まちづくり関連企業特集

 まちづくり関連業界の現在の状況や、注目を集める分野について、今後の業界の動向も踏まえて知っておきましょう。

【第5回】IT時代の不動産業

インターネットの活用が不可欠な時代に

インターネットの活用

「不動産業」というと、古い業界というイメージを持つ人もいるかもしれない。だが今は違う。不動産業界にもIT化の波が…いや、むしろ不動産業だからこそITの活用が必須の時代になったといえる。

 そもそも「仲介」とは、不動産を売りたい人と買いたい人を「つなぐ」仕事である。ここでインターネットが活用されないわけがない。今や不動産も、現地に行く前にネットであれこれ見て検討するのが当たり前になった。インターネット上の不動産情報サイトにアクセスし、希望の条件を入れて検索して探す時代である。

 しかも、他のどんな商品よりも時間をかけて、何カ月もの間じっくり情報収集する人が多い。なにしろ「一生に一度の買い物」なのだから、当然だ。「ネット上でいかに情報提供するか」は今や不動産業者にとっては生命線ともいえる課題だ。間取りは? 外観は? 周辺の環境は? そして何よりこの価格は「お値打ち」なのか? 購入を検討する人が知りたいことは山ほどある。その間、不動産業者のホームページは何十回、何百回とアクセスされ、見比べられることになる。

 また、新築の分譲マンションでは、手間とお金をかけてハイクオリティーな宣伝用ホームページを作成することも珍しくない。動画を用意するなど、見せ方のテクニックも多様化している。今では、モデルルームと同様に重要なPRの手段である。

 不動産の場合、さすがに「クリック一発で購入」というネットショッピングはないが、取引前の「重要事項説明」をWeb会議システムなどを利用して行う「IT重説」も2021年4月からは売買・賃貸ともに可能になり、コロナ禍で外出を控えたいというニーズにも対応している。
 LINEによる接客やオンライン内覧などに力を入れる企業も増えている。2020年以降は新型コロナウイルス感染症予防対策の一環として、ITを活用した接客や重要事項説明はますます促進される傾向にある。2022年4月の宅建業法改正により、書面だけでなく電子ファイルによる重要事項説明書や契約書も認められるようになり、宅建士の捺印も不要となったため、契約までオンラインのみで完結するケースも増えている。
 インターネット上で正確な情報提供がタイムリーにできている不動産業者が「信頼できる業者」として選ばれる傾向がある。一昔前までは、「おとり広告」で客を呼び寄せ、別の物件を売り込むのが常とう手段のようにいわれてきたが、今やそんなことをしようものなら、ただその業者の信頼が失われるだけだ。業界でも、おとり広告を行った業者は不動産情報サイトへの広告掲載が停止されるなど、厳しい措置が取られるようになってきている。売れた物件は即座にウェブサイト上から抹消する業者の方が、今の時代は評価される。さらに、不動産を特定する共通コードとしての「不動産ID」を整備していく動きもあり、これが定着すれば「おとり広告」などますます過去のものとなっていくだろう。不動産業界においてもデジタル化は着実に進んでいる。

 営業担当者のメールリテラシーも問われる時代になった。今では不動産業者へのメールでの問い合わせも増えており、電話より多いとも言われている。しかも、これまた「一生に一度の買い物」を目前に控えて、あれこれ考えたり迷ったりしている人が相手なのだ。そこで担当営業からのメール返信が遅かったり要領を得ていなかったりしたら、とてもその業者で高い買い物をする気にはならないだろう。高額商品を扱うからこそ、かゆいところに手が届くような情報提供が求められるのだ。

 このように、今や不動産業界こそITスキルが求められるし、ITに強い不動産業者は伸びるといわれている。「IT系のことは割と得意なのだけど、不動産業界はちょっと違うな」と思い込んでいる理系のあなたこそ、もしかするとその得意分野を活かせるのかもしれない。

(画像素材:PIXTA)

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