教えて!
「仕事」と「スポーツ」の
関係

柔道とオフィスワークのギャップ
仕事とスポーツでは、集中力の使い方が全く違う
新事業であるアイスクリームの店舗がオープンするまでは、販売する商品の開発や試作のほか、電話対応やPCを使った入力作業などが主な業務でした。
こうしたオフィスワークと柔道で大きく違うのは、集中力の使い方でした。
アマチュア選手の場合、所属する企業との契約や実業団の規則によって、競技と仕事への関わり方が違います。私の場合は、先述した通り所属会社での業務には直接、関わる必要がなく、自分のエネルギーをすべて柔道に注ぐことができました。
柔道の練習は長くても3時間、その中で集中力を高めるのは2時間程度、試合ともなれば5分間。その短い時間に最大限のパフォーマンスを発揮できるように習慣づけた生活を送っていました。

アイスクリームの試作中に、同僚から「薫さん、へらが焦げていますよ」なんて言われたこともあります。
オフィスワークでは就業時間の8時間で集中力を使い切る、そのための配分が大切だということを知りましたね。これは私にとっては、かなり衝撃的でした(笑)。
知っておきたい
就活情報
先輩がどんな風に働いているかを調べてみよう
自分が働くイメージができないというときは、社会人の先輩たちがどのように働いているかを調べてみるといい。マイナビ2026の「先輩発見」&「訪問予約」機能を活用すれば、実際に働いている先輩の入社した動機や仕事内容、やりがいを知ることがきるので、就活を進めるうえで参考になる。
先輩の働き方を知るのに役立つコンテンツはこちら!
OB・OG訪問畳の上では黒帯でも、社会に出たら白帯であることを意識
常に畳の上にいた自分にとっては、PCの前で仕事をする、電話対応をする、1日中アイスクリームを作るといったことが、どれも初めての体験で、とにかく分からないことばかりでした。
柔道では黒帯、金メダリストでしたが、引退後は常に初心者で白帯の気持ちでいます。ですからどんなに小さいことでも周りに聞いたり、相談したりすることを心掛けながら仕事を進めています。
分からないことは多いですが、それが積極的に勉強するモチベーションにもなっていて、現在はアイスクリームだけでなく、お菓子作りにも取り組み始めています。
「分からない」をそのままにしない
採用選考の面接では、企業や業界の情報だけでなく、時事に関する質問をされる場合がある。業界・企業研究を行うのはもちろん、ニュースを積極的に見たり、知らないことや分からないことがあればすぐに調べる癖をつけたりするといい。分からないことを質問されたときでも「分かりません」だけで済ませるのではなく、関連した情報を糸口に会話を広げていける下地をつくっていこう。

相手の背景まで想像する
目新しい業務に取り組んで戸惑いを感じる一方で、柔道の経験が仕事に生きていると思えることがたくさんありました。
その1つが観察力です。柔道は相手の弱点やスキを突く競技です。動作や気持ちの揺らぎといった変化に鋭く気付かなければいけません。ですから勝つためには、試合中も試合を離れても常に対戦相手の様子を観察することが必要でした。
仕事では柔道で培った観察力が、仕事仲間やお客さんに対して発揮されました。例えば長時間、アイスクリームを買うために並んでいるお客さんは、その時間分のストレスを感じています。ですから「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」という声掛けだけでは、「また来たいな」とは思ってもらえません。
でも、そのお客さんの状態に気付き「暑いのにすみません」などと一言、寄り添う気持ちを伝えられるだけで印象は大きく変わります。
また、仕事の関係者と考え方が違ってモヤモヤする場合などは、相手なりの考えや背景があることを想像するようにしました。その上で相手に自分の考えを伝えて、自分をコントロールしています。ここにも柔道で培った観察力と感情をコントロールする力が生きていると思います。
面接での「質問の意図」を理解する
-
質問「学生時代に打ち込んだことは何?」実際に取り組んだ物事の内容よりも、どんな考えや態度で取り組むのかを知りたい。
-
質問「この業界を志望する理由は何?」志望理由を基に、入社後の具体的な展望、熱意や意欲を知りたい。
-
質問「卒論のテーマは何?」興味があること、それをどのように追求し、どう仕事に生かすのかを知りたい。
-
質問「あなたにとって一番大変だったことは何?」試練とどう向き合い、具体的にどんな対処法を見出して乗り越えたのかを知りたい。
好きなことを仕事にしなくてもいい
就職活動においては、書類選考や面接などで、その会社を志望する理由が必要になると思います。最初に思いつくのは商品やサービス、またはその会社で行う業務内容を「好き」だと感じることではないでしょうか。
でも、私は自分が仕事を選ぶ際に、必ずしも「好き」である必要はないと思うんです。
きっかけはどんなことであっても、その仕事に就いて業務を続けていくうちにいろんな感情が湧いてきて、最初にはなかった気付きが生まれます。
実は、私は元々柔道がさほど好きではありませんでした。
兄と姉が先に柔道を始めていて、親の勧めで私も習い始めました。すぐに辞めなかったのは、先生が怖かったからというのが正直なところです。でも続けるうちに「負けて悔しい」「もっと技をうまく掛けられたら…」という気持ちが芽生えてきて、「好き」ではなかった柔道にも、いつしか一生懸命、取り組めるようになっていきました。
仕事もそれと同じだと思います。「好き」から始めなくても、「目標」や「夢」がなくてもいいと思います。やっていくうちに未来が見えるようになるということが、世の中にはたくさんありますからね。