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専門店業界

業界の現状と展望

専門店業界を理解するポイント

  • 特定ジャンルの商品販売を得意とする専門店
  • 規模や取扱商品の拡大で、他業界の小売店とも競合
  • 大型M&Aで再編が進むドラッグストア業界
  • プロ向けの商品も拡充するホームセンター

訪日外国人観光客の増加もあり、売り上げが伸びる専門店業界

家電量販店、ドラッグストア、ホームセンター、カー用品店、衣料品店、雑貨・家具店、おもちゃ店、眼鏡店など、特定ジャンルの商品に特化して販売する専門店。豊富な専門知識と品ぞろえで規模を拡大してきた。訪日外国人観光客の増加もあり、売り上げは好調だ。ただし、近年はそれぞれの専門店が多種多様な商品を取り扱うようになっており、専門店同士やスーパー、コンビニなどとの競争が激しくなっている。

ポイント

さまざまな生活雑貨を取りそろえ、低価格で販売しているのがいわゆる「100円ショップ」です。原材料費の上昇や円安は悩みの種ですが、節約志向やインバウンド需要の高まりはプラス要因です。近年は、未出店エリアへの進出や、300円ショップの出店も増加傾向にあります。

経済産業省の「商業動態統計速報」によれば、2024年の家電大型専門店の売り上げは前年比2.1%増の4兆7,288億円。分野別では、カメラ類(前年比12.0%増)、理美容家電(同10.0%増)、住宅設備家電(同9.9%増)などの売り上げがよかった。一方で、情報家電(同4.0%減)やビジュアル家電(同2.5%減)はマイナスとなった。 店舗数は2,673店から2,670店舗に微減。

2024年のドラッグストアの売り上げは、前年比6.9%増の8兆9,202億円と好調だった。分野別では、ヘルスケア用品(衛生用品)・介護・ベビーとその他が、それぞれ前年比0.7%減、8.6%減となったほかは、すべて前年を上回った。中でも、ビューティケア(化粧品・小物)(同10.8%増)、調剤医薬品(同9.5%増)、食品(同9.4%増)は好調だった。 店舗数も19,028店から19,664店に増えている。

2024年のホームセンターの売り上げは、前年比1.7%増の3兆3,988億円。分野別では、家庭用品・日用品(同3.7%増)、カー用品・アウトドア(同3.6%増)、電気(同3.0%増)などと、多くの分野で売り上げ増となった。 店舗数も4,476店から4,531店に増加した。

競争激化でますます勝ち残り戦略が問われる

コロナ禍におけるテレワークや巣ごもり消費の特需で押し上げられた家電量販店の売り上げ増と、その反動減は一服し、通常運転にもどっている。近年は電気料金値上げの影響もあり、省エネ性能の高い電化製品の人気が高まっている。
ただし、以前から過当競争を指摘する声もあり、今後は勝ち残りへの戦略が問われている。すでに、ECサイトの強化に加えて、住宅リフォームや太陽光発電システムの設置、家具、アウトドア用品、雑貨、酒類、食品の販売など、各社は非家電事業での収益確保を図っており、ビジネスモデルの転換も進んでいる。また、急増する外国人訪日客に向けた免税取扱店舗も拡大しており、ポイント分を割り引くクーポンを発行するなど工夫を凝らしている。

ポイント

近年は転売目的で家電製品を購入するケースが増えています。転売自体は違法ではありませんが、家電量販店やメーカーにとってはイメージダウンなどのリスクがあり、各社は、購入数を限定する、購入履歴を確認する、免税会計時にパスポート番号を記録するなど、さまざまな対策を講じています。

ドラッグストア業界の企業は、もともとは薬屋(薬局)を祖業とするところが多い。医薬品の販売で収益を確保し、化粧品や食品、雑貨などに商材を広げることで利便性を高め業績を拡大してきた。
ただし、商品やサービスの差別化が難しいこともあり、スケールメリットを追求するため、M&Aを繰り返すことで規模を拡大してきた。すでに売り上げが1兆円を超える会社も登場している。規模の拡大は、売上高だけでなく、仕入れや配送コストの削減で利益率の改善にも寄与するため、さらなるM&Aの可能性も否定できない。

ポイント

業界1位のウエルシアホールディングスと業界2位のツルハホールディングスが、2027年末までに経営統合する方針を発表しています。合計売上高は2兆円を超えており、業界3位のマツキヨココカラ&カンパニーの倍以上の規模となります。一方で、規模を全国に拡大せずに、特定の地域を基盤に出店する企業が多いのもこの業界の特徴です。

また、毎年の薬価改定が待ち構えることで厳しさを増す調剤薬局に関しても、ドラッグストアを含めた再編が注目されている。売り上げ拡大を求めるか、利益確保を優先するかの企業方針も、M&A戦略に影響しそうだ。

