知っておきたい業界概要

拡大するIT業界と求められる人材とは

私たちの生活をますます便利にするIT

デジタル世界イメージ
(画像素材:PIXTA)

私たちが普段、使っているスマートデバイス、ショッピングサイトでの買い物、SNSでのコミュニケーション。これらのサービスを支えているのが、ITです。仕事の場面では、電子メールや文書の作成、プレゼンテーションをはじめ、会計や販売管理、生産管理などの業務もITでサポートされています。また、在宅勤務や遠隔医療など、働き方を変える仕組みもITがなければ実現できません。駅の自動改札機を通ったり、ATMを利用したりなど、社会インフラもITが支えています。

このように、ITは私たちの生活にとって欠かせないものであり、ITが世の中をますます便利にしています。ITに関わる仕事に就くということは、ビジネスやライフスタイルの変革を支える役割を担うことになるのです。

IT業界は国内最大規模の業界

ICTの経済分析に関する調査グラフ
(出典)総務省「令和3年度 ICTの経済分析に関する調査」(2022)

IT業界とひと言でいっても、ソフトウエア開発やコンピューターなどのハードウエア製造、通信サービス、インターネットプロバイダーなど幅広い業種があります。
総務省の統計によれば、IT、いわゆる情報通信産業の実質国内総生産額(2020年)は104.8兆円で全産業の10.9%を占めています。これは、その他産業を除き、商業や不動産、医療・福祉などを抑えて第1位に位置付けられます。

  また、同調査によると業界に従事する雇用者数も増えており、約424万人、全産業の5.9%(2020年)が従事しています。中でも特に顕著な増加を見せているのが、情報処理サービスとインターネット関連サービスです。 これらはほんの一例にすぎませんが、日々の暮らしの中でシステムを利用しないことはありません。そんな便利なシステムも、もちろん最初からあったわけではありません。日々この業界に携わる人々が、縁の下の力持ちとして活躍しているのです。これからも、みなさんが驚くようなより便利で、より安全なシステムが登場するでしょう。そしてその開発者は、これを読んでいるあなたかもしれません。

急成長に対して人材が不足

  前述のように、いまやITは生活のあらゆるところで必要不可欠な存在です。私たちの生活にITが浸透するにつれて、IT業界の市場規模は、2013年以降右肩上がりの成長を続けており業界全体としては人材不足の状況が続いています。
] また、政府は、2021年9月にデジタル社会形成基本法の施行とデジタル庁を創設し、官民をあげて人材を確保・育成し、デジタル社会の実現に向かおうとしています。この施策では、公共サービスのデジタル化の推進はもちろん、民間分野ごとにデータ標準や基盤整備方針の策定を後押しし、日本社会のデジタル化を加速させる計画となっています。
企業においても、AIやIoT、5Gなどの新技術の活用により、ビジネスモデルを革新させるDXの取り組みを強めており、IT業界は今後さらなる成長が期待できます。

多様化する仕事

IT業界の仕事は多様化
(画像素材:PIXTA)

IT業界の市場拡大とともに、ITに関わる仕事も広がり、さまざまなスキルが求められるようになっています。ITですので、もちろん技術的な専門性が求められる仕事もありますが、営業や製造、マーケティング、カスタマーサポートなどの各種業務をITによって変革するためには、顧客の想いを捉える傾聴力などのコミュニケーションスキルが重要となってきます。
また、少子高齢化が進む中、私たちのライフスタイルをいかに改善できるか、医療・福祉や教育関係などの分野において、利用者目線でのデザインスキルも欠かせません。その意味では、大学や高専などで専門技術を熱心に学んできた理系の人のみならず、IT業界に興味のある文系の人でも活躍の場が多いと言えます。

人材不足が続く中、IT業界は即戦力を求めて中途採用の規模を増やしています。そして同時に新卒採用も年々増えています。就職を見据える学生にとって、まずはIT業界に興味を持ち志望動機が明確であること、そしてITに関して勉強やアルバイト、インターンシップへの参加など、少しでも具体的な行動に移していることが大切です。
ITに関わる仕事に就くと、常に新しいITの動向や活用事例などの勉強が求められます。新卒の場合は、一般的には即戦力となるのは難しいですが、先行投資に値する人材と評価されるように取り組む必要があるでしょう。

IT業界は5つの事業分野に分けられる

一つのITサービスを実現するには、外部からデータを取り込むセンサーや計算処理を行うコンピューターなどのハードウエア、そのデータを格納するデータベースなどのソフトウエア、データを加工する情報処理サービス、携帯電話からインターネットに接続する通信サービスなどが、相互に連携し役割を果たす必要があります。この要素ごとに事業分野があり、ここではIT業界を、「ソフトウエア業界」、「ハードウエア業界」、「情報処理サービス業界」、「通信業界」、「インターネット・WEB業界」に分けて説明していきます。

著者プロフィール

克元 亮(かつもと りょう)

SEやITアーキテクト、ITコンサルタントとして、約30年にわたりシステム開発やITソリューションの導入などに携わる。現在は、ソリューションの事業開発に従事。SEのキャリア形成やスキルアップをテーマに、書籍や雑誌、ウェブ記事を執筆。これまでに企画・執筆した書籍は24冊、累計発行部数は20万部を超える。

著書は、『「しきる」技術 誰にでもできる超実践リーダーシップ』『SEの勉強法』(いずれも日本実業出版社)、『SEの文章術【第二版】』『SEのプレゼン術』(技術評論社)、『個人情報保護士試験公式テキスト』(いずれもJMAM、共著)他多数。経済産業省 情報処理技術者(システムアナリスト、プロジェクトマネージャ、システム監査技術者ほか)などの資格を保有。

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