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芸能・映画・音楽業界

業界の現状と展望

芸能・映画・音楽業界を理解するポイント

  • 国内映画市場はアニメ作品人気が続く
  • 映画や音楽の世界でもAIが活躍
  • サブスクリプションサービスの伸びが順調な音楽業界
  • 引き続きアナログレコードにも注目が集まる
新しいメディアを上手に取り込むことが成長のカギ

新しいメディアや最新のデジタル技術を上手に取り込むことが成長のカギ

古くからテレビ・ラジオ・出版などのマスコミ業界との関係が強い芸能・映画・音楽業界だが、 これらの業界でもインターネットやSNS、パソコンやスマートフォン、タブレット端末といった新しいメディアやツールとの連携による、 さまざまな変化がもたらされている。こうした新しいメディアをいかに上手に取り込んでいくかが、生き残りと成長のカギとなっている。
また、近年は映画業界でもAIを活用する事例が増えており、脚本執筆やCGの品質向上といった製作現場はもとより、 過去作品のさまざまなデータ分析から、新作映画の市場動向や収益予想を行うなど、いろいろな場面でAIが活用され始めている。 また、音楽業界でも作曲や編曲などでAIを活用するケースが増えている。

アニメ作品が興行収入をけん引。洋画はストライキの影響で公開本数が減少

新作映画の企画立案から脚本作成、出演者への交渉までを行うのが「映画制作会社」。
完成した作品の権利を買い取って映画館に提供したり宣伝したりするのが「映画配給会社」。 そして観客に向けて上映するのが「映画館運営会社」だ。1本の映画が観客の元に届くまでには、 数え切れないほどたくさんの人たちがかかわっている。映画製作では、東宝、東映、松竹の「邦画御三家」とKADOKAWAが大手として知られる。 他には放送局や、芸能プロダクション、スタジオジブリや東映アニメーションなどのアニメ製作会社がある。

一般社団法人日本映画製作者連盟の「日本映画産業統計」によると、2024年の国内興行収入は前年比6.5%減の 2,069億8,300万円、入場者数も同7.1%減の1億4,444万人と減少した。邦画・洋画別では、邦画の公開本数は685本(2023年は676本)と 増加したものの、洋画は505本(同556本)と減少。興行収入も、邦画は前年比5.1%増の1,558億円と健闘したが、洋画は同30.2%減の511億8,300万円と大きく減少した。

邦画では、『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』が158.0億円、『劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦』が116.4億円とアニメの2作品が100億円を超える 興行収入を記録した。上位作品の多くがアニメで、興行収入をけん引している。
洋画では、『インサイド・ヘッド2』が53.6億円と唯一の50億円超えとなった。2023年に始まったハリウッドでの脚本家や俳優によるストライキの影響で製作が遅れており、 公開本数が減少したのが大きな原因だ。
なお、映画館スクリーン数は3,675と前年から22増となった。

ポイント

大作の映画やアニメでは巨額な製作費が必要になります。もしものリスク分散の側面もあり、映画会社だけでなく、テレビ局、出版社、レコード会社、広告代理店など複数の会社から出資を受ける「製作委員会」方式を採用することが一般的です。配給収入や放映権料などの収入は、製作委員会が出資比率に応じて各社に配分します。

順調な有料音楽配信売り上げ。アナログレコードも人気が継続

音楽業界には、CDやDVDの制作・宣伝を行う「レコード会社」を中心に、新曲のジャケットやプロモーションビデオなどの制作を手掛ける「制作会社」や、アーティストのマネジメントを行う「マネジメント会社」、ライブツアーやコンサートを企画する「イベント会社」などがある。
一般社団法人日本レコード協会の「日本のレコード産業2024」によれば、2023年の音楽ソフト(オーディオレコード+音楽ビデオ)の総生産数は前年比9%増の1億5,908万枚・巻となった。金額も同9%増の2,207億円と好調だった。
オーディオレコードでは、CDアルバムが数量で同6%増の7,131万枚、金額で同5%増の1,021億円、CDシングルが数量で同10%増の3,748万枚、金額で同14%増の370億円となった。
近年注目を浴びるアナログディスクの数量は、同26%増の269万枚と引き続き好調。金額では同45%増の63億円と、1989年(71億円)以来の60億円超えを記録した。
音楽ビデオは、数量が同9%増の4,711万枚・巻、金額は同10%増の745億円だった。
音楽配信の売り上げは年々増加しており、2023年は前年比11%増の1,165億円と6年連続の2桁増、10年連続の増額となった。なお、ダウンロード数量は、前年比17%減の4,048万ダウンロード、 売り上げも同11%減の102億円とふるわなかったが、ストリーミングが引き続き好調で、売り上げは14%増の1,056億円と1,000億円超えとなった。売り上げに占めるストリーミング率は年々上昇、初の9割超えとなった。

有料音楽配信で規模を拡大しているのは、定額で音楽が聴き放題になる「サブスクリプションサービス」。 従来は、1曲もしくはアルバム1枚単位で音楽を購入していたが、サブスクリプションサービスでは1枚のアルバムを買うよりも安く、数千万という楽曲を聴くことができる。さらにダウンロードした曲は クラウドに保存できるサービスを提供しているところもある。

