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住宅・インテリア業界

業界の現状と展望

住宅・インテリア業界を理解するポイント

  • ブランド力のある大手やパワービルダー(業界関連用語参照)から中堅、地域に根差した工務店まで、さまざまな会社が競い合う
  • 長期的に減少傾向にある新設住宅市場
  • 住宅価格の上昇と金利上昇はマイナス要因だが、賃上げで消費マインドの改善も
  • 利益の多くを海外で稼ぐ大手住宅メーカーも

大手から中小までさまざまな規模の会社が競い合う住宅業界

住宅メーカーがさまざまな工法で木材や鉄骨を使った住宅を組み立てる住宅業界。住宅には大きく分けて、顧客の要望に応じて建てる注文住宅と、土地に住宅を建てて販売する分譲住宅がある。住宅メーカーには、ゼネコンを傘下におき、国内外で幅広い事業を展開する大手から地元に根差した工務店まで、規模の異なる数々の企業がある。

ポイント

自由設計の注文住宅と分譲住宅の中間的な位置づけにあるのが、セミオーダー住宅です。住宅メーカーが用意した基本プランをベースに、間取りや設備などを選ぶことができるのが特徴です。抑えた費用で、自分の理想に近い住宅を建てることができます。

これまで住宅業界では新築をメインとしていたが、居住者を中心としたリフォームリノベーションなどに焦点を当てたストックビジネスにも注目が集まっている。なお、国土交通省の定義では、「リフォーム=新築時のもくろみに近づくように復元する(修繕)」、「リノベーション=新築時のもくろみとは違う次元に改修する(改修)」とされている。

他方、カーテンや床材など住宅の居住空間を快適にするために欠かせない商品を取り扱うのがインテリア業界。居住空間内すべてが商品となり、天井や壁、床などの部位、リビング、キッチン、ダイニングなどの空間、電気や厨房、衛生設備、防犯設備などの付帯設備に加えて、門、扉、塀、物置、フェンスなど、住宅の外回りの設備(エクステリア)もあり、多岐にわたっている。

少子化の影響もあり、長期的には減少傾向にある国内住宅市場

国土交通省の建築着工統計調査報告によれば、2023年の新設住宅着工戸数は、前年比4.6%減の81万9,623戸と、3年ぶりの減少となった。持家が前年比11.4%減の22万4,352戸と2年連続の減少となった。賃家は同0.3%減の34万3,894戸と3年ぶりの減少、分譲住宅は同3.6%減の24万6,299戸とこちらも3年ぶりの減少となった。近年は、建築資材や人件費、地価の上昇などが重なり各社は住宅価格に転嫁。全体的な物価高が続く中で、金額が大きな住宅への投資を控える消費者が増えていることが原因とみられている。今後については、賃上げや株高などで消費者心理が改善され、住宅需要が上向くことが期待されている一方で、日本銀行の金融政策変更によって住宅金利が上昇し、住宅需要を冷やす懸念も指摘されている。
なお、過去には100万戸を上回っていた新設住宅戸数は、2009年に78万8,410戸に急減(金融危機に端を発した世界同時不況の影響)。その後は90万戸台まで回復したが、2020年からは80万台の戸数で推移している。

ポイント

東京都では2025年4月から太陽光発電設置義務化に関する新たな制度がはじまります。既存の住宅は対象外ですが、大手ハウスメーカーなどが供給する新設住宅などが義務の対象となります(北向きや面積が小さいなどの屋根の条件が理由で設置しなくてよい場合もあります)。都からの助成金もありますが、さらなる住宅価格の上昇が見込まれます。

新築だけでなくストックビジネスにも注力

近年では消費者の住環境に対する関心の高まりやライフスタイルの多様化から、個人のこだわりや生き方、趣味嗜好(しこう)などを反映させた「自分らしいライフスタイル」をつくり出していく「ホームファッション」を取り入れる動きが広がりつつある。必要だから買う「モノ消費時代」から、自己表現のためにお金をかける「コト消費時代」に移り変わっていると言える。
例えば、コロナ禍でテレワーク専用スペースや、帰宅後すぐに洗面所に直行できる間取りが人気になるなど、消費者の多種多様なニーズに応えるための戦略が必要となっている。誰に何をどのように提供するかといったマーケティング能力が重要になっている。
矢野経済研究所の調査によれば、2023年の住宅リフォーム市場規模は、前年比0.6%増の7兆3,575億円と推計。分野別では、「増改築に関わる費用」(10㎡超+10㎡以下増改築工事)が前年比5.2%増、「設備修繕・維持管理費」が同0.3%増となったものの、「家具・インテリア等」が同0.6%減となった。新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが2類から5類に移行し、外出をともなう旅行や外食などへの支出機会が増えることで、いったんリフォーム需要(工事件数)は減少したが、リフォーム材料費や人件費などの上昇で工事単価が上昇。結果的に需要の減少分を単価の上昇で補うかたちになったとしている。今後もリフォーム市場の減少と単価の上昇は継続すると想定しており、当面は市場が縮小すると予測している。

