ホテル・旅行業界の「現在」と「未来」
宿泊者数は44%減。長期滞在など新サービスも
観光庁によると、2020年の国内の延べ宿泊者数は、前年比44.3%減の3億3,165人泊と大きく減少した。内訳は、日本人が同35.2%減の3億1,131万人泊、外国人が同82.4%減の2,035万人泊。コロナ禍により、特に外国人の宿泊数が激減した。これに伴い、宿泊施設の総客室数に対する利用客数を示す客室稼働率は34.6%と、前年(62.7%)に比べ大きく下落した。
こうした状況に対応し、特にグループ展開するホテル業界では、一部の営業停止や施設売却などの縮小策で生き残りを図っている。
縮小策の一方で、新しいサービスで顧客獲得を狙う動きも相次いでいる。割安に宿泊し、近隣地域の観光資源をじっくりと体感できる長期滞在プランや、休暇とテレワークを合わせたワーケーションプラン、テレワークなどに対応して部屋を時間貸しするなど、各社とも知恵を絞っている。
旅行消費額は60%減。オンラインツアーも登場
一方、観光庁によると、20年の日本人による国内旅行は、宿泊が前年比48.4%減の延べ1億6,070万人、日帰りが同51.8%減の1億3,271万人だった。旅行消費額も宿泊、日帰り合わせて同54.5%減の9兆9,738億円と半減した。訪日外国人は同87.1%減の411万5,828人と激減。これに日本人の海外旅行消費額を加えた総旅行消費額は約11兆円と、前年より60%以上も減った計算だ。旅行会社も店舗閉鎖や従業員削減などのリストラ策が相次いでいる。店舗減少に伴い、ネット予約やリモート接客を強化する必要がある。
一方で、近場を旅するマイクロツーリズムや、海外旅行に行けない人をターゲットとした高価格の国内旅行、オンラインツアーの実施、さらにはコロナワクチン接種証明を持つ人向けの割安プランの提供など、新サービスも次々と登場している。
国が相次いで支援策。県内限定旅行の補助も
全国で約900万人が従事する観光業の苦境を支援するため、国は相次いで支援策を打ち出している。20年12月には「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」を発表。感染防止策の徹底と同時に、観光施設を再生するための補助金の新設や融資制度を大幅に拡充した。中期的な施策として、インバウンド需要の回復を見据え、多言語化、キャッシュレスや通信環境の整備などを打ち出した。
これに続き、21年4月には都道府県をまたがない県内旅行限定の割引支援を始めた。具体的には、1人当たり最大7,000円の補助金を都道府県に交付する。県内旅行を県単位で割引対象とする自治体も出ている。
観光需要は衰えていない。GoTo トラベルも延長
コロナ禍による大打撃を受けたとはいえ、20年7月から半年間実施されたGoToトラベルの利用者が約8,800万人にのぼったように、旅行需要は衰えてはいない。国はGoToトラベル事業の延長を決めており、ワクチン接種の普及やコロナ禍収束が進むなどの後押しがあれば、国内外の旅行需要は段階的に回復していくとみられる。