ホームセンターは、コロナ特需で業績を大きく伸ばしたが、現在はコロナ前の売り上げ水準に落ち着いている。ホームセンターの取扱商品は、一般向けからプロ向けまで幅広く、ドラッグストアやディスカウントストアなどとの競争も厳しい。引き続きPB(プライベートブランド)商品の強化や、物流や仕入れの共通化、従来とは異なる高級感を打ち出した店舗の展開、海外市場の開拓など、さまざまな工夫が求められている。また、競争激化で業界再編の動きがでてくる可能性もある。

ポイント

DIY向けの商品が中心というイメージが強いホームセンターですが、近年は工務店や職人などプロ向けの材料や機器の品ぞろえも充実しています。また、自然災害に備えた土のうや資材なども取り扱っていることから身近な存在として注目されています。

業界関連⽤語

ドラッグストアの業界再編

ドラッグストア業界では以前から、大手が中小を合併するケースが多かったが、マツモトキヨシホールディングスとココカラファインの経営統合は、業界大手同士の統合となった。ドラッグストアには、医薬部門に強みを持つ会社もあれば、食品や化粧品を強化している会社もありさまざま。引き続き売り上げ上位の企業が群雄割拠状態にあり、売上高が1兆円を超える企業も登場した。

顧客満足度(CS= Customer Satisfaction)と従業員満足度(ES= Employee Satisfaction)

自社製品やサービスに対して、顧客がどの程度満足しているのかを数値化したのが顧客満足度。かつては生産性や効率を多少犠牲にしても、顧客満足度を高めることがよい結果を生むといわれてきた。
たしかに、業績向上につながるかもしれないが、そのことを意識しすぎると従業員のやる気が下がり、かえって業務効率が悪くなることがある。
そのため、顧客満足度を向上させるためには、まず従業員満足度を向上させなければならないという考え方が一般的になっている。

カテゴリーキラー

ある特定の商品分野(衣類・家電・スポーツ用品・住居用品など)において、圧倒的な品ぞろえと安さを武器に展開する大型専門店のこと。また、カテゴリーキラーを集めたショッピングセンターのことをパワーセンターと呼ぶ。専門性と低価格が特徴で、都市郊外に出店することが多い。アウトレットストアやオフプライスの店を集めた「アウトレットモール」と並んで、新しい業態の商圏として注目されている。

共通ポイントシステム

スーパーや小売店、飲食店、美容室、アミューズメント施設、ドラッグストア、量販店などがそれぞれに発行しているポイントを、業種をまたいでためたり支払いに充てたりすることができるシステム。ロイヤリティ マーケティングの「Ponta(ポンタ)」、楽天グループの「楽天ポイント」、NTTドコモの「dポイント」、イオンの「WAON」、セブン・カードサービスの「nanaco」などが有名。

調剤薬局併設型ドラッグストア

医薬品や化粧品に限らず、食品、美容用品、健康関連用品、日用品などさまざまな商品を販売するのがドラッグストア。一方で、医師の処方箋が必要な医療用医薬品(処方薬)を販売するのが調剤薬局。近年は、利便性や集客力の向上を目的に、調剤薬局を店舗内に併設するドラッグストアが増えている。

(メーカー)指定価格

消費者が、家電量販店で高額商品やまとめ買いをする際、数店舗を回り、金額やサービス内容の交渉を行って、最も条件のよい店舗で購入するのが一般的だった。そうした中で、値引き不可の取引形態である「(メーカー)指定価格制度」を採用するメーカーも登場。特徴は、メーカーが販売価格決定権を持つ一方で、販売店側の在庫リスクもメーカーが負担するという点だ。メーカーは販売店が必要な数量を納入し、販売店は売れなかった場合は返品できる。ただし、すべての商品が対象ではなく、いわゆるフラッグシップモデルと呼ばれる、販売競争力の高い商品群が中心になっている。いち早く「指定価格」による取引を始めたパナソニックに次いで、日立ブランドの家電事業を行う日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)も、指定価格制度を導入している。

どんな仕事があるの︖

専門店業界の主な仕事

営業販売
対面販売を基本とする専門店の「顔」。購入の際の参考になるよう、商品に関する専門知識を顧客に提供する。

バイヤー
商品の仕入れ・管理を行う。旬の商品を仕入れるための情報感度の高さ、メーカーとの交渉能力が求められる。海外メーカーとの共同開発を手掛けることも。

店舗開発
集客を左右する新店舗立地の選定、地権者との調整、テナントビルの確保など、店舗展開に関する一切の業務を行う。

ストアマネジャー
店舗の責任者として、スタッフをまとめたり売り上げを管理したりするなど、現場のすべてを仕切る。

スーパーバイザー
店舗を巡回し、よりよい売り場づくりやスタッフ教育など総合的なアドバイスを行う。

※原稿作成期間は2024年12⽉28⽇〜2025年2⽉28⽇です。

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