業界研究・職種研究徹底ガイド 業界研究

ゲームソフト業界

業界の現状と展望

ゲームソフト業界を理解するポイント

  • ゲームの世界市場は好調に推移
  • ハード3社もオンライン課金に注力
  • 存在感を示す中国発ゲーム
  • ゲーム開発が大規模化する一方で小規模なインディーズゲームも健在
  • 成長著しいeスポーツ市場。高額賞金の国際大会もめじろ押し

世界各地でゲーム市場が拡大

ゲームソフト業界がソフトの開発・販売に関わるのは、大きく分けて、業務用ゲーム(アーケードゲーム)、家庭用ゲーム(コンシューマーゲーム)、スマートフォン用ゲーム(デジタル配信オンラインプラットフォーム)、PC用ゲームのカテゴリーとなる。また、家庭用ゲーム市場では、任天堂、ソニーグループ、マイクロソフトの3社が、ゲームソフトだけでなく、ハードと呼ばれるゲーム専用機器の開発・販売も行っている。
業務用ゲーム市場については、ゲームセンターの店舗数が減少していることや、スマートフォンなどの普及で余暇の楽しみ方が変わってきたこともあり、縮小傾向にあったが、近年のクレーンゲーム人気もあり客足が戻っている。

2024年8月に発刊された「ファミ通ゲーム白書2024」によれば、2023年の世界ゲームコンテンツ市場は29兆5162億円と推計。同一為替レートでは前年比3.1%増となった。規制の影響を振り払った中国が大幅に回復したことや欧米の家庭用・PCゲームが前年の実績を上回ったことなどを復調の理由としている。地域別では、東アジアが全体の42.4%を占める12兆5234億円と最も大きく、次いで北米が27.8%の8兆2178億円、欧州が18.0%の5兆3093億円、その他が11.7%の3兆4657億円となっている。
2023年の国内ゲーム市場全体の規模は、前年比4.6%増の2兆1255億円とプラス成長。プレイステーション5の販売増と7年目に入ったNintendo Switchの売れ行きが長期間に及んでおり、家庭用ゲームハードが前年比27.5%増と大きく伸びたことが目立っている。
また、国内オンラインプラットフォーム市場(スマートフォンやタブレット、PC、ネットワーク接続を前提に動作するゲームアプリなど)も、前年比3.9%増の1兆7216億円となった。このうちゲームアプリ市場は、同0.7%減の1兆2351億円と3年連続のマイナスとなったが、減少幅は縮小。PCゲーム市場は、同24.9%増と好調だった。
なお、2020年に初めて5000万人を上回った国内のゲーム人口は、2023年は前年比2.8%増の5553万人と推計。中でもアプリゲームユーザー人口は同10.0%増の4355万人と2022年の縮小から大きく反転し、家庭用ゲームも同4.0%増の2971万人に上昇した。

ハードを手がける3社は、オンラインによる継続課金といったビジネスでも実績を上げている。先の白書でも、家庭用ソフト販売のうち、オンライン市場は堅調に推移している。さらに、メタバースといわれるインターネット上の仮想空間を使ったゲームの登場も期待されている。
また、近年は中国企業が開発したゲームがスマートフォンを中心にしたオンランゲーム市場で存在感を増している。miHoYoの「原神」や「崩壊:スターレイル」、C4gamesの「放置少女~百花繚乱(りょうらん)の萌姫たち~」、StarUnionの「ザ・アンツ」など、日本にもファンが多い人気ゲームが増えている。
また、大規模で莫大(ばくだい)な予算をつぎ込んで開発や販促を行うゲームを「AAAゲーム」と呼ぶが、これまで日本や米国などのゲーム会社が主に開発していた。2024年にリリースされた西遊記をテーマにした中国の国産AAAゲーム「黒神話:悟空(Black Myth:Wukong)」は大ヒットとなり、話題を呼んだ。

