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芸能・映画・音楽業界

業界の現状と展望

新しいメディアを上手に取り込むことが成長のカギ

新しいメディアや最新のデジタル技術を上手に取り込むことが成長のカギ

古くからテレビ・ラジオ・出版などのマスコミ業界との関係が強い芸能・映画・音楽業界だが、これらの業界でもインターネットやSNS、パソコンやスマートフォン、タブレット端末といった新しいメディアやツールとの連携による、さまざまな変化がもたらされている。こうした新しいメディアをいかに上手に取り込んでいくかが、生き残りと成長のカギとなっている。
また、近年は映画業界でもAIを活用する事例が増えており、脚本執筆やCGの品質向上といった制作現場はもとより、過去作品のさまざまなデータ分析から、新作映画の市場動向や収益予想を行うなど、いろんな場面でAIが活用され始めている。

2020年を底に回復が続く映画業界

新作映画の企画立案から脚本作成、出演者への交渉などを行うのが「映画制作会社」。
完成した作品の権利を買い取って映画館に提供したり宣伝したりするのが「映画配給会社」。そして観客に向けて上映するのが「映画館運営会社」だ。1本の映画が観客の元に届くまでには、数え切れないほどたくさんの人たちがかかわっている。

一般社団法人日本映画製作者連盟の「日本映画産業統計」によると、2023年の国内興行収入は前年比3.9%増の2,214億8,200万円、入場者数も同2.3%増の1億5,554万人と増加した。邦画・洋画別では、邦画の公開本数は676本(2022年は634本)、洋画は556本(同509本)と、いずれも増加。興行収入は、邦画は前年比1.1%増の1,481億8,100万円。洋画は同10.2%増の733億100万円となった。

邦画では、『THE FIRST SLAM DUNK』が158.7億円、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が138.8億円と、アニメの2作品が100億円を超える興行収入を記録した。また、『君たちはどう生きるか』が88.4億円、『キングダム 運命の炎』が56.0億円、『ゴジラ-1.0』が55.9億円と、3作品が50億円超えとなり、上位5作品のうち3作品をアニメが占めた。
洋画では、世界中で大ヒットとなった『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が140.2億円と、日本でも興行収入が100億円を超えた。次いで、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』が54.3億円、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(公開は2022年12月)が43.1億円、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』が38.3億円、『リトル・マーメイド』が34.0億円だった。
2022年にV字回復をはたした映画業界だが、公開作品にも恵まれ2023年も堅調に推移した。
なお、映画館スクリーン数は3,653と前年から19増となった。

順調な有料音楽配信売り上げ。アナログレコードも人気が継続

音楽業界には、CDやDVDの制作・宣伝を行う「レコード会社」を中心に、新曲のジャケットやプロモーションビデオなどの制作を手掛ける「制作会社」や、アーティストのマネジメントを行う「マネジメント会社」、ライブツアーやコンサートを企画する「イベント会社」などがある。
一般社団法人 日本レコード協会の「日本のレコード産業2023」によれば、2022年の音楽ソフト(オーディオレコード+音楽ビデオ)の総生産数は前年比3%減の1億4,653万枚・巻となったものの、金額は同4%増の2,023億円と2019年以来の2,000億円超えとなった。
オーディオレコードでは、CDアルバムが数量で同6%減の6,697万枚、金額で同3%増の974億円、CDシングルが数量で同5%増の3,395万枚、金額で同12%増の324億円となった。近年注目を浴びているアナログディスクの数量は、前年比12%増の213万枚と1999年の299万枚以来の200万枚超えとなった。金額でも同11%増の43億円を記録し、こちらは1989年の71億円以来の40億円超えとなった。
音楽配信の売上は年々増加しており、2022年は前年比17%増の1,050億円と5年連続の2桁増となり、2005年の統計開始以来初の1,000億円超えを記録した。ダウンロード数量は、前年比19%減の4,895万ダウンロード、売上も同19%減の114億円とふるわなかったが、ストリーミングが引き続き好調で、売上は同25%増の928億円と1,000億円が目前に迫ってきた。ストリーミングは音楽配信の売上全体で9割に迫るシェアを獲得している。

有料音楽配信で規模を拡大しているのは、定額で音楽が聴き放題になる「サブスクリプションサービス」。従来は、1曲もしくはアルバム1枚単位で音楽を購入していたが、サブスクリプションサービスでは1枚のアルバムを買うよりも安く、数千万という楽曲を聴くことができる。さらにダウンロードした曲はクラウドに保存できるサービスを提供しているところもある。

