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コンサルティング・シンクタンク・調査業界

業界の現状と展望

コンサルティング・シンクタンク・調査業界を理解するポイント

  • 経営に関するさまざまな課題に解決策を見出すコンサルティング業界
  • デジタル化推進の流れは継続。市場は拡大が続く見込み
  • 必要な情報を調査・分析して提供するシンクタンクや調査会社

顧客は個人経営者から大企業までさまざま

コンサルティング業界の主な顧客は、個人経営者や企業。「3カ年経営計画を立てたい」というような経営戦略にまつわるニーズや「営業利益を上げるにはどうしたらよいか」といった運営上の課題、営業、会計、人事、ITなどさまざまな分野における悩みや相談に対して効果的で具体的な対策を提案する。
数カ月から数年単位でプロジェクトチームを組み、複数のコンサルタントがアイデアを出し合って仕事を進めることもある。

そのため、コンサルタント業界は多種多様で、会計や法務、システム、業務改善など企業の経営課題全般を手掛ける「総合系コンサルティング」、経営陣を対応相手(カウンターパート)としてM&Aや新規事業などの経営戦略を講じる「戦略系コンサルティング」、ITや医療、財務、企業再生など得意とする分野に特化した「専門系コンサルティング」などがある。

ポイント

高齢化や後継者不足といった理由で事業の継続が困難になる事業者は多く、M&A件数は増加傾向にあります。そのため、売り手と買い手の双方を支援するM&A事業者も増加の一途です。そうした中で起こった「ルシアン事件」は、M&A仲介市場の信用を地に落とす出来事になりました。中小企業庁では「中小M&Aガイドライン」を改訂し、中小M&A市場における健全な環境整備と、支援機関における支援の質の向上を図っています。

近年は海外に生産・物流工場などを置き、海外国籍の人材を採用するなど、企業のグローバル化が進んでいる。文化の異なる国や人材と共に仕事をうまく進めるには、さまざまな壁が立ちはだかる。過去の事例や最新情報を踏まえた正しい状況分析と判断、的確な解決策を提案することが求められている。
さらに、ロシアによるウクライナ侵攻や、ガザ地区におけるハマスとイスラエルの紛争勃発、米中対立などに起因する、高まる地政学リスク対応への需要も増している。

DX支援事業がコンサルティング市場を引き続き拡大させる

コンサルティング業界には、グローバル企業のコンサルティングを担う外資系大手から、中小企業の経営支援を行う個人の中小企業診断士までが存在しており、その規模や内容はさまざまだ。
IT専門調査会社IDC Japanは、国内ビジネスコンサルティング市場予測を発表。2023年は支出額ベースで前年比12.6%増の7,240億円となり、2024年についても、同10.6%増の2桁成長になると見込んでいる。
デジタルビジネス化を図る企業の需要に加え、新規ビジネスやイノベーションに向けたビジネスコンサルティングの活用が拡大していると分析している。2024年以降についてもデジタルビジネス化に向けた需要が牽引し、高成長が継続。2023年~2028年の同市場は年間平均成長率10.1%で成長を継続し、2028年には1兆1,714億円に達すると予測している。一方で、人材不足が市場成長の慢性的な抑制要因となっていることも指摘している。

官公庁や企業に、必要な情報を提供する

シンクタンク・調査業界は、「試作食品の感想を聞きたい」とか、「国民が政府に何を求めているのかを知りたい」といった消費者や国民の意向・動向を探りたい企業や官公庁からの依頼を受けて、情報収集や調査サービスを提供する。
さらに集めた情報についての分析や、分析結果を踏まえた提案も行う。

シンクタンク(think-tank)は直訳すれば「頭脳集団」。国内には100以上のシンクタンクが存在するといわれており、政策研究、社会問題や国際情勢、経済、最新技術、環境問題など幅広い分野をカバーしている。

ポイント

日本のシンクタンクには、政府系シンクタンクと民間シンクタンクがあります。前者は、政策に関する調査や提言を行っており、経済社会総合研究所(内閣府所管)や日本国際問題研究所(元外務省所管)、産業技術総合研究所(経済産業省所管)、防衛研究所(防衛省所管)などがあります。後者には、野村総合研究所や三菱総合研究所、日本総合研究所などがあります。

インターネットやモバイルリサーチが成長

世界規模で情報収集ができる大手シンクタンクがある一方で、企業調査専門の調査企業、特定分野での調査を得意とする専門企業、インターネットや携帯電話経由での調査専門企業などがある。

ここ数年は、短期間かつ、これまでより低価格で多くの人に調査ができることから、インターネット経由で調査を行うインターネットリサーチ企業や、スマートフォンなどの携帯電話で調査を行うモバイル調査企業の成長が目立っている。
日本マーケティング・リサーチ協会の「第49回経営業務実態調査」によれば、2023年度の日本の市場調査業界の市場規模は前年度比0.1%増の2,593億円となった。
パネル調査(同じ調査対象者に対して、期間をおいて同じ質問を繰り返し行う調査方法)は前年度比0.1%増の751億円、新製品開発のためによく行われるアドホック調査(調査の設計、実施、集計、分析などが1回限りで完結する調査)は同0.1%減の1,437億円となった。アドホック調査のうち、インターネットによる調査は同1.2%減の787億円、インターネットを使わない既存手法による調査は同1.3%増の651億円となった。2024年度の調査事業売上高については、同1.7%増と見通しを立てている。

ポイント

テレビ視聴率調査は、かつてニールセン社とビデオリサーチ社が担っていましたが、現在は多くのテレビ局がビデオリサーチ社のデータを活用しています。調査にはいくつかの方法がありますが、PM(ピープルメーター)という機械を調査世帯に取り付けてデータを集計する手法が中心です。ビデオリサーチ社の筆頭株主は電通で、多くの放送局や広告代理店も株主になっています。