業界大手のハウスメーカーは積極的な海外展開で売り上げと利益を確保

人口が減少傾向にある国内市場では、長期的には市場拡大は難しい。そこで、大手を中心に事業施設や商業施設、マンション運営、海外展開など多角化を推進している。中でも、アメリカでは業界大手の3強が激しいシェア争いで火花を散らしている。
最大手の大和ハウスは、アメリカでのM&Aにも積極的で、2024年11月にアライアンス・レジデンシャル社を持分法適用関連会社としている。海外事業では、2026年度には25の国と地域で海外売上高1兆円、営業利益1千億円を目標にしている。業界2位の積水ハウスも、2022年6月にアメリカの住宅会社(チェスマー・グループ傘下のチェスマー・ホームズなど4社)を買収するなど、海外事業に力を入れている。2025年度には、売上高9,270億円、営業利益930億円を目標に、1万戸程度の住宅を海外で供給できる体制を整える計画だ。
業界3位の住友林業はアメリカやオーストラリアを中心とした海外売上比率が高く、利益の多くも海外で稼いでいることで知られている。2024年9月にはオーストラリア最大手の住宅会社メトリコングループを買収するなど、海外への投資も積極的だ。2023年12月期の決算資料によると、通期売上高1兆7,332億円のうち海外売上高は9,481億円、通期経常利益1,594億円のうち海外分は1,125億となっており、それぞれ54.7%、70.6%と高い比率を占めている(先の2社は売上高、経常利益とも数十パーセント程度)。

業界関連⽤語

ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

資源エネルギー庁によれば、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の1次エネルギー消費量の収支がゼロ(使うエネルギー≦創るエネルギー)とすることを目指した住宅」のこと。政府では、「住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」としている。

パワービルダー

パワービルダーとは、床面積30坪程度の土地付き一戸建て住宅を大量に低価格(大手が供給する半分程度)で販売する企業を示す和製英語で、近年急速に業績を伸ばしている。売れ残りのリスクを減らすため、1〜15棟ほどの小規模な分譲物件を中心に取り扱うが、販売件数では大手をしのぐ勢いを見せている。

レジリエンス住宅

レジリエンスとは回復力や耐久力を表す用語で、レジリエンス住宅とは、自然災害などによる非常事態が起こっても、速やかに回復できる強靭(きょうじん)さを持った住宅のことをいう。具体的には高い耐久性や水密性に加えて、食料や日用品の備蓄スペース、雨水タンク、太陽光発電と蓄電池などのさまざまな災害対応設備を備え、ライフラインが遮断されても一定期間生活できるよう設計されている。

ペット共生住宅

少子高齢化が進んでいる今では、ペットは単なる愛玩動物ではなく、家族の一員ともいえる存在。そのため、ペットとともに家族全員が気持ちよく暮らせる住居へのニーズが高まっている。新築市場でもリフォーム市場でも、「ペット共生」は重要なポイントになりつつある。

シェアハウス

1軒の家を複数の人と共有して住めるようにした賃貸住宅。自分の部屋とは別に、共同利用できる共有スペースとしてラウンジやキッチン、シャワー、トイレといった設備がある。中には、共有スペースとしてシアタールームフィットネスルーム防音室などを備えた物件もある。一方で、シェアハウス運営会社の破産により投資家が損失を抱えたり、銀行が自己資金の少ない会社員をオーナーにすべく不正な融資を行ったりする事件も起こっている。

ペアローン

住宅ローンの一種で、1つの物件に対して夫婦2人がそれぞれローンの審査を受け、パスすれば契約、返済を行う。物件は夫婦の共有名義となり、出資割合に応じて持ち分が決定する。双方が債務者となり、お互いが相手の連帯保証人になるのが一般的。
単独の借り入れよりも借入金額を増やせる、それぞれが住宅ローン控除を利用でき、団体信用生命保険にも加入できる、といったメリットがある。デメリットとしては、ローン契約に関わる諸費用が増えることや、どちらか一方の収入が下がった時に、もう一方の負担が増えることがある。さらに、離婚してもローンの残債があった場合はそのまま返済し続けなければならないことや、共有名義の物件は共有者の同意がなければ売却できないなどの制約もリスクとなる可能性がある。

どんな仕事があるの︖

住宅・インテリア業界の主な仕事

営業
住まいづくりをトータルでサポートする、顧客のパートナー的存在。顧客に対して住宅のプランを提案するほか、顧客の要望を設計部門や施工部門に伝える、住宅が完成した後のアフターフォローなど、幅広い仕事を担う。

設計
顧客の住まいに対する要望を具体的にプランニングしていく仕事。現場の調査を行い、設計図や見積もりを作成し、建築プランを提案。工事開始後は設計通りに施工が行われているかをチェックする。安全性などを確保しながら、顧客の理想を形にする仕事。

商品開発・研究開発
時代性や社会情勢など、あらゆる方向から消費者のニーズを探り、住宅の新しいプランを企画するのが商品開発の仕事。研究開発は、住宅の品質向上を目指し、建材や構造などを研究、開発する。

リフォームアドバイザー
より快適な暮らしが実現できるよう、顧客の生活スタイルに合わせ、リフォームプランを提案。

ハウジングアドバイザー
住宅展示場での受付や案内、資料作成、顧客の希望に沿った物件のアドバイスなどを担う。

インテリアコーディネーター
壁紙や天井材などの内装、カーテンや照明器具、家具など、インテリアに関するあらゆる要素をコーディネートし、顧客に提案。顧客のニーズに合わせて、快適で機能的な住まいづくりを目指す。

キッチンスペシャリスト
顧客の要望に合わせて、よりよいキッチンづくりを提案。ライフスタイルや家族構成、体のサイズなど、いろいろな要素を考えながら、調理のしやすさ、安全性、インテリア性の優れたキッチン空間を考える。公益社団法人インテリア産業協会が資格試験を実施している。

照明コンサルタント
一般の住宅をはじめ、店舗やホテル、オフィスなど、場所や用途に応じて快適な照明プランを立てる、もしくはアドバイスする。

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住宅・インテリア業界の企業情報

※原稿作成期間は2024年12⽉28⽇〜2025年2⽉28⽇です。

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