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スポーツ・玩具・ゲーム製品業界

業界の現状と展望

スポーツ・玩具・ゲーム製品業界を理解するポイント

  • 堅調な需要が見込めるスポーツ用品関連業界
  • ECの存在感が増す中でも実店舗の活用を模索
  • 成長産業としての新スポーツ市場の創生が求められる
  • 大規模な大会も開催され、スポーツとしての認知度が高まるeスポーツ
  • キダルト層(キッズ+アダルト)に人気の商品分野の伸びが成長を支える

アウトドア市場の拡大は落ち着くものの、全体としては堅調に推移

野球、サッカー、ゴルフ、ランニングなど、さまざまなスポーツ関連商品を企画、販売するスポーツ用品業界。五輪イヤーでの日本代表選手の活躍もあり、スポーツ用品市場は堅調に推移している。また、近年はプロスポーツ市場も活況で、中でもBリーグは大型アリーナが各地で新設され、観客動員数が増加していることもプラス要因だ。
またスポーツシューズスポーツアパレルを日常的に着用するアスレジャーといわれるファッションスタイルも定着、スポーツウエアやトレーニングウエアの成長も見逃せない。ランニングや山登り、フィットネスのように愛好者の裾野が広い分野で人気が高まっていることもあるが、もう一つの理由として、スポーツウエアのファッション性が浸透してきた背景もある。「スーツにスニーカーを合わせる」、「ジャケットの下にスポーツブルゾンを着用する」といった、いわゆる「スポーツミックス」が若者を中心に受け入れられている。
さらに、コンプレッションウエアや、発熱・冷却など温感対策を施した機能性アンダーウエアの存在も挙げられる。人口減少による市場縮小懸念がある中でも、アスレジャースポーツミックスのように、競技者だけでなく一般消費者需要を取り込める商品については好調に推移するものと考えられている。
また、スーツケースで有名なエースや作業服専門店で知られるワークマンもゴルフ用品市場に参入するなど、他業種からの新規参入も見受けられる。
矢野経済研究所では、2023年のスポーツ用品市場は、前年比0.2%増の1兆6,493億円と見込んでいる。分野ごとに好不調があり、スキー・スノーボードやバドミントン、バレーボールのように10%以上伸びたものもある。一方で、コロナ禍以降のスポーツ用品市場をけん引してきたアウトドア系分野の需要が落ち着いている。供給過多で販売価格が下落したこともあり全体としては横ばいとなった。2024年については、同3.0%増の1兆6,984億円と予想している。また、同研究所はスポーツショップ大手4社の全国店舗数の調査も行っており、それによれば2024年6月時点で全国の店舗数は合計606店舗。都道府県別店舗数では、愛知県が47店舗で最も多く、次いで東京都と千葉県が33店舗となっている。近年はあらゆる業界でECの存在感が増しているが、消費者が使用感や着用感を確認することが需要を喚起するケースもあり、消費者需要に対応できる売場づくりに努める企業が増えているとしている。

成長産業としてのスポーツを目指す

成長産業としてのスポーツを目指す

スポーツ業界にはスポーツ用品市場だけでなく、スタジアムの運営や大会の開催、競技者や指導者の育成・教育に関わる事業など、さまざまな産業がある。サッカーやバスケットボール、野球やラグビーなど、欧米諸国ではビジネスとしてのスポーツがすでに巨大な産業として存在する。一方で、国内ではスポーツは教育の一環と捉えてきた一面もあってか、十分なスポーツ振興政策が取られてこなかった。
そのため、スポーツ庁を中心に、スポーツを成長産業化させるため、さまざまな施策に取り組んでいる。スポーツ市場を拡大し、その収益をスポーツ環境の改善に還元し、スポーツ参画人口の拡大につなげる好循環を生むことが狙いだ。またスポーツを通じた健康増進によって、国民医療費の抑制にもつなげようと考えている。具体的な課題としては、収益の上がるスタジアムやアリーナの建設・改修、競技団体などのコンテンツホルダーの経営力強化や新ビジネスの創出、スポーツ経営人材の育成・確保、他産業との融合などによるスポーツ新市場の創出、スポーツ参画人口の拡大などがある。

