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住宅・インテリア業界

業界の現状と展望

新築だけでなくストックビジネスにも注力

住宅メーカーがさまざまな工法で木造や鉄骨を使った住宅を組み立てる住宅業界。全国展開する大手メーカーから地元に根差した工務店まで、規模の異なる数々の企業がある。
これまで住宅業界では新築をメインとしていたが、居住者を中心としたリフォームリノベーションなどに焦点を当てたストックビジネスにも注目が集まっている。なお、国土交通省の定義では、「リフォーム=新築時の目論見に近づく様に復元する(修繕)」、「リノベーション=新築時の目論見とは違う次元に改修する(改修)」とされている。

他方、カーテンや床材など住宅の居住空間を快適にするために欠かせない商品を取り扱うのがインテリア業界。居住空間内すべてが商品となり、天井や壁、床などの部位、リビング、キッチン、ダイニングなどの空間、電気や厨房、衛生設備、防犯設備などの付帯設備に加えて、門、扉、塀、物置、フェンスなど、住宅の外回りの設備(エクステリア)もあり、多岐にわたっている。

近年では消費者の住環境に対する関心の高まりやライフスタイルの多様化から、個人のこだわりや生き方、趣味嗜好などを反映させた「自分らしいライフスタイル」をつくり出していく「ホームファッション」を取り入れる動きが広がりつつある。必要だから買う「モノ消費時代」から、自己表現のためにお金をかける「コト消費時代」に移り変わっていると言える。消費者の多種多様なニーズに応えるための戦略が必要となっており、誰に何をどのように提供するかといったマーケティング能力が重要視されている。

矢野経済研究所の調査によれば、2020年の住宅リフォーム市場の規模は、前年とほぼ横ばいの6兆5,298億円と推計。分野別では、「増改築に関わる費用」(10㎡超+10㎡以下増改築工事)が前年比11.5%減、「設備修繕・維持管理費」が同0.3%増、「家具・インテリア等」が同7.6%増となった。コロナ禍で、一時的に減少したものの、在宅時間が長くなり住空間改善への支出が増加したことで横ばいを保った。こうした住環境への関心がリフォーム需要の底上げにつながれば、2021年以降も堅調な推移が期待できる。

また、在宅勤務が浸透する中で、住むことへの意識の変化も見られ、都心からより広い郊外の一戸建て住宅を求める動きも見られた。注文住宅では、テレワーク用の間取りや防音設備、温度変化を抑えつつ換気や空気洗浄を行う次世代換気システムなどの、コロナ禍ならではの付加価値へのニーズも高かった。さらに進んで、最新のIoTと住宅設備が連携するスマートハウス市場拡大への期待もある。

住宅販売もリモートで

コロナ禍で、多くの住宅展示場は開催を自粛。リモートによる対応に転じた企業も多く、VR(仮想現実)を活用したバーチャル住宅展示場も。システムは数年前から登場していたが、コロナ禍においてより一層その技術が注目されている。
VRを活用すれば、実際の住宅が未完成でも、画面上で住宅をイメージすることができ、建具や床材、壁紙、家具などを自由に選んで仮想空間をつくることも可能だ。
対面での打ち合わせや現地まで行く手間が省けるといったメリットがある反面、現物を見ないと話が進まないものもあり、手軽さと機能のさらなる拡充が求められている。

住宅業界の2022年問題とウッドショック

日本の都市部には住宅地にありながら農地として取り扱われる「生産緑地」といわれる土地があり、土地の所有者は30年間農業を営むことが義務付けられる一方で、固定資産税相続税などで大きく優遇されている。1992年に制定されたこの制度によって生まれた「生産緑地」は、2022年にその期限を迎える。

もしこうした土地が大量に売却されると、需給バランスが崩れて地価が大幅に低下する可能性が指摘されている。これが住宅業界の2022年問題だ。政府も対策として「改正都市緑地法」の施行を行っており、実際にその時期が来てみないとどうなるかはわからないが、それほど影響はないのではという見通しが強いようだ。