ポイント

開発に数年を要し、百億円単位のコストがかかるともいわれるAAAゲーム。一方で、インディーゲーム(インディペンデント・ゲーム)といわれる、少人数、低予算で開発されたゲームもあります。人気作も多く、Nintendo SwitchやPlayStation向け公式サイトでは、インディゲームの紹介・販売をしています。なお、「Minecraft(マインクラフト)」は世界で最も売れたインディゲームといわれ、売り上げが3億本を突破しています。

eスポーツの現状

近年マスコミで目にすることが多くなったeスポーツエレクトロニック・スポーツ(electronic sports)の略称で、コンピューターゲームやビデオゲームを使ったスポーツ競技のこと。実際に競技でプレーされているのは、格闘ゲーム、スポーツゲーム、RTS(リアルタイムストラテジー)、MOBA(マルチプレーヤーオンラインバトルアリーナ)、トレーディングカード、パズル、シューティングの7種類が主流だ。国内でも、市場規模は年々成長しており、「日本eスポーツ白書2023」によれば、日本のeスポーツの市場規模は2022年が125億3600万円ながら、2025年には217億8100万円まで拡大すると見込んでいる。規模が大きく伸び率の高い世界市場は2030年には67.5億米ドルに成長すると予測する調査会社もある。興行としての価値も高く、近年はゲーム関連企業だけでなく、さまざまな業界の企業がeスポーツに関わっている。eスポーツというと若者向けというイメージが強いが、シニア層への拡大も期待されている。

海外ではeスポーツをスポーツとして、プロゲーマーをスポーツ選手として認知している国が多いだけでなく、賞金総額でも注目されており、賞金総額が1億円を超える大会も多い。世界の名だたる企業がイベントや選手のスポンサーに名乗りを上げている。eスポーツは、2018年にジャカルタで開催されたアジア競技大会で公開競技として採用。2024年開催のパリオリンピックでの採用は見送られたが、2023年の中国・杭州アジア競技大会では正式なメダル種目として採用された。また、2024年にはサウジアラビアで「eスポーツ・ワールドカップ」が約8週間にわたって開催。賞金総額は6000万米ドルを超え、1500人以上の選手が参加、200万人以上の来場者と5億人もの視聴者を集めた大規模な大会となった。また、オリンピックを主催する国際オリンピック委員会(IOC)は、eスポーツの国際大会「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」を2025年に開催することを決定。国家戦略としてゲームとeスポーツの世界的なハブになることを目指しているサウジアラビアで開催される。

ポイント

eスポーツの世界では、大会に出場して賞金や報酬を獲得する「プロゲーマー」が存在し、高額賞金を得ている選手もいます。近年では、eスポーツの専門コースがある高校や専門学校が増えています。また、部活動などの課外活動でeスポーツに打ち込める学校もたくさんあります。

業界関連⽤語

MOBA

Multiplayer online battle arenaマルチプレーヤーオンラインバトルアリーナ)の略で、司令官として攻撃や補給など複数のタスクを同時に処理する、RTS(Real-time Strategy:リアルタイムストラテジー)から派生した、比較的新しいジャンルのゲーム。eスポーツの大会も多く、人気が高まっている。5対5や3対3などのチームに分かれ、プレーヤーは一つずつキャラクターを操作。チームで協力しながら、相手の拠点を攻撃する。RTSでは1人が複数のキャラクターを操作するが、MOBAでは参加者がそれぞれのキャラクターを操作。個々のスキルに加えて、チームとしての連携、ゲーム展開に応じた臨機応変な対応が求められるため、プレーヤーも観客も楽しめるゲームといわれている。

ゲームクリエーター

プロデューサー、ディレクター、プログラマー、シナリオライター、サウンドクリエーターなど、ゲームの企画・制作に関わる、さまざまな人を総称してこう呼ぶ。
かつては、1人で企画立案からプログラミンググラフィックデザインなどを行っていたこともあったが、近年は、制作作業は分業化・専門化している。ディレクターやプロデューサーが企画立ち上げから完成まで立ち会い、分業の業務を統括。アドバイスや、最終判断などを任されている。

