スーパーシティ構想&ウーブン・シティ構想業界の「現在」と「未来」
国家戦略特区を活用した未来都市。規制改革もスムーズに促進
スーパーシティとは、国家戦略特区を活用し、住民と事業者が協力し、高齢化や過疎化、空き地や空き家などの課題を解決する未来都市だ。自動走行・自動配送や再生可能エネルギーなどの個別の実証実験ではなく、AIやビッグデータなどを使って行政のデジタル化、遠隔医療・教育、決済のキャッシュレス化など幅広く生活全般をカバー。暮らしや社会を変革させるものとしている。例えば、タクシーの配車予約と病院の予約を連携させれば、通院の手間が軽減される。これまでICTなどの技術志向により都市化を進めるスマートシティ構想があったが、スーパーシティは住民の暮らしを発想の基点としているという。
政府は国家戦略特区基本方針を定め、その中でスーパーシティについては基本構想を総理大臣が認定し、それを一括して規制を所管する大臣に通達し、特例措置を求めるとしている。地方の規制の場合は、条例などの特例措置を求めるなど各分野の規制改革をスムーズに実行し、世界最先端を目指すとしている。
カギを握るAPI。住民の協力などが課題
スーパーシティ実現のカギを握るのが、ソフトウエア同士をつなげるAPI (Application Programming Interface)だ。APIはソフトやアプリケーションなどの一部を外部に公開し、他のソフトと機能を共有化するものだ。2020年5月には国家戦略特別区域法の一部を改正し、シティ内にあるシステムやソフトの相互連携を強化するAPIをオープンにするルールを整備した。政府は構想実現を目指す自治体を公募しているが、実現に向けては住民の合意、個人情報保護、サイバーセキュリティなどが課題として指摘されている。
トヨタが進めるウーブン・シティ。2025年完成予定で、当初2,000人入居
一方、トヨタ自動車が進める「ウーブン・シティ」もスーパーシティといえる。ウーブン(Woven)」とは編まれたという意味で、網の目のように道路が織り込み、あらゆるモノやサービスがつながることを指している。同シティは静岡県裾野市にあるトヨタ自動車東日本の東富士工場跡地で21年2月に着工した。敷地は東京ドーム15個分に及ぶ。
具体的には、スピードが速い車両専用の道路、歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが通る道路、歩行者専用という3本の道路で構成。電力はクリーンエネルギーである水素を使った燃料電池発電で、電力を含め、ガス、水道などの生活インフラはすべて地中に設置する。移動や配送などのモビリティは全て自動運転で、建物は木材を使用し、屋根には太陽光発電パネルを設置。室内用ロボットを利用し、AIを使った県境状態チェックなども行う。
すでに同計画を進める専門の事業会社4社も設立しており、25年の完成予定。初期はトヨタの従業員や関係者約2,000人が入居予定で、将来的には一般入居者の誘致も予定しているという。