一方のウッドショックとは、2021年初めから、アメリカの旺盛な住宅需要を背景に、世界的に木材価格が高騰した現象のこと。在宅勤務の普及や人口の増加、住宅ローン金利の低下などの要因が重なり、住宅ブームが起こったことがきっかけだ。もともとアメリカでは木材を多用する住宅が多いことに加えて、脱炭素の意識からも木材建築が人気を集めたことも影響している。日本でも木材価格が高騰し、住宅価格も一棟あたり数十万円から数百万単位の値上がりとなった。
木材価格の今後を見通すことは難しく、沈静化まではいましばらく時間がかかりそうという考えが大勢だ。国内には豊かな森林資源があるが、林道の未整備や人材不足もあり、即座に供給を増やせない状況にあり、安全保障上の課題の一つとしても長期的な林業体制の構築が求められそうだ。

業界関連⽤語

ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

資源エネルギー庁によれば、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の1次エネルギー消費量の収支がゼロ(使うエネルギー≦創るエネルギー)とすることを目指した住宅」のこと。政府では、「住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」としている。

パワービルダー

パワービルダーとは、床面積30坪程度の土地付き一戸建て住宅を大量に低価格(大手が供給する半分程度)で販売する企業を示す和製英語で、近年急速に業績を伸ばしている。売れ残りのリスクを減らすため、1〜15棟ほどの小規模な分譲物件を中心に取り扱うが、販売件数では大手をしのぐ勢いを見せている。

 

レジリエンス住宅

レジリエンスとは回復力や耐久力を表す用語で、レジリエンス住宅とは、自然災害などによる非常事態が起こっても、速やかに回復できる強靭さを持った住宅のことを言う。具体的には高い耐久性や水密性に加えて、食料や日用品の備蓄スペース、雨水タンク、太陽光発電と蓄電池などの様々な災害対応設備を備え、ライフラインが遮断されても一定期間生活できるよう設計されている。

ペット共生住宅

少子高齢化が進んでいる今では、ペットは単なる愛玩動物ではなく、家族の一員ともいえる存在。そのため、ペットとともに家族全員が気持ちよく暮らせる住居へのニーズが高まっている。新築市場でもリフォーム市場でも、「ペット共生」は重要なポイントになりつつある。

シェアハウス

1軒の家を複数の人と共有して住めるようにした賃貸住宅。自分の部屋とは別に、共同利用できる共有スペースとしてラウンジやキッチン、シャワー、トイレといった設備がある。中には、共有スペースとしてシアタールームフィットネスルーム防音室などを備えた物件もある。一方で、シェアハウス運営会社の破産により投資家が損失を抱えたり、銀行が自己資金の少ない会社員をオーナーにすべく不正な融資を行ったりする事件も起こっている。

どんな仕事があるの︖

住宅・インテリア業界の主な仕事

・営業
住まいづくりをトータルでサポートする、顧客のパートナー的存在。顧客に対して住宅のプランを提案するほか、顧客の要望を設計部門や施工部門に伝える、住宅が完成した後のアフターフォローなど、幅広い仕事を担う。

・設計
顧客の住まいに対する要望を具体的にプランニングしていく仕事。現場の調査を行い、設計図や見積もりを作成し、建築プランを提案。工事開始後は設計通りに施工が行われているかをチェックする。安全性などを確保しながら、顧客の理想を形にする仕事。

・商品開発・研究開発
時代性や社会情勢など、あらゆる方向から消費者のニーズを探り、住宅の新しいプランを企画するのが商品開発の仕事。研究開発は、住宅の品質向上を目指し、建材や構造などを研究、開発する。

・リフォームアドバイザー
より快適な暮らしが実現できるよう、顧客の生活スタイルに合わせ、リフォームプランを提案。

・ハウジングアドバイザー
住宅展示場での受付や案内、資料作成、顧客相談の対応などを担う。

・インテリアコーディネーター
壁紙や天井材などの内装、カーテンや照明器具、家具など、インテリアに関するあらゆる要素をコーディネートし、顧客に提案。顧客のニーズに合わせて、快適で機能的な住まい作りを目指す。

・キッチンスペシャリスト
顧客の要望に合わせて、よりよいキッチンづくりを提案。ライフスタイルや家族構成、体のサイズなど、いろいろな要素を考えながら、調理のしやすさ、安全性、インテリア性の優れたキッチン空間を考える。公益社団法人インテリア産業協会が資格試験を実施している。

・照明コンサルタント
一般の住宅をはじめ、店舗やホテル、オフィスなど、場所や用途に応じて快適な照明プランを立てる、もしくはアドバイスする。

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住宅・インテリア業界の企業情報

※原稿作成期間は2021年12⽉23⽇〜2022年2⽉28⽇です。

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