「Apple Music」や「Google Play Music」、「LINE MUSIC」など、日本でもおなじみの企業に加えて、世界で1億人以上のユーザーを抱える世界最大手の「Spotify(スポティファイ)」が日本でのサービスを開始したことも、プラスに作用している。

また、中国発の動画共有サービスであるTikTokで楽曲の一部を聴いて気に入り、SNSで拡散、サブスクリプションサービスでフルコーラスを聴くといった、これまでとは違う形でのヒットの仕方も生まれた。今後もこうしたデジタル音楽市場から、新たなヒット曲やミュージシャンが生まれる可能性は高く、アーティストにとってはライブやSNS、ユーチューブなど多方面での活動がチャンスにつながる。音楽ビジネスのあり方や構造も変化しそうだ。
なお、事務所や特定のレーベルと契約していない個人でもSpotifyやApple Musicなどの音楽配信サービス会社で、自分が作曲した曲を配信することが可能だ。通常は、TuneCoreやBIG UP!、Eggs Pass(旧TOWER CLOUD)といった国内外の音楽配信代行サービス会社を通じて行う。中には著作権管理サービスを提供する会社もある。

音楽業界でもAIの活用が進む

近年は音楽分野においてもAIを活用する場面が増えている。話題になった、故人である美空ひばりさんの“新曲ライブ”を実現するNHKのプロジェクトでは、さまざまな最新のAI技術を採用。重要なボーカルパートには、ヤマハの歌声合成技術「VOCALOID:AI™」が活用された。
さらに、AIで音楽を生成するサービスやソフトも登場し、話題になっている。

業界関連⽤語

レコード

CDの登場で、過去の遺物として姿を消したかのように見えたレコードが、近年人気になっている。有名アーティストの協力や、名盤といわれた録音が再発売、さらには新録音のレコードも登場している。
アナログならではの音質もあり、懐かしさで購入するオールドファンだけでなく、レコードになじみのなかった若い音楽ファンも注目し、売上を伸ばしている。レコードを再生するには、専用のレコードプレーヤーやアンプが必要だが、アンプやスピーカーを内蔵したプレーヤーなども販売され、レコード人気を支えている。

音楽出版社

作曲家や作詞家などから音楽作品の著作権管理などの業務を委託された音楽著作権管理会社で、著作印税の一部を管理料として受け取る。楽譜出版社がこうした業務を行っていたことから音楽出版社と呼ばれるが、いまでは、放送局、レコード会社、芸能プロダクションなどさまざまな系列の会社がある。

多くの場合、JASRACなどと契約を締結し所有作品を預け、JASRACが作品の著作権管理を行う。JASRACは利用者に許諾を出し使用料を受領、それを音楽出版社に支払い、さらにそのお金が作曲家や作詞家に分配される。

コンテンツビジネス

コンテンツとは、映画や音楽、マンガ、アニメなどの制作物のこと。
例えば映画作品が映画配給会社を通じて上映された後、DVD化されたりテレビ放映されたりする(二次使用)ことで、新たな利益が生まれる。ほかにもアニメのキャラクターグッズの販売やキャラクターを使った広告宣伝などもコンテンツビジネスだ。
コンテンツビジネスは、ほかのさまざまな産業や文化とのかかわりが深いため、経済波及効果が高い。

シネマコンプレックス

入り口は一つだが、施設内に100席から300席くらいの座席を備えた上映設備が、7~10室(スクリーン)ほど並んでおり、観客が好みに合わせて作品を選択できる複合型映画館。
映画館側としては入場者数によって、上映するスクリーンを入れ替えたり、同じスクリーンで時間帯を変えて複数のタイトルを上映したりできるなどのメリットがある。

どんな仕事があるの︖

芸能・音楽業界の主な仕事

・宣伝
生み出された作品をユーザーに宣伝するために、マスメディアへのプロモーション、販売促進物の製作、ライブや公開録音など効果的な宣伝手法の立案・実行を担当する。

・制作
市場動向などの情報を収集し、新譜のコンセプト作成やプランニング、新人の開拓やアーティストの育成、さらに実際の音源制作、プロモーション業務の支援などを行う。

映画業界の主な仕事

・宣伝
洋画作品の邦題やキャッチコピーの作成、宣伝方法のプランニング、イベントの企画立案、パンフレット製作、メディアの広告展開などを行う。

・制作
企画から脚本、撮影、編集まで映画制作の全工程に携わる。最近では映画会社が自社で制作するより、制作プロダクションが手掛けることが多い。

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芸能・映画・音楽業界の企業情報

※原稿作成期間は2023年12⽉28⽇〜2024年2⽉29⽇です。

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