「Apple Music」や「YouTube Music」、「LINE MUSIC」など、日本でもおなじみの企業に加えて、世界で1億人以上のユーザーを抱える世界最大手の「Spotify(スポティファイ)」が日本でのサービスを開始したことも、プラスに作用している。

また、中国発の動画共有サービスであるTikTokで楽曲の一部を聴いて気に入り、SNSで拡散、サブスクリプションサービスでフルコーラスを聴くといった、これまでとは違う形でのヒットの仕方も生まれている。 今後もこうしたデジタル音楽市場から、新たなヒット曲やミュージシャンが生まれる可能性は高く、アーティストにとってはライブやSNS、YouTubeなど多方面での活動がチャンスにつながる。音楽ビジネスのあり方や構造も変化しそうだ。
なお、事務所や特定のレーベルと契約していない個人でもSpotifyやApple Musicなどの音楽配信サービス会社で、自分が作曲した曲を配信することが可能だ。通常は、TuneCoreやBIG UP!、Eggs Pass(旧TOWER CLOUD)といった 国内外の音楽配信代行サービス会社を通じて行う。中には著作権管理サービスを提供する会社もある。

ポイント

国際レコード産業連盟によれば、2023年の全世界のレコード産業の売り上げは前年比10.2%増の286億米ドルとなっています。世界的にもサブスクリプション音楽配信サービス(ストリーミング再生)の売り上げは好調で、前年比11.2%増となっています。その規模は大きく、売り上げの67.3%を占めています。

音楽業界でもAIの活用が進む

近年は音楽分野においてもAIを活用する場面が増えている。話題になった、故人である美空ひばりさんの“新曲ライブ”を実現するNHKのプロジェクトでは、さまざまな最新のAI技術を採用。 重要なボーカルパートには、ヤマハの歌声合成技術「VOCALOID:AI™」が活用された。
さらに、AIで音楽を生成するサービスやソフトも登場し、OpenAIのJukedeckは数秒でオリジナルの楽曲を生成する。AIが生成した音楽に関しては著作権のありようが大きな課題となっている。

業界関連⽤語

レコード

CDの登場で、過去の遺物として姿を消したかのように見えたレコードが、近年人気になっている。有名アーティストの協力や、名盤といわれた録音の再発売、さらには新録音のレコードも登場している。
アナログならではの音質もあり、懐かしさで購入するオールドファンだけでなく、レコードになじみのなかった若い音楽ファンも注目し、売り上げを伸ばしている。レコードを再生するには、専用のレコードプレーヤーやアンプが必要だが、アンプやスピーカーを内蔵したプレーヤーなども販売され、レコード人気を支えている。

音楽出版社

作曲家や作詞家などから音楽作品の著作権管理などの業務を委託された音楽著作権管理会社で、著作印税の一部を管理料として受け取る。楽譜出版社がこうした業務を行っていたことから音楽出版社と呼ばれるが、いまでは、放送局、レコード会社、芸能プロダクションなどさまざまな系列の会社がある。

多くの場合、JASRACなどと契約を締結し所有作品を預け、JASRACが作品の著作権管理を行う。JASRACは利用者に許諾を出し使用料を受領、それを音楽出版社に支払い、さらにそのお金が作曲家や作詞家に分配される。

コンテンツビジネス

コンテンツとは、映画や音楽、マンガ、アニメなどの制作物のこと。
例えば映画作品が映画配給会社を通じて上映された後、DVD化されたりテレビ放映されたりする(二次使用)ことで、新たな利益が生まれる。ほかにもアニメのキャラクターグッズの販売やキャラクターを使った広告宣伝などもコンテンツビジネスだ。
コンテンツビジネスは、ほかのさまざまな産業や文化とのかかわりが深いため、経済波及効果が高い。

シネマコンプレックス

入り口は一つだが、施設内に100席から300席くらいの座席を備えた上映設備が、7~10室(スクリーン)ほど並んでおり、観客が好みに合わせて作品を選択できる複合型映画館。
映画館側としては入場者数によって、上映するスクリーンを入れ替えたり、同じスクリーンで時間帯を変えて複数のタイトルを上映したりできるなどのメリットがある。

どんな仕事があるの︖

芸能・音楽業界の主な仕事

宣伝
生み出された作品をユーザーに宣伝するために、マスメディアへのプロモーション、販売促進物の製作、ライブや公開録音など効果的な宣伝手法の立案・実行を担当する。

制作
市場動向などの情報を収集し、新譜のコンセプト作成やプランニング、新人の開拓やアーティストの育成、さらに実際の音源制作、プロモーション業務の支援などを行う。

映画業界の主な仕事

宣伝
洋画作品の邦題やキャッチコピーの作成、宣伝方法のプランニング、イベントの企画立案、パンフレット製作、メディアの広告展開などを行う。

製作
企画から脚本、撮影、編集まで映画製作の全工程に携わる。最近では映画会社が自社で製作するより、製作プロダクションが手掛けることが多い。

※原稿作成期間は2024年12⽉28⽇〜2025年2⽉28⽇です。

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