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信金・労金・信組業界

業界の現状と展望

代表的な3業務とは

信用金庫(信金)・労働金庫(労金)・信用組合(信組)は、国内の金融機関の一つ 。融資先や活動エリアなどの制限はあるが、基本的な業務は銀行と同じ。預金という形で企業や個人からお金を預かり、それを運用することで利息を預金者に提供する。預かったお金は個人や企業に貸し出すことで、利息を得る。
また、振り込み、代金取立、手形や小切手による支払いの決済、公共料金・クレジットカード利用料金などの口座振替も行う。

銀行との違いは組織形態と活動エリア

基本的な業務は銀行と変わらないが、大きく異なるのが、組織形態と活動エリア。銀行は株式会社だが、信用金庫・労働金庫・信用組合はそれぞれが会員の出資による協同組織。株式会社である銀行では、出資者である株主の利益を優先することになるが、信用金庫・労働金庫・信用組合では地域社会や出資者である組合員(会員)の利益を第一に考えて運営される。

地域経済に密着した金融機関には、地銀や第二地銀もあるが、信用金庫・信用組合では、より地域に密着し、地元企業や住民の実情に合ったきめ細かいサービスを行い、地元の発展に寄与するアドバイザーとしての役割も期待されている。

信用金庫は信用金庫法に規定があり、融資が受けられる会員(出資者)や、活動エリアは一定地域に制限されている。信用組合は、中小企業等協同組合法に規定があり、組合員の資格、活動エリアは組合員の特性によって地域・業域・職域で制限がある。労働金庫は、労働金庫法に規定があり、労働組合生活協同組合などが会員になっている。
必ずしも小規模とは限らず、中には、1兆円を超える預金残高で地方銀行と肩を並べる信用金庫もある。

信金・労金・信組は、コロナ禍での中小企業や個人事業主への資金繰りで存在感を発揮。特に実質無利子・無担保融資では金額・件数とも多くを占め、新規の貸出残高が伸びた。ただし地域経済の活性化が進まなければ、経営環境は依然厳しいままと言わざるを得ない。そのため、大学や自治体と連携し、地域の活性化に結び付ける取り組みを始めた信金・労金・信組もある。また、2021年5月には改正金融機能強化法(業界関連用語参照)が公布され、地域の金融機関の合併や統合を支援する制度も整った。業務範囲の拡大や協調融資を狙って、地方銀行と信用金庫の協業が加速した。2023年11月には、新潟県のはばたき信用組合と三條信用組合、新潟鉄道信用組合が合併し、新しいはばたき信用組合としてスタートしている。
コロナ禍で企業の資金繰りを支援するために行っていた、無利子・無担保の融資(いわゆるゼロゼロ融資)の返済がすでにスタート。貸し出しには、信用保証協会の保証があるが、倒産や返済が滞るケースの増加が予想されている。
そのため、政府は新たな借換保証制度(コロナ借換保証)を創設し、民間ゼロゼロ融資などからの借り換えや、事業再構築などの前向き投資に必要な新たな資金需要にも対応している。信金・労金・信組でも、追加融資や返済軽減、借り換えなどの対策を検討する場面がありそうだ。

業界関連⽤語

インターバンク市場

銀行間取引市場ともいわれ、銀行などの金融機関だけが参加できる。外国為替を対象とする市場や短期資金を取引する市場、手形市場などがある。取引所があるわけでなく、電話やネットワークを通じて取引が行われる。中でも、短期資金を取引する市場は、銀行が日々の業務で発生する資金の過不足を相互に調整し合う形で生まれ、コール市場とも呼ばれている。

協同組織金融機関

信用組合、農協、漁協、労働金庫などの金融機関は株式会社形態ではなく、協同組合形式を取っている。協同組合形式とは、地域や職域などが同じ人や団体、事業体が資金を出し合って経営するもの。会員、組合員の相互扶助を目的とする非営利金融機関ではあるが、利益を出さなくてよいというわけではなく、住宅ローン、投資信託販売など銀行と同じサービスに力を入れ利益を出している。

リバースモーゲージ

自宅(持ち家)を担保にし、その家に住み続けながら金融機関から融資を受けられる制度。存命中は融資の返済を行う必要はなく、契約者が死亡した際に担保である自宅を売却するなどして返済する。自宅に住み続けながら融資が受けられ、融資を受けたお金を生活費以外の旅行やリフォーム費用、老人ホームの入居一時金に充てることもできる。
ただし、対象物件についてはそれぞれの金融機関が独自で条件を設定している。

動産担保融資(ABL=Asset Based Lending)

借り手の事業活動に着目し、在庫商品や原材料、売掛債権などを担保にして資金を貸し出す制度。不動産を担保にした融資と異なり、畜産農家では子牛を、水産加工業者では冷凍冷蔵ケースを、他にもワインや野菜など幅広く担保にして融資が実行されている。
不動産を持っていなかったり、信用力が乏しい中小企業では融資を受けにくかったりしたが、担保として注目されてこなかった動産を活用することで、資金調達方法が広がり、地域活性化の手段として普及が進んでいる。

改正金融機能強化法

金融機能強化法とは、資金に余裕のない金融機関に政府が公的資金を投入する手続きを定めた法律で、2004年に成立。2021年5月の改正では、既存の銀行法や金融商品取引法などの改正も伴っており、各金融機関は業務領域の大幅な拡大が可能となった。また、人口減少地域においてアフターコロナの地域経済の回復・再生を支えるための金融機能を維持するため、合併・経営統合などを行う地方銀行などは、一定の条件の下で交付金を受け取ることもできるようになった。

地方銀行と信用金庫の相乗り

近年、地方銀行と信用金庫との協業が進んでおり、店舗の相乗りをする事例が増えている。具体的には、ATMを相互に無料で開放する、協業するいずれか一方の店舗を閉鎖しもう一方の店舗に共同窓口を設置する、投資信託の販売キャンペーンを共催するなどの工夫を凝らしている。

手形・小切手の電子化

手形や小切手による決済は、銀行の基本業務の一つだが、政府による電子化推進で、紙の手形小切手はその役割を終えようとしている。電子化することで、手形や小切手の振り出しや郵送、領収書の発行、手形小切手の管理・保管などの事務負荷が軽減され、印紙代も不要になる。政府では、2026年までに約束手形の利用廃止と小切手の電子的決済サービスへの移行を強力に推進しており、金融機関のみならず支払企業と受取企業にも対応が求められている。

どんな仕事があるの︖

信金・労金・信組業界の主な仕事

営業
個人を対象としたリテール営業と、地元の企業などを対象にした法人営業がある。預金や融資、資産運用などの相談に乗り、金融知識を生かした情報提供や顧客のニーズに沿った提案を行う。

営業支援
店舗内で、口座開設や預金、融資の相談、税金の収納、振り込みなど顧客のさまざまな要望や相談に対応する仕事。また、投資信託や保険商品、外貨預金などの金融サービス商品の提案を行うこともある。

融資
融資先が、融資条件にかなっているかなどの審査を行う。審査のための書類から融資の資格をクリアしているかを正しく判断するために、情報収集能力が求められる。

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信金・労金・信組業界の企業情報

※原稿作成期間は2023年12⽉28⽇〜2024年2⽉29⽇です。

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