「現在」が分かる!「未来」が見える! 業界地図

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次世代燃料の業界地図

政府による脱炭素化政策もあり、化石以外を原料とする次世代燃料の開発が相次いでいる。実験段階のものの実用化が進んでいる。

※掲載企業は売上や総資産額などに加え、業界のトピックを踏まえてマイナビ編集部が選定した一部の企業となります。また掲載内容に関する基準はこちらよりご確認ください。

水素・アンモニア

ENEOSホールディングス

JFEホールディングス

合成燃料・合成メタン

次世代燃料業界の「現在」と「未来」

水素原料は輸入が有力視される。次世代バイオ燃料の原料多様化が進む

石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料は燃焼させるとCO₂(二酸化炭素)を排出するが、燃焼時にCO₂を排出しないのが次世代燃料。大きく分けると、①水素・アンモニア、②次世代バイオ燃料、③合成燃料・合成メタンが主となり、開発が進んでいる。

水素・アンモニアは、自動車、製鉄、発電用燃料として開発が進む。燃料電池車(FCV)が一部で実用化されているが、水素を直接燃料とする水素自動車もある。製鉄では、鉄鉱石を還元するのにコークスではなく、水素で還元する。すでに実験が始まっており、CO₂削減率は50%で、残りは回収するため実質ゼロとなる。水素は石炭などの化石燃料を原料に海外で製造したものを液化して輸送船で輸入する方式が有力視されている。

一方、アンモニアは窒素と水素を高温・高圧で反応させて製造する。すでに化学肥料や火薬、樹脂などで利用されており、既存のサプライチェーンを利用可能。水素と比べて安価なため、当面、石炭火力発電に20%程度混入させる。28年のできるだけ早期にアンモニアを船舶用燃料として商業運航する計画もある。

バイオ燃料はトウモロコシや小麦などを原料として実用化されているが、草や樹木、古紙など食料と競合しない原料を使うのが次世代バイオ燃料。電気に置き換えが困難な航空機など長距離輸送への適用が考えられている。航空燃料では、SAF(Sustainable Aviation Fuel)の技術開発も進む。廃食用油だけでなく、微細藻類や動物性油脂など原料の多様化が進む。

合成燃料、水素などを開発。2030年代前半の商用化を計画

合成燃料は、水素とCO₂を合成させて製造する。水素は水を電気分解して生成し、CO₂は工場や発電所などから排出されたものを分離・回収する。エネルギー密度が高い液体で、ガソリンや軽油の代替となる。合成メタンを製造すれば、都市ガスなどの代替となる。いずれも既存の流通網を利用できる点がメリット。政府は2022年9月に「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会」を発足させ、商用化時期を従来の40年から30年代前半に前倒しし、25年の製造開始を打ち出した。都市ガス大手は、30年に合成メタンを1%混入する計画だ。

非化石燃料の電源を59%に。コスト低減が最大の課題

国内のCO₂排出量は、発電が約4割と大きい。このため、第6次エネルギー基本計画では電源構成に占める非化石燃料の割合を19年度の24%から、30年度には59%に高める目標で、次世代燃料が果たす役割は大きい。最大の課題はコスト高と安定した供給だ。水素の製造コストは現在、1リットル当たり700円程度で、このうち9割が調達コスト。海外で大量に製造しタンカーで輸入すれば同300円程度まで下がるとの試算もあり、ガソリン(1リットル170円程度)と競合できる可能性も高い。普及のためのインフラ整備も必要だ。例えば、国は30年にFCV80万台、水素供給ステーションは全国で1,000カ所、燃料電池バス1,200台の目標を掲げている。コスト低減だけでなく、安定した需要による価格低下も不可欠といえる。

データで見る業界のポイント

第6次エネルギー基本計画の電源構成

第6次エネルギー基本計画の電源構成
「カーボンニュートラル社会実現に向けた次世代燃料のあり方について」経済産業省 資源エネルギー庁資源・燃料部石油精製備蓄課 2023年

※掲載内容の基準について

  • 掲載企業は売上高や総資産額などに加え、業界のトピックを踏まえてマイナビ編集部が選定した一部の企業となります。業界の分類は、マイナビ2027の業種分類に沿っています。各社の直近の決算に基づき、該当する分野の主に売上高の大きい順に企業を掲載しています(矢印などで示す関係企業や売上非公開の企業については順不同)。
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  • 出資関係は、上場会社については提出が義務付けられている直近の「有価証券報告書」に沿っています。非上場企業はこれまでに業界団体や企業から公表されている文書などの数字を基にしています。「有価証券報告書」とは、企業の事業内容や、従業員、設備、財務諸表、子会社や関連会社、株主など多くの情報が掲載されており、金融庁のサイト「EDINET」で企業ごとに検索できます。
  • 原稿作成期間は2024年7月1日から10月31日です。

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