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レストラン・給食・フードサービス業界

業界の現状と展望

レストラン・給食・フードサービス業界を理解するポイント

  • 外食産業は多くの業態が好調。外国人観光客の増加もプラスに
  • 人件費や材料費、光熱費の上昇は外食産業には大きな負担
  • 外食産業ではM&A(企業の合併・買収)が加速。業界再編につながる可能性も
  • 惣菜やデリバリーも順調に売り上げを伸ばす
消費者の多様なニーズに対応

消費者の多様なニーズに対応。積極的な海外進出に乗り出す企業も

一般的に外食というのは、主に居酒屋・レストラン・ファストフード・喫茶店などのいわゆる「飲食店」や、コントラクトフードサービス(学校・病院・会社・老人施設などに提供する給食など)のことを指すが、近年は家庭で調理する内食とレストランなどで食事をする外食との中間にある中食(惣菜や弁当、宅配のピザや寿司など)といった食事を提供する全てを含める場合もある。
国内人口の減少もあり、競争・競合が一層激しくなっている最近の外食産業では、多様な消費者のニーズに対応し、幅広い層を対象としたメニューや店舗づくりが進んでいる。高齢者を意識して量やカロリーを減らす、箸で食べる洋食、分煙の徹底化などがその例である。他にも、訪日外国人に受け入れられるメニューの開発や店舗づくり、従業員の採用、キャッシュレスサービス配膳ロボットの導入などの対応も求められている。

またメタボリックシンドローム予防のダイエットメニュー、有機野菜無農薬野菜のレストランや、ベジタリアン向けの食事を提供することで、価格より安全性や食に関する「主義」を重視する層に一定の人気を博しているレストランもある。さらに、管理栄養士が食に関するアドバイスをしてくれたり、カロリー説明をしてくれたりする食堂・レストランもあり、好評を得ている。

ただし、人手不足による人件費や食材、光熱費の上昇もあり運営は厳しくなっている。そのため、海外により大きな市場を求めて進出する企業等が増えてきている。
進出先は14億の人口を抱える中国が多く、他には米国や、台湾、シンガポール、タイ、インドネシアといった東南アジアへの出店が増加している。寿司などの和食を中心に、ラーメン、カレー、ステーキ、とんかつ、コーヒーなど業種はさまざまだ。

中には現地の嗜好(しこう)に合わず撤退した企業もあるが、成功を収めている店舗も多く、引き続き海外進出を図る企業は増えそうだ。一方で、日本に出店する海外ブランドもある。

価格改定や訪日外国人客の増加もあり、堅調に推移した外食産業

日本フードサービス協会によれば、2024年の外食市場売り上げは年間を通じて前年同月を上回った。価格改定による客単価の上昇もあり、全体売り上げは前年比8.4%増となった。訪日外国人観光客の増加も売上高増に大きく貢献した。

業態別では、「ファーストフード(前年比8.1%増)」、「ファミリーレストラン(同9.5%増)」、「パブレストラン/居酒屋(同5.5%増)」、「ディナーレストラン(同6.6%増)」、「喫茶(同9.0%増)」、「その他(同7.2%増)」となっている。客数(同4.3%増)や客単価(同3.9%増)と堅調だった。
多くの外食企業は、早くからウィズコロナアフターコロナを意識した施策を進めており、テイクアウトやゴーストキッチン(業界関連用語参照)によるデリバリー事業だけでなく、店内飲食も回復。海外からの訪日観光客数も大幅に増加しており、収益拡大に寄与している。ただし、コロナ禍を経て消費行動は大きく変化し、新たに原材料費やエネルギーコストなどの高騰、人手不足といった課題も発生している。値上げが続くと客離れにつながる恐れもあり、慎重な対応が必要になっている。特に居酒屋業態は、二次会需要の減少もあり、体力のない中・小規模店はより状況が厳しい。すかいらーくHDによる資さんうどんの買収や、ワタミによる日本サブウェイの買収など、大手企業によるM&Aも増えている。

