教えて!
「仕事」と「スポーツ」の
関係

プロにはなれなかった現実との向き合い方
同世代のヒーローインタビューはしたくなかった
結果的にテレビ局のアナウンサーとして、社会人生活をスタートしたものの、大学時代に野球で競っていた同世代の人たちがプロの世界で活躍しているのを見て、もやもやする日々を過ごしていました。
まさに黄金世代といえる学年でしたから、多くの仲間が大学卒業後も野球に関わる形で活躍していました。一方で、自分は会社員として、1年目は研修や、ときどきCMの提供読み、深夜番組のナレーションと地味な仕事を行う日々でした。
なかなか活躍の場が与えられない思いもあって、自分はこの仕事は向いていないのかと悩む日々を過ごしていたことを今でも思い出します。プロ野球選手になれていたら…と思うことも何度もありました。だからこそ、できれば同世代のヒーローインタビューはしたくないと、正直、思っていましたね。

アフリカ取材の体験が人生観を変えた
そんなもやもやした感情を抱えていた頃に、アフリカ取材に出掛けることが決まりました。そこではダイヤモンドを採掘しながら生計を立てる子どもや少年兵の取材をしたのです。
スーツを着て革靴を履いている人は日本では珍しくありませんが、当時、アフリカで出会った少年にとっては、それが裕福であることの象徴。世界に通用するために英語を教えてほしいとせがまれました。
彼らにとってはボールペンですら珍しいもの。僕は持っていたボールペンをあげ、数字と曜日を表す英語を教えてあげました。「壊さずに大切にするのだよ」と伝えて別れた翌日、なんとボールペンをあげた少年が「ボールペンが壊れた」と言ってきたのです。
子どもですし「まぁ、物珍しくていじっているうちに壊してしまったのだろう」と、とっさに考えをめぐらせましたが、よくよく話を聞くと、その少年は僕が教えた数字と曜日を一晩中ひたすら書きつづって必死で覚えようとしていたため、ボールペンのインクを使い切ってしまったのだと分かりました。

まだまだ貧困がなくならず、教育もままならないアフリカで、僕はこの光景を見て「こうして何かに、ひたむきになれることが人として本当の幸せなのではないか」と思い知らされました。
感謝の気持ちと引き換えに、スーツケースが空っぽになりそうなほど、手放せるものは全て彼らに譲って現地をたちました。生きること、学ぶことに必死な彼らを見て、「自分は恵まれた環境の中で、何てちっぽけな嫉妬に思い悩んでいるのだ」と痛感するとともに、「伝えるべきことはスポーツだけじゃない」と気持ちを新たにしました。
「とくダネ!」での出会い
このアフリカでの取材が「とくダネ!」(フジテレビ)という情報番組で取り上げられることになり、この番組で先輩アナウンサーの小倉智昭さんと出会いました。

アフリカでの体験とこの言葉が、ようやく、プロ野球選手になれずにアナウンサーになったという無念さを拭い去ってくれました。
スポーツでの経験・考え方を応用しよう
人は得てして「自分には何もない…」と考えてしまいがちです。ところが、他人から見ればその人しか経験したことがないことや考え方など、人とは違う一面を持っているもの。自分がこれまで培ってきたスポーツでの経験や考え方も、これからの社会人人生のどこかで必ず役に立ちます。これまでの自分をよく振り返り、また、周囲の人の意見も参考にしながら、自分の深堀りをしていきましょう。
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お願い!他己分析野球で培ったマインドセット
今、思い返しても、大学時代の部活動はフィジカルも当然ながら、メンタル的にも本当に苦しいものでした。150人いる部員の中でレギュラーになる過程では、「どうやってレギュラーになるのか」「何が自分の武器で、何を改善したらいいのか」「レギュラーの座はどう維持するのか」といったことを常に考え、自分と向き合って、人が見ていないところでも鍛錬する毎日でした。
こうしたマインドセットは社会人になった後も、とても有効に働きました。そうした思いにたどり着いたのも、やはり小倉さんの存在が大きかったです。当時はアナウンサーに向いていないかもしれないと弱気になることもありましたが、「野球とテレビ番組は同じ」という言葉に励まされながら、野球と同じようにとにかく練習しました。
寝る前に文章を音読したり、車に乗ったら目に入るものを実況したり…。どう練習すればどこにたどり着くか分析しながらひたすら練習をしたことで、「とくダネ!」のレギュラーになり、その後「すぽると!」(フジテレビ)というスポーツニュース番組の司会にも就けました。
マインドセットのポイント
負の感情を出し切る
「自分には向いていない」「他の人の方が優秀なのでは」といったネガティブな感情を紙に書くなどしていったん出し切ることで、その後客観的な視点で考えられる。
改善点を探る
自分に向いていない、能力不足だと思うのはどんな点か、何につまずいているか、どこを改善すべきかをできるだけ具体的にひもといていく。
行動に移す
改善点を克服することで、どんな自分にたどり着けるのかをイメージして行動に移し、トライ&エラーを繰り返して方法を探る。