実現するためには何をすべきか」という、その後の自分の考え方や行動の土台ともなった。それはドイツでの留学を通じて、さらに国際的な視野を得ることにもなった。
思い返してみると、多少の無茶をしても、人と違うことをやってのける子どもだった。“没頭”の原動力は、この子どもの頃からの強い好奇心であったと思う。
現在も、ボランティアは私のライフワークの一つであり、大学でも数多くのプログラムを開設し、フィールドワークを行っている。はじめは大いに戸惑いながらも、必死に取り組む学生たちを見ると、「自分もこんな風だったなあ」と、当時の自分の姿が、重なって見える。

学生への応援メッセージ

没頭できるものを無理して探す必要はないと思います。ただ「現状のままでよい」と考え、可能性を閉ざさないでほしい。
教室の中で学べることは、限られています。幅広い人との出会いを、ぜひ大切にしてください。流行りものだけでなく、自分が関わったことのない、新しい世界に触れてください。セレンディピティ、それが、今後の社会についてのあなたの見方や考え方、また、社会課題の解決のためのアイデアにつながっていくはずです。