教育業界の「現在」と「未来」
学習塾の売上高は約5,000億円。集団から個別指導へ
教育産業は、学習塾、予備校、通信教育、資格取得、語学教室、研修サービスなど多様だ。このうち、経済産業省の特定サービス産業動態調査によると、2020年度の学習塾の売上高は前年度比5.0%減の4,957億円、受講生は同6.6%減の延べ約1,362万人だった。補習や受験指導、または個別指導をうたう塾が増えたが、大手は双方を手掛ける。指導方法は、集団指導から個別指導への流れが続いている。ただ、少子化により受講生の奪い合いのほか、講師も減少傾向にあることが課題だ。小学校で始まる英語・プログラミング教育など、新規需要の獲得が浮沈のカギとなる。
外国語会話教室は休校など響く。英会話は学習塾と競争激化
一方、外国語会話教室の20年度売上高は、特定サービス産業動態調査によると、前年度比22.9%減の683億円、受講生は同6.7%減の延べ約488万人。コロナ禍による休校などが響いた。ただ、幼児・子ども向け需要のほか、企業の海外事業拡大に伴う社会人向けも増えていくとみられる。幼児・子ども向けには学習塾も力を入れており、受講生獲得の競争が激しくなりそうだ。
EdTechで変革進む。新サービスも相次ぐ
学習塾、外国語会話教室、通信教育など全てに共通する課題は、ICTやAIなど最先端技術の活用だ。EdTech(Education+Technology)と呼ばれ、従来のeラーニングに加え、高速回線やクラウドなどを教育でも活用し、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット端末を利用し、低コストで、どこでも教育を受けられることを指す。
すでに学習塾では授業のネット配信に加え、AIで最適化できるデジタル教材や定額制のオンライン教育サービスなども始めているほか、インターネットによる講義などに特化した大学も登場。語学教室でも、オンライン英会話や自動採点できるAI英会話アプリを提供するベンチャー企業も出てきた。
文部科学省が生徒1人に1台のデジタル端末を配布するGIGAスクール構想を進めているように、受講生のデジタル習熟度は増していく。これに合わせて、教育産業側もデジタル技術をフルに生かしたサービスが求められそうだ。
増え続ける保育需要。 政府も支援制度を推進
一方、保育園は共稼ぎ世帯の増加により需要が増えている。厚生労働省の保育所等関連状況まとめによると、2020年4月時点の保育所定員は前年同期比7万9,000人増の約297万人、待機児童は同4,333人減の約1万2,400人。政府は子ども・子育て支援制度の中で小規模保育所も認可施設にするほか、幼稚園と保育所を一体化した「子ども園」の普及を掲げている。ただ、保育士の養成・確保が課題で、処遇や待遇改善を求められている。