従業者数は全産業でトップ。生産性向上、人員不足が課題
経済産業省の工業統計によると、食料品製造業の2019年の製造品出荷額(従業員4人以上)は、前年比2.8%減の32兆2,533億円で、輸送用機械器具製造業に次ぎ2番目。20年の事業所数は2万3,648で、金属製品製造業に次いで2番目、従業者数は113万6,951人と、全産業の中で最も多い。生活必需品を製造するだけに、規模の大きさが分かる。
ただ、農林水産省は業界共通の課題として、低い労働生産性と人員不足などを指摘している。生産性については、製造業平均の約6割という。形状や品質が一定ではない原料を使用するほか、生産品目が多く多品種少量生産となりがちで、自動化も難しい。人員不足は、非正規やパートタイマーが多く、流動性が高いことも一因だ。
こうした現状を打開しようと、農水省は19年に食品製造業の労働力不足克服ビジョンを策定。ITやカメラ、センサーなどの進歩により、これまで機械化が難しかった分野の自動化をはじめ、食品機械や原料メーカーなどとの企業連携による技術開発で、生産性向上と人手不足対策を進めることを提言。人材確保では、働き方改革や女性、高齢者の活用のほか、外国人の活用も指摘している。
清涼飲料、酒類消費も減少。輸出拡大に活路
全国清涼飲料連合会によると、20年の販売額は前年比7.0%減の3兆7,978億円、生産量は同4.9%減の約2,158万キロリットルと、2年連続で減少した。茶系、ミネラルウォーター、炭酸飲料、コーヒーの4種で全体の約4分の3を占める。20年はコロナ禍により、主力の自販機販売が観光地や大型商業施設などで減少したことなどが要因。
一方、工業統計による酒類製造業の19年の出荷額は同1.9%減の3兆2,704億円だった。若年層のアルコール離れなどが要因だ。国税庁の酒レポートによると、20年の酒類の国内消費はコロナ禍により、家庭が前年比13.6%増えたが、飲食店が同52.7%減と大幅に減少。合計で同8.1%減となった。
食品、清涼飲料、酒類とも、人口減により国内市場は減少が予想されており、収益源の多角化や海外市場の開拓が必要だ。農水省は加工食品の国際競争力強化に向けた食品製造イノベーション施策を掲げ、AIやロボット、IoTなどで生産工程の自動化や遠隔モニタリングで生産性向上を支援。8年連続で過去最高を記録している農産物・食品輸出の拡大を後押ししていく考え。
内需が落ち込む酒類の輸出も拡大を続けている。20年の日本産酒の輸出は前年比7.5%増の約710億円と、9年連続で過去最高を記録した。ウイスキーや日本酒の伸びが目立っている。