教えて!
「仕事」と「スポーツ」の
関係

体育会系学生の強みとは
臨機応変に頑張れる対応力
シドニー五輪の次の大会となるアテネ五輪の代表から漏れた2004年。この年はレースに1つも出られない1年でした。選手としてはあまり良くない1年でしたが、一人の人間として振り返るととても良い1年だったのです。
アテネ五輪に出られなかった後、次の目標や厳しい練習に全力を注ぐためのモチベーションを保つのが困難でした。活躍できないと「記者や報道関係、応援のみなさんも去っていくよ」と聞いていたので、自分の中で覚悟していたんです。しかし、ファンの方や報道関係の方々から「また元気に走るのを楽しみにしているよ」と温かい言葉や手紙をたくさんいただきました。陸上選手としては走れない1年で最悪でしたが、嬉し涙を流したのはそれまでで一番多い年でした。人としては温かい一年だったと忘れられません。
次の目標は、速い、強いを証明するのではなく「応援してくれる人たちに恩返ししたい」「同じように失敗して苦しんでいる人たちに諦めなければ夢はかなうと伝えたい」との新たな思いを据えることになりました。
スポーツを長く続けていると、目標を見失うほどの苦しい壁にきっと誰もがぶつかるでしょう。そんなときに、少し視点を変えて新たに目標を作れる対応力も体育会系の人は持ち合わせていると思います。新たに目標を持つことが頑張るモチベーションのキープへとつながるはずです。
対応力がカギとなる
就職活動を行う中では、スケジュールの調整や準備が思い通りに進まないこともあるでしょう。また選考時の面接では想定していない質問をされることがあるかもしれません。そこで生きるのがスポーツに取り組んできた人の対応力です。長くスポーツを続けてきた人はどんな状況に陥ったとしても、状況を判断して前向きかつ臨機応変に対応する習慣が身についている場合が多いです。ぜひ、その長所を就活準備でも発揮しましょう。
自分を表現することの重要性を知っている
どうしたら注目される選手になれるのか、どうしたらチーム内で必要とされる選手になるのか、といった自分の存在意義を、競技を通して自然に考える習慣を身につけているのも、体育会系の人たちの特徴です。
自分自身の強みや弱みはどんなことなのか理解し、そのうえで自分の強みを表現することにも長けているでしょう。こうした自己表現は、スポーツの現場のみならず、社会に出ても大切なことです。自分の強みを表現してチームに伝えられれば、それだけチームに、会社に、社会に貢献できることにつながります。
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STEP 1
長所と短所を明確にする
【長所の見つけ方】
過去の実績や経験から探る
自分史を作ってひも解いてみる
【短所の見つけ方】
苦手なことや欠点を見つめ直す
長所・短所ともに客観視している周囲の人に聞いてみる
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STEP 2
伝え方のポイントは?
【長所と短所の伝え方のポイント】
長所を発揮した具体的なエピソードを作る
短所は長所に言い換える
短所を克服・改善した具体的なエピソードを作る
長所と短所で自分を表現するコツ
長所と短所を診断するためのコンテンツはこちら!
長所短所診断スポーツがコミュニケーションツールになる
学生のみなさんが、仮に社会人になるタイミングでスポーツから離れたとしても、スポーツの経験はさまざまな人との共通言語になります。
例えば、違う部署、違う企業の人だとしてもコミュニケーションを取る機会に、スポーツの話題で距離はぐっと縮まったり、人間関係が円滑になるといったことがよくあります。
ちょっとしたことでも相談したり、意見を聞いたりすることができれば、自分一人で考えたり、悩むよりも、広い視野で仕事を捉えることができます。スポーツに取り組んできた体育会系のみなさんは、人と人をつなぐとても良いコミュニケーションのツールをすでに手に入れているわけですから、ぜひそれを上手に活用していってもらえればと思います。

高橋尚子(たかはし なおこ)
1972年生まれ、岐阜県岐阜市出身。中学生から陸上を始め、県立岐阜商業高校時代は800mで岐阜県1位。大阪学院大学時代は日本学生種目別選手権の1500mで優勝して全国で初タイトル獲得。卒業後は実業団へ。2000年にはシドニー五輪で、日本女子陸上界としては初の金メダルを獲得。同年には国民栄誉賞も受賞。2005年には小出義雄氏の下を離れチームQを結成。2008年に引退。現在は公益財団法人日本陸上競技連盟常務理事、公益財団法人日本オリンピック委員会理事、一般社団法人パラスポーツ推進ネットワーク理事長、マラソン解説者、スポーツキャスター、「高橋尚子のスマイル アフリカ プロジェクト」や環境活動、企業の社外取締役など多方面で活躍。

今回の教訓
「自分にはどんな素質があるのかわからない」という人は、高橋さんのように自分の役割や、やるべきことを考えながら、将来の目標を立ててみよう
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1
目標を立てる理由を考える
なりたい自分に対して、漠然としたイメージを持つだけでなく、なぜそうなりたいのかの理由を明確にすることで、その目標に向かって頑張るモチベーションをキープできる
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2
臨機応変に対応しよう
困難な状況に陥ったとき、目標を見失って苦しいときなど、ものの見方を変えることで臨機応変に対応できる
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3
自分の立ち位置を知ることで自分らしさを掘り起こす
今いる環境の中で自分を俯瞰してみて、自分の立ち位置を把握する。それが自分らしさにつながる
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