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教えて! 「仕事」と「スポーツ」の関係 教えて!
「仕事」と「スポーツ」の
関係

うまくいかないときどう切り抜けてきたか

子どもの頃のように「なんで?」を忘れない

30年の選手生活のうち半分が日本代表で、世界選手権で6回も優勝したとはいえ、僕にも苦しい時期は何度もありました。2021年の東京五輪を終えて、世界選手権を控えていた時期、練習がうまく積めない時期がありました。あん馬の落下が続いた時期もそうです。

失敗とかうまくいかないことが続くと、どうしてもうまくいかない現実だけに目を向けがちです。そして「自分なんて…」と思ってしまうことがあります。こういうときはぜひ子どもに戻ってほしいと思います。そこで大切なのは子どものように「なんで?」という探求心を持つことです。僕自身もそうしていました。

「あの人はなんでその技ができるの?」「どうしたらできるの?」という思いで問題点を掘り下げていくことで、失敗の原因にたどり着くことができ、負の連鎖を断ち切ることができます。

問いかけで掘り下げる例

「なぜ?」を繰り返して自分を掘り下げ、自己分析してみよう

  • なぜ陸上に打ち込んできたのか?
    陸上が好きだから
  • なぜ陸上が好きなのか?
    大会の緊張感が好きで、勝ったときの達成感がすごいから
  • なぜ大会で勝つことにこだわってきたのか?
    負けず嫌いな性格だから
  • なぜ負けず嫌いな性格なのか?
    目に見える結果があると安心するから、完璧主義だから
内村さん 写真

日常の何気ない言動にこそ自分らしさが隠れている

うまくいかなくなったときは、「なんで?」を求めるのと同時に、自分をいかに客観的に観察できるのかが大切です。

体操は癖づいた体の動きを調整しながら技を磨く競技です。僕の場合は、「自分はスマホを右手で持つんだ」とか「いつも右足から靴を履くんだ」ということすらヒントにしていました。右足から靴を履くとき、どんな心理状態なのかなんてことも調べていました(笑)。

こうした自分の特徴を知る作業は、日々の生活の中で自分を観察し、見つけ出す地味なところから始まります。自分の長所や短所がわからないという人は、ぜひ日常の中から自分を探してほしいと思います。「こういうことされると嬉しいんだ」とか「こういうことが得意なんだ」とかね。就活が始まったからといって、いきなり自分の長所や短所だけを探そうとしても無理があるんです。

僕は内容があいまいなときに「~な感じですね」と言葉を濁してしまうような口癖があります。でも、断定した言い方ができない人は相手からも信用されないと思うのです。ですから、普段、話しているときも口癖に気をつけようとか、この言い方は相手に不快だからやめようとか、考えながら過ごしています。

自分を客観視するトレーニング

日常の何気ない行動を振り返ってみよう

  • 最近嬉しかったことは?
    先輩に「動きが良くなった」と褒められた
  • 最近、悲しかったことは?
    ゼミ合宿があり、部活に参加できなかった
  • つい言ってしまう口癖は?
    「えっと」、「あー」
  • 焦ったときについとってしまう行動は?
    目上の人が相手でも、敬語ではなく、タメ口になってしまう

うまくいっている人のまねをする

何を行うにも情報収集が大事です。自分の講演会の内容などを見直すうえでも、成功している人の動画がとても参考になりました。実は、僕はローランドさんの動画を参考にしていたのですが、彼の話は自分の経験に基づいた説得力のある内容で、つかみがあって、最後に落ちが必ずあったんです。それと比較して、自分が行った模擬講演はこれまでの自分の実績などの説明にとどまっていることに気づきました。そのほかにも、何度も講演をされている柔道の野村忠宏さんにもいろいろとアドバイスを頂きました。

このように自分の講演内容を改善していく過程もやはり体操と似ているんです。実は、体操は技をレベルアップしていく上で、コーチからこうしなさいという直接的な指導があるわけではありません。実際には評価の高い選手の動画を何回も見てまねしたり、成功している選手にどういう感覚で演技をしているのかを聞いたりして、技の精度を上げる作業を繰り返しています。そうすることでどんどんブラッシュアップされ、やがて自分の技になります。

跳馬の大技「リ・シャオペン」は技を編み出した中国人の体操選手の名前がついているのですが、この技も彼の動画を何度も見て、「こうかな」「こっちかな」とトライ&エラーを繰り返して完成させました。彼と全く同じ感覚かどうかはわかりませんが、できあがった“内村航平の「リ・シャオペン」”は僕の代名詞とも言える技になりました。

成功している人のまねをする、話を聞くことはとても大切なことです。自分にないものの発見につながります。

3回連続で成功できなければアプローチを変えることも大切

体育会系の学生は諦めない気持ちが強いと言いましたが、一方でどこまで同じやり方にこだわるかという見極めもできなければなりません。

例えば、新しい技を取り入れる際に、僕はいつも3回連続で成功できるかどうかを習得の判断基準としていました。3回同じやり方でやってみて、そのうち1回でも失敗すれば、コツがつかみきれていない、体の使い方が間違っているなど、何らかの理由があるので、アプローチを変えようと決めていたのです。

なぜなら、3回のうち1回はまぐれでできてしまうこともありますし、2回成功したとしてもまだ少し体に感覚が残った程度だからです。3回連続で成功するレベルになって、ようやく技のコツがつかめている状態で、アプローチの方法も間違っていないと実感できるのです。

失敗が続いているのに、回を重ねて時間を費やせばできるはず…と同じやり方に固執しすぎると、時間だけがすぎてしまうのでもったいないですよね。うまく行かないときは、早めに見極めて頭をきりかえれば、その分の時間をほかのことに使えるというメリットに気づくことも大切なのです。

東京五輪ではオールラウンダーとなる総合種目への思いを抱きつつも、勝つためには6種目に時間を割くのを止める決意をし、得意な鉄棒に絞りました。こうして考え方を変えたことで、6種目のレベルアップに費やすはずの時間をすべて鉄棒に傾けて、技の精度を大幅に上げることができたんだと思います。そのおかげで国内の代表選考会では高得点を出すことができ、代表選手として本番を迎えられました。



うまくいかないときの脱却法

  • 1

    疑問を持つことを忘れない

  • 2

    うまくいっている人をまねる

  • 3

    日常の行動や感情に目を向ける

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