教えて!
「仕事」と「スポーツ」の
関係

失敗や挫折に執着せず視点を変えて
自分の可能性を探そう
6歳でスイミングクラブに通い始め、9歳でアーティスティックスイミング(当時の名称はシンクロナイズドスイミング)に転向。東京アーティスティックスイミングクラブ(当時は東京シンクロクラブ)に所属し、高校時代には国民体育大会(国体)で優勝、日本大学卒業後はミキハウスに就職。2008年の北京五輪で先輩たちの演技を観戦し、五輪出場を明確な目標としてトップレベルでの演技を磨き続けた荒井さん。五輪出場メンバーから落選する挫折をどう乗り越え、気持ちをどう切り替えたのでしょうか。また、メイクアップアーティストと水中パフォーマーという次なる夢をどのように見つけ、新たな人間関係を築いていったのかについても伺いました。


荒井 美帆さん
Miho Arai
アーティスティックスイミング/元アーティスティックスイミング選手
夢から現実になった五輪出場
小学生のころ、テレビでソウル五輪・銅メダリストの小谷実可子さんが野生のイルカと一緒に泳いでいるのを見たのがきっかけでアーティスティックスイミング(以下:AS)に憧れ、興味を持ちました。6歳から通っていたスイミングクラブにもASコースがあり、小学校3年生からASの練習を始めました。
憧れの対象が目標に変わったのは、2008年の北京五輪に出場した先輩の活躍を現地で観戦したときです。あの会場の雰囲気、観客の応援はどの大会とも違う熱を帯びていて、それに突き動かされるように、自分の中でも「ここで演技したい」という思いが膨らみました。また、近くに座っていた先輩のお母さんから「次は美帆ちゃんの番ね」という言葉をかけてもらい、五輪出場を現実のものとして自覚するようになりました。

日本代表に召集されて夢に大きく近づく
高校時代は国体で優勝。日本大学に進学後も水泳部の所属選手として、そのままクラブチームで活動を続けました。大学2年生で日本代表に選ばれ、卒業後はミキハウスへと就職しました。
大学の4年生に進級する頃となり、周囲の学生が就職活動を進める中で、私はクラブチームを通じて話が進み、皆が行うような就職活動は経験せずにミキハウスへの採用が決まりました。ASの日本代表は合宿が多かったため、採用後もミキハウスでは会社の業務には携わらずに、一日中、トレーニングに専念でき、とても恵まれた環境で選手活動をしていたと思います。
日本代表にも選ばれたことで、五輪出場への夢へと少し近づいたような気がしました。しかし、日本代表に選出はされましたが、五輪出場が確定しているわけではありません。そこからはさらなる過酷な争い…つまり五輪出場を目指して、日本代表の選考会で選ばれるための必死の努力が続きました。

運命のロンドン五輪の選考に落胆
五輪の出場メンバーは補欠も含めて9人。つまり選考会では9位に入らなくてはいけないのですが、私は10位という結果に終わりました。9位までに入れば、本大会までの間にメンバーの入れ変えの可能性はあるけれど、10位はあくまでもサポートメンバーとしての人選となり、出場の希望はほとんどないのです。
それにもかかわらず五輪の世界予選まではチームの帯同が義務付けられます。選考から漏れて失意のどん底に沈み、1回目の合宿では、チームメンバーとの温度差を感じながらも、どう取り組んでいいのか悩む日が続きました。
ほかの学生の悩みや他者からのアドバイスも参考になる
就職活動中は、今自分がどの段階にいるのか、やっている方法は正しいのかなど、答えが見つからなくて悩みがち。でも、悩んでいるのは決してあなただけではありません。ほかの学生が持つ悩みも参考に、自分ならではの解決方法を探ってみましょう。
ほかの就活生の悩みと考え方がわかるコンテンツはこちら!
体育会系学生の就活Q&A現実を受け止めて自分の可能性を探る

自分の立ち位置に悩みながらも「このままではいけない」という思いも同時に抱えていたため、まずは「自分がどうありたいのか」ということを考えるようにしました。チームのフォーメーション練習から外れ、外から演技を眺めながら自分一人で練習していると「こうしたらもっと高さが出るのでは?」というように、チームを客観的に見られるようになり、それを自分の演技にも取り入れ始めました。
すると、自分自身に対しても以前と見方が変わりました。たとえチームのメンバーから外れたとしても、ASが好きなことは変わらないので、自分が競技を辞めるという選択肢はなく、この先も競技を続けるために、今、自分の演技をどのように磨いていくのかという視点に変わっていったのです。
さらにお世話になっていたトレーナーさんから「五輪だけを目標にするのではなく、やり切ったと思えるところまでやったら?」という言葉をかけていただき、これが失意のどん底にいた私にとって大きな救いとなってくれました。
五輪が全てと思い、いつのまにか視野が狭くなっていたのです。しかし、ASの競技を続ける上では、それだけが正解じゃないのだと気付き、自分の今後の演技の向上というモチベーションで練習に取り組めるようになったのはとても大きな変化だったと思います。
私が五輪の選考から落ちたことにこだわっていたように、大きな失敗を経験すると、その点だけに目を向けてしまい、自分の可能性や物事の本質的な目標を見失ってしまうことがあります。これは就職活動でも仕事でもどんなことでも同じだと思います。
-
1
自分がどうありたいかを考える
うまく行かない結果だけに気をとられず、自分は何がしたいのか、どうありたいのかといった自分の思い描く理想を今一度考えてみよう。今何をすべきかが見えてきて気持ちに変化が表れる。
-
2
信頼できる人に相談する
自分一人でもんもんと考えず、信頼できる人や同じような経験をした人、多くの人から慕われている人などに相談する。人の意見を聞くことで視野が広がり、自分の思いを言葉にすることで気持ちを整理することができる。
-
3
目標を立てた意味を振り返る
自分が立てた目標を今一度見直してみる。行き詰まると目標が遠く感じ、うまく行かないことに目が行きがちになるが、その目標を立てた意味を振り返ることで目標への道筋が見えてくる。
就活で行き詰まったときに気持ちを切り替えるアイデア
気持ちを切り替えてネガティブな思考から脱却しよう
行き詰まったときは、ついマイナスなことばかりに目が行きがち。そもそも就職活動は、自分の将来の生活を楽しくするためのもの。ポジティブな気持ちで就職活動に望む姿勢はとても大事なので、自分の理想に立ち戻ったり、客観的な意見を取り入れたりして自分自身の思いを俯瞰(ふかん)して見てみよう。
- (1/4)
- 次のページ