ポイント

ラーメン店の倒産が話題になっています。帝国データバンクによれば、2024年のラーメン店倒産件数は72件で過去最多でした。ラーメンは、トッピングなしで1杯当たり1000円を超えると客足が遠のくといわれます。原材料価格や人件費、スープの炊き出しにかかる光熱費といったコスト増を価格転嫁できず、業績が悪化している店舗が多いことを、倒産増加の原因にあげています。

持続的な成長を続ける惣菜市場と食品宅配(デリバリー)市場

日本惣菜協会の「2024年版惣菜白書」によれば、2023年の惣菜市場は前年比4.9%増の10兆9827億円となった。構成比が高いコンビニエンスストア(31.5%)、食料品スーパー(29.7%)、惣菜専門店(26.8%)を含む全ての業態で前年を上回っている。最も売れているのは米飯類で全体の43.9%を占める4兆8161億円を売り上げた。次いで34.9%を占める一般惣菜が3兆8299億円となった。なお、ここでいう惣菜とは、市販の弁当や惣菜など、家庭外で調理・加工され、家庭や職場・学校・屋外などに持ち帰ってすぐに(調理加熱することなく)食べられる、日持ちのしない調理済み食品のことで、調理冷凍食品、レトルト食品などは対象外となっている。

また、矢野経済研究所の調査によれば、2022年度の食品宅配市場(在宅配食サービス、食材(惣菜)宅配、宅配ピザ、宅配寿司、外食チェーン・ファストフード宅配、牛乳宅配、生協(個配)、ネットスーパーの主要8分野の合計)は前年度比2.3%増の2兆5363億円と推計している。コロナ禍での急拡大からの反動減や少子高齢化の影響などが懸念される中でも、日常生活に定着し順調に成長を持続していると指摘。中でもミールキット(業界関連用語参照)の需要が拡大しており、各社はさまざまなユーザーニーズに対応できる商品力強化に注力している。

ポイント

外食チェーンの店舗には、直営店とFC(フランチャイズ)店があります。直営店は運営企業が直接運営する形態の店舗で、人件費や食材費などの経費は全て運営企業が負担します。FC店は加盟店とも呼ばれ、人件費や食材費などはFC店が負担しますが、売り上げの一部をロイヤリティーとして運営企業に支払うことで、チェーン店のブランドを使用して営業できます。一般的に、FC店の方が利益率は高く、運営企業にとっては少ない資本で事業展開できるメリットがあります。

業界関連⽤語

フードデリバリー

外食産業におけるデリバリーの歴史は長く、「出前」や「仕出し」といったサービスは、江戸時代にまでさかのぼる。これまでは、個別の店舗やチェーン店が独自にデリバリーを行っていたが、近年は「Uber Eats」や「出前館」などに代表される配達代行業者の登場や、デリバリーサービス専用のポータルサイトの成長などにより、さまざまな店舗がデリバリーを行えるようになった。元々、成長過程にあった市場だが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、急成長した。

FLコスト

FLコストとは、F=Food(食材費などの材料費)、L=Labor(人件費)を足した費用のことで、FL比率は売上高に占めるFLコストの割合。この比率は業種によって異なるが、外食産業では、FL比率60%が標準といわれている。外食産業では業態によっては食材費が高い飲食店もあり、人手不足による人件費増も負担となっている。各社は営業時間の短縮や作業の簡略化、自動化などによって利益率向上を目指している。

熟成肉

ものによっては料理を一晩寝かせるとおいしくなるといわれるが、肉や魚も同様。熟成(エイジング)といわれ、寝かせることで、肉の中に含まれる酵素によってたんぱく質が分解されて、うまみ成分が増えることがその理由。
肉は熟成が進むと、骨からのうまみも加わり、さらに水分も減っていくので、うまみと香りが凝縮。肉質が柔らかく芳醇(ほうじゅん)な香りとなる。
脂のうまみより、肉本来の味わいを楽しみたいという層も多く、人気が高まっている。

