

2022年度の診療報酬改定が行われましたが、特に薬剤師に関わる調剤報酬の中身が気になるところ。依然として続くコロナ禍の影響を大きく受けつつも、これからの薬局・薬剤師に果たしてほしい役割が明確に示された内容となっています。現役の薬剤師はもちろん、薬学生の皆さんにも知っておいてほしいポイントをご紹介します。
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調剤報酬改定に注目すべき理由は?

2022年度調剤報酬改定のポイント

調剤報酬改定に注目すべき理由は?
調剤報酬は、医科報酬や歯科報酬と並んで診療報酬を構成する要素の一つで、2年に一度改定されています(直近の改定は2022年4月)。ざっくりしたイメージとしては、薬剤師の仕事一つひとつが調剤報酬点数表に基づいて評価され、その積算された点数に応じた金額が医療保険の保険料や国庫から支払われることになります(患者自己負担分は除く)。調剤報酬は調剤基本料、調剤料、薬学管理料、薬剤料などに細分化されますが、社会情勢などを踏まえながら、こうした構成そのものの見直しや、細かな調剤報酬点数の調整などを行うのが調剤報酬改定です。
調剤報酬改定の内容は、今後の薬剤師業界のゆくえを占うものとして、薬学生の皆さんにとっても注目に値します。なぜなら、「薬剤師業界のここの部分を今後はこうしていきたい」という国の意向がダイレクトに反映されるからです。例えば、過去の改定でかかりつけ薬局・薬剤師制度が誕生し、薬剤師の日常業務はおろか、存在のあり方そのものにまで大きく影響したようなことが、今後も起こり得るわけです。今回の改定は、2025年の地域包括ケアシステム完成に向けていよいよ大詰めというタイミングなので、とりわけ注意深くチェックしたいもの。そうした意識を持って調剤報酬改定の内容を見たとき、どんなところがポイントだといえるのか、以下に解説していきます。

2022年度調剤報酬改定のポイント
01.薬局薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進
地域包括ケアシステムで果たすべき薬局・薬剤師機能が検討される中で、「対物業務から対人業務へ仕事の重心を移すこと」が求められています。対物業務というのは薬剤の調製や取りそろえなど、対人業務は患者に直接関わる服薬指導や薬学的管理などを指します。この方針を推し進めるため、今回の改定では次の廃止・新設が行われました。
- 廃止→調剤料、薬剤服用歴管理指導料
- 新設→薬剤調製料、調剤管理料、服薬管理指導料
特に従来の調剤料で評価される仕事は主に対物業務でありながら、調剤報酬全体に占めるボリュームが大きかったため、薬剤調製料に再編して点数を抑制しています。一方、対人業務に関わる調剤管理料、服薬管理指導料は点数を引き上げる方向で調整し、対物業務から対人業務へ評価の比重を移しながら、対物・対人全体を合わせた点数は基本的に改定前とさほど変わらないように配慮されています。

