まちづくり関連企業特集

 まちづくり関連業界の現在の状況や、注目を集める分野について、今後の業界の動向も踏まえて知っておきましょう。

【第2回】「まちをつくる」デベロッパーの仕事

まちづくりを進めるプロジェクト

まちをつくるプロジェクト

 前回は、「不動産業界はさまざまだ」と書いた。今回はまず、その中の「分譲(開発)」の話をしていこう。

 マンションや一戸建ての「分譲」(分けて売ること)をはじめ、オフィスビル、ショッピングセンターなどの商業施設、ホテルやリゾートの開発など、幅広く手がけるのが、不動産業界の中で「デベロッパー」と呼ばれる会社だ。要するに、マンションやオフィスビル、商業施設などを企画して、造って、売るところまでトータルにかかわる仕事である。

 有名どころでいうと、たとえば、東京の丸の内の再開発事業を手がけたのは三菱地所だし、東京ミッドタウンや日本橋の再開発を手がけたのは三井不動産だ。リゾート地の開発もデベロッパーの仕事だし、中には海外の案件を手がけることもある。

 まさに、「街づくり」である。一見華やかに思える仕事だが、具体的な仕事の中身を見てみると、意外に地道なステップの積み重ねであることがわかる。たとえば、ある新規分譲マンションのプロジェクトは次のように進められる。

(1)土地の取得

 土地がなくてはすべてが始まらない。仲介会社や銀行から情報を集め、持ち主と交渉しながら土地を仕入れていく。

(2)企画

 どんなマンションにするのか? 緻密なマーケティングのうえで全体のコンセプトを決定。このコンセプトを建物の外観や間取りまで落とし込み、設計を依頼する。華やかで面白そうに思える部分だが、売れるマンションにするための肝になる、重要な部分でもある。

(3)「開発許可」や「建築確認」の取得

 着工前には法令で定められた手続きもクリアしておかなくてはならない。都市計画法上の「開発許可」や、建築基準法上の「建築確認」を取得することが必要だ。行政の担当窓口に行って相談しながら、手続きを進めていく。

(4)建物の建設工事

 建設会社に依頼し、デベロッパーはプロデューサー的な役割を担う。デベロッパーの中には建設会社を兼ねているところもある。

(5)販売計画の作成

 なにぶん高額商品を大量に売るわけだから、販売計画だって大掛かりになる。早い段階から戦略を立て、広告やモデルルームにもかなりの投資をして凝ったものをつくる。専門の広告代理店に依頼する場合もある。

 このように、土地の持ち主から、行政の担当者、建設会社の人、広告代理店の人まで、さまざまな分野の専門家と交渉しながら進めていかなくてはならない。その分、幅広い分野の知識や情報収集が求められ、大規模な開発事業になればなるほど、仕事の進め方は複雑になる。

 たとえば六本木ヒルズなどは、約400件の地権者と17年の歳月をかけて進められた。長丁場な仕事だ。だが、プロジェクト自体は壮大でも、その中で自分が担当するのはごく一部である。同じプロジェクトにかかわる他の多くのメンバーとうまくやっていく協調性と、自分の役割はきちんと果たす責任感も求められる。

 全体を見渡す広い視野と、細かなことまで疎かにしないこだわりの、両方が必要な仕事だ。何しろ後の世にまで長く残る「作品」ともいうべきものである。その一端に携わり、完成させたときの喜びと充実感は、何にも代え難いものがあるだろう。

 耐震性や省エネ性に優れた物件の提供、老朽化した建物の再生、国際競争力の強化といった新たな課題も出てきている。2027年に東京駅前に高さ390mという日本一の高層ビルを完成させる「常盤橋プロジェクト」も進行中だ。東京は今以上に先進的で魅力的なまちとなっていくだろう。デベロッパーの仕事もこれからますます面白くなりそうだ。

(画像素材:PIXTA)

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