ポイント

日本では公営競技やスポーツ振興くじなどの一部を除き、スポーツを対象に賭けを行うことは賭博罪に該当する違法行為です。なお、日本国内から接続し海外の合法的なオンラインスポーツベッティングサイトにアクセスして賭けを行うことも賭博罪に該当します。警察庁からも違法となる旨の警告が発せられており、合法サイトだから大丈夫とはなりません。

スポーツとしての認知度が高まるeスポーツ。市場規模の拡大に期待

eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略で、コンピューターゲームやビデオゲーム上で行われる競技のこと。2018年2月に、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主導し、日本オンラインゲーム協会(JOGA)の後援の下、日本国内の日本eスポーツ協会(JeSPA)、e-sports促進機構、日本eスポーツ連盟(JeSF)の3団体を統合、日本eスポーツ連合(JeSU)の活動がスタートした。2018年のアジア競技大会では参考競技として、2019年の茨城国体では文化プログラムの特別競技として行われている。パリ五輪での採用は見送られたが、2023年の中国・杭州アジア競技大会では正式なメダル種目として採用された。また、2024年にはサウジアラビアで史上初の「eスポーツ・ワールドカップ」が約8週間にわたって開催。賞金総額は6,000万米ドルを超え、1,500人以上の選手が参加、200万人以上の来場者と5億人もの視聴者を集めた大規模な大会となった。
なお、オリンピックを主催する国際オリンピック委員会(IOC)は、eスポーツの国際大会「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」を開催することを決定しており、2025年にサウジアラビアで初めてのeスポーツオリンピックが開催される。
「日本eスポーツ白書2023」によれば、日本のeスポーツの市場規模は2022年が125億3,600万円ながら、2025年には217億8,100億円まで拡大すると見込んでいる。伸び率の高い世界市場は2030年には67.5億米ドルに成長すると予測する調査会社もある。興行としての価値も高く、近年はゲーム関連企業だけでなく、さまざまな業界の企業がeスポーツに関わっている。

ポイント

サウジアラビアは「ビジョン2030」で、国家戦略としてゲームとeスポーツの世界的なハブになることを目指しています。また、日本のゲーム関連企業の株式へ積極的に投資していることもよく知られています。

定番商品が市場をけん引し、1兆円を超える市場規模に成長

玩具・ゲーム製品業界は、対象が乳幼児から高齢者までと幅広く、情緒を育んだり余暇を楽しく過ごしたりするための遊び道具をつくる分野。
日本玩具協会によれば、2023年度の国内玩具市場規模は、少子化が進む中でも拡大。前年度比7.1%増の1兆193億円と初めての1兆円超えとなり、前年度に続いて過去最高を記録した。別途調査しているカプセル玩具も同5.0%増の640億円となっている。
玩具の中核を占める主要10分野(市場全体からベビーカー・チャイルドシート・三輪車などの乗用関連と、雑貨、ホビーを除いた、「ゲーム(テレビゲーム関連を除く)」「カードゲーム・トレーディングカード」「ジグソーパズル」「ハイテク系トレンドトイ」「キャラクター」「のりもの玩具」「ドール・ままごと」「ぬいぐるみ」「知育・教育」「季節商品」)も前年度比8.5%増の6,883億3,500万円となった。中でも、カードゲーム・トレーディングカードは、同18.1%増の2,774億2,900万円と躍進。市場全体の27.2%を占める規模に成長している。
また、ハイテク系トレンドトイも同21.5%増の128億5,300万円、ぬいぐるみも同20.7%増の390億6,000万円と、20%以上の売上増となった。
ロングセラーブランドでは、2世代、3世代にわたって購入されている玩具もあり、少子化の中でも玩具市場のさらなる拡大可能性が感じられる。近年では、子どもから大人まで、男女にかかわらず幅広い人気を持つキャラクターも多く、あらためて人気キャラクターのポテンシャルの高さがうかがえる。2023年度に伸びが大きかったのは、いずれもキダルト層(キッズ+アダルト=子ども心を持った大人層)までをターゲットにした商品分野やインバウンド層にも人気の商品が揃った商品分野であった。
さらなる成長には、海外展開の推進に加えて、人気IP(業界関連用語参照)の活用、引き続き期待が持てる知育・教育玩具の開発、新市場の創出や年齢層のさらなる拡張、新技術の導入などが求められている。