厚生労働省: 令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤) を基に作成
02.薬局の機能と効率性に応じた評価の見直し
薬局の地域における貢献の度合いや、そのための体制整備を評価するため、地域支援体制加算に上位区分(地域支援体制加算2)が新設され、それに該当すればより多くの報酬を受けられるようになりました。
調剤基本料1を算定する薬局が、地域支援体制加算の施設基準を満たした上で、「地域医療に貢献する体制を有することを示す実績」として在宅薬剤管理の実績などを積み、さらに「夜間・休日等の対応実績」「重複投薬・相互作用等防止加算等の実績」「かかりつけ薬剤師指導料等の実績」などからなる9項目のうち3つ以上を満たす「相当の実績」があれば地域支援体制加算2を算定でき、薬局の収入に大きく寄与することでしょう。
1 | 地域医療に貢献する体制を有することを示す実績 |
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2 | 患者ごとに、適切な薬学的管理を行い、かつ、服薬指導を行っている |
3 | 患者の求めに応じて、投薬に係る薬剤に関する情報を提供している |
4 | 一定時間以上の開局 |
5 | 十分な数の医薬品の備蓄、周知 |
6 | 薬学的管理・指導の体制整備、在宅に係る体制の情報提供 |
7 | 24時間調剤、在宅対応体制の整備 |
8 | 在宅療養を担う医療機関、訪問看護ステーションとの連携体制 |
9 | 保健医療・福祉サービス担当者との連携体制 |
10 | 医療安全に資する取組実績の報告 |
11 | 集中率85%超の薬局は、後発品の調剤割合50%以上 |
地域支援体制加算の実績要件(1薬局当たりの年間の回数)
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❶
麻薬小売業者の免許を受けていること
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❷
在宅薬剤管理の実績 24回以上
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❸
かかりつけ薬剤師指導料等に係る届出を行っていること
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❹
服薬情報等提供料の実績 12回以上
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❺
薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得した保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議に1回以上出席
地域支援体制加算の実績要件(①~⑧は処方箋受付1万回当たりの年間回数、⑨は薬局当たりの年間の回数)
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➀
夜間・休日等の対応実績 400回以上
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➁
麻薬の調剤実績 10回以上
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➂
重複投薬・相互作用等防止加算等の実績 40回以上
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➃
かかりつけ薬剤師指導料等の実績 40回以上
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➄
外来服薬支援料の実績 12回以上
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➅
服用薬剤調整支援料の実績 1回以上
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➆
単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績 24回以上
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➇
服薬情報等提供料の実績 60回以上
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➈
薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得した保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議に5回以上出席
地域支援体制加算1 39点
❶~❸を満たした上で、❹又は❺を満たすこと。
(新)地域支援体制加算2 47点
地域支援体制加算1の要件を満たした上で、➀~➈のうち3つ以上を満たすこと。
(新)地域支援体制加算3 17点
麻薬小売業者の免許を受けている上で、➀~➈のうち➃及び➆を含む3つ以上を満たすこと。
地域支援体制加算4 39点
➀~➈のうち、8つ以上を満たすこと。
厚生労働省: 令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤) より
そのほか、ポリファーマシー対策として、重複投薬の解消に関する実績がある薬局が算定できる服用薬剤調整支援料2の点数が引き上げられました。また、同じ目的で調剤管理加算が新設されています。これらは、医療機関から6種類以上の内服薬を処方されたケースにおいて、薬剤師の介入で減薬につなげることを評価するものです。
03.リフィル処方箋の導入
症状が安定している患者について、医師の処方と薬剤師の適切な服薬管理の下で一定期間内に反復利用できるという、リフィル処方箋の仕組みが設けられました。病気の状態が安定していれば毎度医師の診察を受けることなく、前回と同じ薬剤を受け取れるというもので、患者の利便性アップや医療費の抑制につながりそうです。
もちろん、担当医がリフィルによる処方を可能と判断することが大前提で、その場合は処方箋の「リフィル可」の欄にレ点を記入します。反復利用できる上限は3回まで、1回当たりの投薬期間と総投薬期間は医師が適切と判断した期間とされています。現状、薬局がリフィル処方箋を応需しても特段の調剤報酬上の評価はありませんが、対象の患者は医師の診察をスキップしているだけに、服薬状況などを入念にフォローアップし、必要に応じて処方医と連携していくことが欠かせません。
04.オンライン服薬指導の要件緩和
オンライン服薬指導は、コロナ禍を契機として時限的特例措置として認められ(0410対応)、その後に恒久化されました。いまだコロナ禍が続く情勢でもあり、今回の改定ではオンライン服薬指導の要件緩和がなされ、さらなる普及が後押しされています。
具体的には、オンライン服薬指導を行う場合の服薬管理指導料の点数が引き上げられ、回数制限(従来は月1回)も撤廃されました。また、在宅患者に対しては、従来の在宅患者オンライン服薬指導料が在宅患者オンライン薬剤管理指導料に名称変更され、点数が引き上げられたことに加え、回数制限(薬剤師1人当たり週10回)も撤廃されました。

調剤報酬だけでも改定内容は多岐にわたり、ここで紹介したのは一部に過ぎません。薬学生の皆さんにおいては、改定内容の詳細を知るというよりは、どういう方向性で改定されたのかを押さえ、これからの時代に求められる薬剤師の姿をイメージしていただければ幸いです。