ネイティブアプリ

スマートフォンなどの端末機にある演算装置が直接データ処理を行うタイプのアプリのことで、アプリマーケットを通じてダウンロードする。ゲームの表現力や操作性が高く、通信環境の制約を受けにくいといわれている。
他方、それぞれの企業が運営するゲームポータルのページから遊ぶことができるゲームは、ブラウザゲームSNSゲームといわれる。

MMORPG

Massively Multiplayer Online Role-Playing Gameの略で、大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲームと訳される。
MMORPGでは、ゲーム会社が用意した専用サーバーにあるインターネット上の仮想空間にアクセス、同時に数千人といった多くの人が同じ世界を共有しながらオンラインで遊ぶことができる。
他のプレーヤーとの会話や情報交換、また、ゲーム内仮想通貨(バーチャルマネー)を使って装備を充実させるなどの要素もある。

クロスプラットフォームゲーム

かつての家庭用ゲーム市場では、それぞれのハードごとに根強いファンがおり、いかに有力な人気タイトルを自社のハード陣営に取り込めるかを競い合ってきた。一方で、複数のハードでソフトを供給したい会社もあり、家庭用ゲーム市場では、こうした戦略をマルチプラットフォームと呼んでいた。近年は、異なるハードを使っているユーザー同士がオンラインで対戦できるクロスプレイや、異なるハード間でのセーブデータを共有できるクロスセーブなど、ハードの垣根を越えて連携できるゲームも開発されている。こうした機能を持つゲームをクロスプラットフォームゲームと呼んでいる。

Play to Earn

文字通り遊んで稼ぐことが目的のゲームで、P2Eと略して呼ばれることもある。主に仮想通貨ブロックチェーン技術を使ったオンラインゲームをしながら、仮想通貨を稼ぐことになる。稼ぐためには、ゲーム内で課せられたミッションをクリアしたり、ゲーム内で獲得したNFTアイテムキャラクターを販売したりすることなどで仮想通貨を得られる。リスクとしては、ゲームによって異なるが初期費用が数万円から数十万円程度かかることや、稼いだ仮想通貨の価値が変動しやすいこと、さらに、ポンジ・スキーム(出資者から得た資金を運用せずに初期の出資者に配当し、あたかも資金運用によって利益が出ていると装う投資詐欺)の可能性などが指摘されている。

IPコンテンツ

IPとは、Intellectual Property の略で、ゲームやアニメなどにおけるキャラクターなどの知的財産のこと。ゲーム会社は有力なIPコンテンツを多数保有しており、各社はメディアミックス戦略を活発化している。映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の大成功はその好例で、任天堂は「ゼルダの伝説」を扱った実写映画の企画開発を開始したことも明らかにしている。
他方、プレイステーションのゲームでも映画化が進められており、2023年9月には人気ゲーム「グランツーリスモ」の実写映画が劇場公開。今後も元寇を題材にしたゲーム「Ghost of Tsushima」の映画化や、古代ギリシャ神話を題材としたゲーム「God of War」のTVドラマシリーズ化などのプロジェクトが進行している。

どんな仕事があるの︖

ゲームソフト業界の主な仕事

シナリオライター
ゲームのストーリーや構成などを考える。

グラフィックデザイナー
ゲームに登場するキャラクターやアイテム、背景などを描く。

サウンドクリエーター
ゲームに欠かせない音楽や効果音などを作成する。主に曲作りを行うコンポーザーと、コンポーザーが作った曲をゲーム上で再生できるようにするプログラマーの仕事がある。

プログラマー
プログラミング言語を使いこなし、実際にキャラクターなどをゲーム画面上で動かすシステムを開発する。

※原稿作成期間は2024年12⽉28⽇〜2025年2⽉28⽇です。

業界研究・職種研究 徹底ガイド

ページTOPへ