業界関連⽤語

ヴェイパーフライネクスト

ナイキ社が発売するランニングシューズで、分厚いソールが特徴。内部にカーボンファイバーを採用し、非常に軽量でありながら頑丈、接地時の反力をロスなく推進エネルギーに転換する機能と快適な履き心地を両立しているとされる。2019年10月には非公式レースながら、マラソン世界記録歴代2位(2時間1分39秒)のキプチョゲ選手が1時間59分40秒をマークしたこともあり、厚底シューズが陸上界を席巻した。各社が初心者向けや競技者向けなど、さまざまな質の高い厚底シューズを販売しており、開発競争が激化している。ただし公式競技では種目や大会ごとに靴底の厚さに規定があり、すべての種目で厚底シューズが使えるわけではない。

アスリートマネジメント事業

これまで競技選手の多くは、単独の大学や企業などに所属するアマチュア選手が中心だったが、競技選手のプロ化が進むにつれて必要性が高まってきたのが、選手のマネジメントを行う会社の存在。今では、多くの会社がアスリートマネジメント事業を行っている。主な業務は、アスリートが目指す競技大会で最高の結果を残せるように練習環境の整備や、メディアなどでの効果的なプロモーション活動、所属団体やスポンサーとの契約交渉など多岐にわたっている。

知育玩具

幼児や児童の知能的発達を促進する玩具、または幼児や児童の学習の助けになる玩具のこと。いわゆる教材が知識を増やすために用いられるのに対し、知育玩具は、考えることや表現することを通じて、知能全般の発達を促すことを目的としている。パズルやブロックがよく知られているが、広い意味ではハイテク玩具コンピューターを知育玩具と考えることもできる。

IP

IPとは、Intellectual Property の略で、ゲームやアニメなどにおけるキャラクターなどの知的財産のこと。有力なIPを活用することで、エンターテインメント業界において幅広い事業活動が可能になる。各社は、IPを軸に最適なタイミングで商品化や事業化を行い、長期間の持続的成長を実現できるよう戦略を立案している。近年では、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の大成功が好例だ。

たまごっち

1996年11月に発売された、キーチェーン型の電子ゲームで、名前の由来は「たまご」と「ウオッチ」。社会現象になるほどの大ヒット商品となり、連日のようにテレビや新聞で取り上げられた。海外でも人気を博し、アメリカではイグノーベル賞の経済学賞を受賞している。1998年に入るとブームは沈静化したが、その後も、毎年のように新製品が発売されており、2021年11月には、たまごっち誕生25周年を記念して、「Tamagotchi Smart」が登場。「たまっちんぐアプリ」や、さまざまな人気キャラクターとのコラボなど、時代の経過に合わせた多彩な機能が搭載され、コンスタントな人気を見せている。さらに、2022年11月には、1996年発売の初代「たまごっち」と、1997年発売の「新種発見!!たまごっち」の欧米版のプログラムをそのまま転用した「Original Tamagotchi」が発売されるなど、人気が再燃している。

どんな仕事があるの︖

スポーツ業界の主な仕事

営業販売
小売店に対して商品の宣伝、営業を行う。スポーツ関連イベントのような販売促進活動の企画を立てたり、実施を任されたりすることもある。

商品管理
商品の耐久性や安全性の確認を行うほか、生産工程の維持管理を行う。

企画
新商品の企画を行う。また、イベントや販売戦略を立てることもある。

研究開発
商品の開発設計を行う。素材の基礎研究のほか、さまざまな実用化実験を行う。

玩具・ゲーム製品業界の主な仕事

マーケティング
市場をリサーチ・分析し、新商品の開発や既存商品のリニューアルを考案する。商品の魅力を消費者に伝え、購買意欲をかき立てるようキャンペーンの立案・企画なども行う。

営業
自社商品を扱う卸問屋、販売店に対して、商品の宣伝、営業を行う。

商品企画
既存の商品を改善するほか、新商品の企画を行う。消費者ニーズを探り、新しい価値を創出・提案する。

生産管理
スケジュールや計画を立て、スムーズに生産できるよう手配をする。

※原稿作成期間は2024年12⽉28⽇〜2025年2⽉28⽇です。

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