教えて!
「仕事」と「スポーツ」の
関係
失敗や不安に襲われたときの対処法
なりたい自分を具体的にイメージして言葉にする
高校を卒業したらプロ選手になって、五輪にもW杯にも出て、海外移籍も経験するという僕のサッカー人生は、小学生の頃から思い描いていたものでした。
小学校卒業のときに、授業で作った木彫りのオルゴールのふたには「国見高校へ行き、プロになり海外移籍、日本代表、W杯出場」という具体的な目標とプランを彫っていました。
今では、自分の子どもたちに「自分がどうなりたいかを紙に書け」とよく言うのですが、これは学生の皆さんにもおすすめです。例えばサッカーなら「○歳でプロになる」というように、できるだけ具体的な言葉にして書き出すのがいいと思います。
社会人なら「出世したい」「お金持ちになりたい」といった抽象的なことでなく、何年後、どこで何をしていたいかを具体的に言葉にしてみることです。
そうすることで、その目標達成までにはどれくらい時間があって、達成のためにはこうしたプランが必要だというのが見えてきて、今、自分が何をしなくてはならないかという現実がはっきりしてきます。
社会人になってからの目標が見つからないときは
-
STEP 1
自分が働く姿を想像してみる
自分が働いている姿を何となく想像してみましょう。具体的な職業でなくてもOK。机に向かうよりお客さんに話しかけていそう、1人ではなく少人数のチームで仕事をしていそうなど、浮かんできたポイントを書き出してみると、自分のなりたい姿が少しずつ見えてきます。
-
STEP 2
何をすれば自分が満たされるか考えてみる
身近な人が喜んでくれたとき、趣味に励んでいるとき、バイトの給料日など、自分が満たされるタイミングについて考えてみましょう。次にその出来事で満たされる理由を書き出します。人の笑顔が見たい、自分の得意な・好きなことをしたい、経済的に豊かになりたいなど、自分のモチベーションがはっきりすれば、働く目的を見つけるヒントになります。
-
STEP 3
企業情報から考える
マイナビのWEBサイトや合同説明会、インターンシップ&キャリアなどで、できるだけ多くの企業を知り、情報を比べてみましょう。先輩社員さんの雰囲気、オフィスの立地、社内制度など、気になった点を書き出してみると、自分がこだわりたいポイントが浮かび上がってきます。
失敗した自分を責めずに、相手を褒める
小学生時代の夢がかなったとはいえ、僕自身もすべてが思い通りにいったわけではありません。プロになってすぐに大けがをし、1年以上試合に出られない時期もありました。左足の靱帯を損傷し、その後遺症で左足の動きが悪くなって、ボールのコントロールがうまくいきませんでした。
サッカーの試合でなくても、うまくいかないときは誰でも自分を責めがちですよね。せっかくいいパスをもらったのにシュートを外してしまったときは、決め切れない自分を責め、焦る感情に拍車がかかって、どんどんうまくいかないループにはまるということがよく起きます。
僕は選手生活を続けるうちに、その対処法を見つけました。
そんなときは考えすぎるとメンタルがやられてしまうので、シュートを止められても「今日はそういう日なんだ」と自分の調子の悪さや、力の無さを嘆かないようにし、逆に「これを止めたキーパーはすごいな」と相手を称賛するようにするのです。
一つ失敗しても自分の積み重ねてきたものがなくなるわけではないので、気持ちを切り替えて練習を重ね、自分に自信と余裕を持って次の試合に臨めるようにしました。
失敗も視点を変えれば、自分を鍛えるきっかけとなる!
失敗しても引きずらずに自分の考えを切り替える習慣がつけば、メンタルの強さや冷静さも高められます。自分に自信や余裕が生まれるだけでなく、とっさに善後策を思いつく対応力も身に付いて、将来の仕事に役立ちます。ぜひ意識して身に付けてみましょう。
正解を求めすぎないようにしよう
どのポジションもこなすオールラウンダーであることが、僕の強みだと評価してくれる人もいましたが、実際には、複数のポジションをこなすのはあまり得意ではないと思っています。本来のポジションとは違う役割を与えられ、どう動いたらいいのか分からなくて困惑したこともありました。でもそのとき、どうすればチームにとって一番いいのかをいろいろ考えた結果、「サッカーには正解がないんだ」という結論に至りました。
自分が動きたいように動いて、僕の特徴を理解してもらうと、チームメートもそれに合わせて動いてくれるということに気づいてからは「このポジションはこうでなければいけない」というように、正解を求め過ぎないようになりました。正解から外れることを恐れてプレーしなくなったことで、かえってオリジナリティーを出すことができたように思います。
サッカーのプレーにしても、皆さんが行う就職活動にしても、こうするといいという理想やテンプレートはあるけれど、それはあくまでも一例であってたった一つの正解ではないように思います。正解を求めすぎず、挑戦を恐れず、思うがままにプレーすることで、チームのコミュニケーションは深まったし、自分のプレースタイルにも磨きがかかったと思います。
チャレンジしてみればどうにかなる
みんな何かしらの不安はあるし、僕にもあります。でもそれをどう捉えるかだと思います。言葉が通じない海外に行ったときも、2021年にセレッソ大阪に移籍が決まって単身赴任ではなく小学生の三男と2人で(笑)、大阪で暮らした日々も不安はありました。ただ、不安だからとか、失敗するからチャレンジしないというのはもったいないですね。今持っているものを生かしてチャレンジすればいいのです。
三男と二人暮らしをするときも、僕は元々、家事なんて得意じゃなかったけど、子どもにはちゃんとした生活をさせなきゃいけない、と思うと料理も家事も何とでもなりました。最初は不安だったけど、二人だけの暮らしは僕にとっても、三男にとっても結果的にとてもいい経験になったと思います。
スペインでの生活もそうです。チームメートは僕のことなんか知らないし、どれだけプレーが通用するかも分からない。でも誰にも取られないドリブルや、自分が得意とするコースに必ずシュートを打つ技術など、身に付けてきたものが、自分の知らないプレーや戦術が存在する環境でどれだけ通用するか試してみたかったのです。そこで挑戦するからこそ、失敗しても自分に今足りないものを知ることができると思いました。こうして自分のプレースタイルや戦術の引き出しがどんどん増えるのが僕にとってのチャレンジの意味です。とにかくチャレンジして、失敗を繰り返して原因を考え学んで実践する、そうすれば人間なんとかなるものですよ。
今までスポーツに時間と労力を割いてきた体育会系の学生さんにとっても、就職活動を経て社会に出ることはチャレンジの一つでもあると思うけど、やってみればなんとかなる! と思ってぜひたくさんチャレンジしてもらいたいです。