携帯・スマートフォンクーポン

ファストフード店などの飲食店が顧客の囲い込み、マーケティングなどの目的で発行している携帯電話・スマートフォン専用のクーポン。最近は、スマートフォンの普及に合わせて、多くの外食チェーン店などがスマートフォン用のアプリも無料で配布している。
最新メニューや店舗情報がチェックできるだけでなく、割引率の高い時間・枚数限定の「時限クーポン」もあり人気を集めている。

植物由来のたんぱく質食材

「植物肉」とは、大豆などの植物性の材料を使って作られた人工肉で、ハンバーグやハム、ソーセージなどがある。一方、動物から採取した細胞を培養し固めることで作られるのが「培養肉」。安全基準や既存の畜産業との競合といった論点も多いが、2040年には、世界の食肉市場の6割が「培養肉」と植物由来の「代替肉」になり、それら新しいタイプの肉の市場規模は69兆円になると試算しているコンサルティング会社もある。
さらに、日本ハムは、大豆などの植物に由来するシーフードの販売を発表した。同社は、これまでも植物由来のハムやソーセージを展開していたが、こうした技術を活用。本物の魚に近い味わいや食感を実現した。国内では魚介類の消費量は減少傾向にあるが、世界的には人口の増加や新興国の経済発展もあり、拡大傾向にある。

ゴーストキッチン

厨房はあるが、店内に飲食できるスペースがない、宅配や持ち帰りサービスに特化した業態の店舗のこと。料理はデリバリー代行業者などを利用して注文した顧客に届ける。コロナ禍で増加傾向にあり、ゴーストレストランやクラウドキッチン、バーチャルレストランなどと呼ばれることもある。

ビーガン(ヴィーガン)

日本では、「菜食主義者」と呼ばれるベジタリアン。日本ベジタリアン協会のサイトによれば、英国ベジタリアン協会発足の1847年に初めて使われた言葉で、「健全な、新鮮な、元気のある」という意味のラテン語「vegetus」 に由来するとしている。19世紀に入って、肉や魚は食べずに卵や乳類の摂食は本人の選択により、穀物・野菜・豆類などの植物性食品を中心にした食生活を行う運動を展開。これがいわゆる近代ベジタリアン運動の始まりであるとしている。
いまでは、ベジタリアンの定義は流動的で、地域や宗教、主義主張、ライフスタイルなどによって異なっており、ラクト・ベジタリアン(植物性食品に加えて、乳・乳製品などは食べる)、ラクト・オボ・ベジタリアン(植物性食品に加えて、乳や乳製品、卵は食べる)などさまざまだ。ビーガンピュア・ベジタリアンとも)は、「純粋菜食主義者」と呼ばれ、肉、卵、魚介類に加えてそれらの加工品などの動物性食品を一切食べず、野菜だけを食べて生活している。中には、シルクやウール、皮革などの動物製品を身に着けない人もいる。

ミールキット

ミールキットとは、レシピと必要な人数分の食材がセットされた商品。中でも、カット済みの野菜や肉と調味料などがセットされたミールキットが人気を集めている。専門店だけでなく、ネットスーパーや生協なども参入し、品ぞろえも充実、市場が拡大している。

どんな仕事があるの︖

レストラン・給食・フードサービス業界の主な仕事

商品・メニュー開発
時代のトレンドを読んで、より売れる商品やメニューの開発に当たる。

店舗開発・マーチャンダイザー
出店計画の立案、出店予定地についてのリサーチ、店舗形態や規模などを検討する。

バイヤー
商品の原材料の買い付けを行う。時には生産者と共同で原材料の開発なども行う。

スーパーバイザー
複数の店舗を担当し、円滑な店舗経営のためのアドバイスや指導を行う。

店長
店舗を運営する現場の責任者。売り上げやスタッフの管理、育成などに当たる。

管理栄養士
栄養関連の国家資格で、四年制管理栄養士施設を卒業する、もしくは栄養士養成施設を卒業し、実務経験を積むと受験資格が与えられる。
学校、病院等だけでなく、近年は消費者の健康志向の高まりもあり、外食産業やスポーツクラブでメニュー開発や栄養指導をするなど、活躍の場は広がっている。

※原稿作成期間は2024年12⽉28⽇〜2025年2⽉28⽇です。

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