お茶の水女子大学

お茶の水女子大学
学長

佐々木 泰子

佐々木 泰子写真

山口県出身。お茶の水女子大学文教育学部文学科国文学国語学卒業後、同大学院人文科学研究科日本文学専攻修士課程修了(文学修士)。同大学院人文科学研究科日本言語文化専攻修了(人文科学修士)。2021年4月より現職。

過去の“没頭”の全てが、今日の自分に繋がっている。

積み重ねた経験とたくさんの出逢い

小さい頃から、何かを読むことが好きだった。小学校で配られた教科書は、その日のうちに読んでしまう。自宅の書棚の世界文学全集、定期購読していた児童向け雑誌。「勉強のために読む」というより、何でも手にとって、時間があれば読んでいる。学生時代も、図書館で多くの時間を過ごした。
「読書が好きでたまらなかったからこそ、日本語教師になり、国語・国文研究の道に進んだのだろう」と思うかもしれない。確かに、読むことは私を没頭させてきたが、それは“たまたま好きだったこと”の一つで、他にも多くの出逢いや経験があった。
中学時代の部活動は、陸上部。山口市の100メートル走の大会で、1位になったこともある。高校時代には受験勉強を頑張っていたし、大学に入ってからは仲間と一緒に研究したり、テニスをしたりと、チームで取り組む楽しさも味わった。当時連載中だった『ベルサイユのばら』を始め、漫画にも熱中した。坂東玉三郎氏のお芝居を観に、友人と連れ立って歌舞伎座へ足を運んだ日もある。

海外経験を経て、再び学びの場へ

国語教師になることは心に決めていたので、卒業後は私立の中高で教鞭をとった。その後、家族の都合でドイツに暮らし、現地で日本語を教える機会ができた。それまでの自分が蓄えてきたものを伝えることで誰かに喜ばれる経験をして、「この道を究めてみようか」と考えるように。異文化に暮らす人々と、日本文学について語るのも楽しかった。
帰国したタイミングで、お茶の水女子大学に日本語教育コースという修士課程ができていたのも、私に“たまたま”起きた、巡りあわせの一つ。セレンディピティとも言えるかもしれない。読んだもの、学んだことの学びや、多くの経験、偶然によって導かれてきた。あの時の自分は何かに没頭していた、というのも、振り返ってみて初めて“そうだった”と感じられる。

“点と点”を繋げる力

時代や環境も影響しただろうし、自分の好奇心や、生まれ持った素養、そして時には、楽観的な性格も幸いしたかもしれない。評価はいつも後からついてくるもので、「将来学長職に就いているだろう」と思ったことは一度もなかった。
スティーブ・ジョブズ氏の言葉を借りれば「Connecting The Dots(点と点を繋ぐ)」ということだろうか。全ては“点”であり、その繋がりもまた、今だからわかる多くの偶然や幸運から成るものだ。

学生への応援メッセージ

今の若い世代は私の世代よりも、環境問題や社会貢献に関心が高い人が多くて、偉いなと思うし頑張ってほしいなと思います。
勉強も仕事も、楽しいことばかりではないかもしれませんね。でも、大丈夫。何かに出会ったら、ちょっと続けてごらんなさい。
好きなことが見つからなかったとしても、毎日一生懸命に生きていたら、続けていることの中からきっと何かが残るでしょう。そして、今を楽しむことを忘れずに過ごしてください。