IT業界のキャリアパス

組込みスキル標準による組込みソフトウエアへの対応

ETSSとは

皆さんの周りを見回していただければわかると思いますが、世の中には、携帯電話や家電、デジタルカメラ、AV機器、自動車、エレベーターなど、インテリジェントな製品(状況に応じた制御を自動で行える製品)がたくさんあります。
組込みソフトウエアとは、特定の用途に特化した機器(ハードウエア)を制御して必要な機能を実現するプログラムの総称です。例えば、携帯電話のバッテリーが劣化しないように長時間充電する機能やデジタルカメラで画像を自動補正する機能、自動車が歩行者を検知し衝突を避けて自動運転する機能などです。

組込みソフトウエアが動作する組込み機器は生活のあらゆる場面で使われており、組込みソフトウエアは情報化社会にとって欠かせない要素となっています。特に、家電製品や自動運転などの領域で使われるため、高い安全性や信頼性が求められるという特徴があります。また、使用する技術が幅広いため、技術者に要求されるスキルも多岐にわたります。こういった背景から、国内の産業向けにスキルを体系化する必要に迫られ、情報処理推進機構が2008年に、「組込みスキル標準、Embedded Technology Skill Standards」、略称「ETSS」を策定しました。ETSSは、スキル基準、キャリア基準などから構成されています。

スキル基準

技術要素、開発技術、管理技術の3つに分けて、階層的にスキルを定義します。例えば、技術要素では、通信やマルチメディアなどがあります。これらのスキル項目に対して、レベル1から4までの4段階のレベル(初級、中級、上級、最上級)で診断し、現状スキルを分析できます。

     

キャリア基準

組込みシステム開発に関わる職種をプロダクトエンジニアやテストエンジニアなど10種類に分類しています。それぞれの職種ごとに、プロダクトの開発事業レベルなのか、システムの検証レベルなのか、といった責任の度合いによって7段階に分けています。

組込みシステム開発に関わる職種10種

スキル基準を読むとわかりますが、組込みソフトウエアの仕事に関わる上では、ソフトウエアだけではなく、ハードウエア寄りの知識が要求されます。例えば、プロセッサやモーターなどのアクチュエーター(電気信号を物理的運動に変換する装置)、ハードディスク、各種センサーなどが代表的ですが、動画処理技術や通信技術についても精通しておく必要があります。

実際の業務では、製品が提供する機能の実現について、ハードウエアの担当者と相談しながら、組込みソフトウエアの設計をしていくわけですが、その際、ハードウエアの回路図面を理解できなければ業務を進めることができません。よって、ハードウエアに関する知識が必要となります。

ETSSは、組込みソフトウエアに関わるとき、どんなスキルを身に付けておくべきなのかを理解するのに役立ちます。

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