業界関連⽤語

デジタルディスラプション

新しいデジタル技術の登場によって既存の製品やサービスが、これまでとは異なる高性能で利便性の高い新しい製品やサービスに生まれ変わること。古くは、パーソナルコンピューターの登場によって大型コンピューター市場が、CDの登場によってレコード市場が破壊(ディスラプト)されたように、既存の市場が創造的に破壊される際に使われる。デジタルディスラプションは産業価値産業構造を大きく変化させる。例えばデジタル技術の進化が生み出す自動走行車の登場は、自動車の在り方そのものを大きく変えるデジタルディスラプションの一つといえる。

BPO

BPOとは「Business Process Outsourcing」の略。BPOとは企業の内部の業務処理(ビジネスプロセス)を一括して、外部の業者に委託(アウトソーシング)すること。従来のIT分野のBPOだけではなく、人事・経理、営業や物流・在庫管理までもBPOの対象となってきており、今後ますます伸びが期待される分野。

デジタルトランスフォーメーション(DX)

「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念。
企業が競争に勝ち残るために、モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、クラウドといったいわゆる「第3のプラットフォーム」を活用し、新しいビジネスモデルやサービスや製品を創造する。こうしたイノベーションをアシストする技術として、IoTAIロボティクスARVRなどがある。

マスマーケティングとリレーションシップ・マーケティング

従来型の、全ての消費者を対象にマスメディアを通じた大量の広告投入を前提とするのがマスマーケティング
一方で、特定の顧客との間で良好な関係を維持し、長期間にわたって取引を継続させようというマーケティング手法がリレーションシップ・マーケティング

リレーションシップ・マーケティングは長期的視点で捉えるため、顧客が商品やサービスに対して満足することはもちろんだが、その後のサポートや、定期的に顧客に働きかけて関係を保ち続けることも重要になる。

2025年の崖

経済産業省が2018年にまとめた「DXレポート」に登場した言葉で、企業に対してDXの必要性を訴えるものとして注目を浴びた。このレポートでは、日本企業が市場で勝ち抜くにはDXの推進が必要不可欠で、DXを推進しなければ、既存のシステムはレガシーシステムとなり、業務効率・競争力が低下し、2025年から年間で最大約12兆円もの経済損失が発生すると予測。これを「2025年の崖」と呼んでいる。原因として、既存のITシステムのカスタマイズや最適化を繰り返すことで、システムの複雑化・肥大化を招くことや、既存のシステムの多くで使われている古いプログラミング言語を扱えるエンジニアが2025年までに定年を迎えることなどが指摘されている。

2030年問題

2030年問題とは、日本国内の人口の3割程度が65歳以上の高齢者となり、生産年齢人口(生産活動の中核を担う15歳以上65歳未満の人口)が減少することで発生する諸問題のこと。社会保険料の増加や、人材不足、人件費の高騰による経済成長の鈍化などが指摘されている。なお、約800万人といわれる団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、超高齢社会に起因する諸問題は「2025年問題」と呼ばれている。

BCP

BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、事業継続計画といわれるもの。テロ、大規模な自然災害、突発的なシステム障害などの危機的状況下においても、企業活動を継続できるよう事前に用意しておく計画書のことを指す。コロナ禍において、あらためてBCPの重要性が認識されており、政府も感染症に対応したBCPの策定、点検、着実な実行を促している。
なお、BCMは「Business Continuity Management」の略で、BCPの策定から、導入・運用・見直しなどを含む戦略的なマネージメント全般のことをいう。

完全成果報酬型コンサルティング

これまでのコンサルティングは、リスクを負わないこと、一括もしくは毎月固定報酬で契約することが一般的だったが、完全成果報酬型の場合は、契約時に売り上げ増や、コスト削減、粗利益増などの評価指標を設定し、その達成度に応じて報酬を決定する仕組みの契約。

どんな仕事があるの︖

コンサルティング業界の主な仕事

戦略系コンサルタント
企業の経営戦略にまつわる相談に応じる。会計から営業、人事まで幅広い知識と説得力のある提案、顧客に信頼される魅力のある人間性が求められる。戦略系コンサルティングファームや総合研究所系コンサルティング会社には、戦略にまつわる相談が多いといわれている。

すぐにコンサルタントになれるわけではなく、「アナリスト」「アソシエイト」を経て、コンサルタントになるケースが多い。

専門特化型コンサルタント
営業、IT、人事、会計など、特定分野に特化した相談、悩みに応じる。特定分野の深い知識と説得力のある提案、顧客に信頼される魅力のある人間性が求められる。
戦略系コンサルタントと同様に、「アナリスト」「アソシエイト」を経て、コンサルタントになるケースが多い。

システムエンジニア
営業、IT、人事、会計など、業務に使うコンピューターシステムを企画し、コンピューター言語による開発を管理する。
大手コンサルティング会社やIT分野のコンサルティング企業では、文理問わず採用を行っていることが多い。

シンクタンク・調査業界の主な仕事

営業
顧客が何を知りたがっているのかを探り、調査サービスを提案する。

マーケティング
顧客が知りたがっていることを調べるには、どのような調査が適しているのかを企画する。

調査・リサーチ
営業やマーケティング担当者と連携して、実際の調査活動を担当する。

研究員
独自に調査・分析をして、社内外にその結果を発表する。

システムエンジニア
調査を行うシステムをつくったり、システムの維持管理を担当したりする。特にインターネットや携帯電話などを通じて調査活動を行う企業での需要が多い。

※原稿作成期間は2024年12⽉28⽇〜2025年2⽉28⽇です。

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