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アパレル・服飾関連業界

業界の現状と展望

アパレル業界にも原材料費増や円安の影響が。SDGsを意識した取組みにも注力

アパレル業界では、紳士服や婦人服、インナーウエアに加えて、靴・かばんなどを、着心地や機能性などを考慮し開発・製造している。これらを総合的に扱う「総合アパレル」、婦人服のみを扱う「婦人アパレル」、紳士服の中でも特にシャツのみを扱う「シャツメーカー」などがある。

こうした商品は、自社店舗や百貨店、専門店、ネット通販などで販売される。アパレルメーカーの多くは、衣料品の企画を行い、その企画に従ってテキスタイル会社に生地などを発注、縫製は縫製会社に依頼し、それを買い取って販売する。海外有名ブランドとライセンス契約を結び、そのブランドが企画した製品の生産手配を行い、販売するケースもある。

最近は安価な海外ブランドの進出や輸入製品の急増のほか、衣料品製造から販売までを一括して行い高品質な製品を安く提供する「ファストファッション」が激しい競争をしている。また生産も、人件費の上昇やサプライチェーンなどの課題もあり、バングラデシュベトナムなどへ移管する動きも出ている。
ただし、綿花などの原材料費増や円安による輸入価格の上昇もあり、値上げを実施するアパレルメーカーも増えている。各社は、価格に見合った価値を提供できるバランスの取れた商品開発がさらに重要となっている。加えて、世界的な環境意識への高まりに対応するため、アップサイクルに力を入れるアパレルメーカーも増えている。具体的には、デッドストックや生産段階で生じる布切れ、古着などを回収、リサイクル(リメイク)して新たな価値のある商品を開発し販売。独自のアップサイクルブランドとして人気が高まっている商品もある。

アパレル業界の収益構造

ひと昔前のアパレル業界は、アパレルメーカーが商品を企画し生産、専門商社や問屋が商品を流通させ、全国の小売店で消費者へ販売するという形態が一般的だった。しかし、ZARAやH&M、ユニクロといったSPA(製造小売業:業界関連用語参照)の企業が登場、アパレル業界に大きな変化をもたらした。他社との差別化が難しく価格競争になりがちで、需給変動のリスクをすべて負うといったマイナス面もあるが、商品企画から製造、流通、販売までの工程を一貫して行うことで流通段階における大幅なコストダウンを実現。スムーズな意思決定を可能にするといったプラス面も大きく、市場で大きな力を発揮している。
国内の老舗メーカーも自社ブランドの販売店を展開しているが、企画・製造・仕入・流通・販売といった工程ごとに専門企業に依頼することが多かった。分業化で専門性が高まり、品質の高い商品製造や快適な販売環境を実現できる一方で、コストアップにつながり収益性が低下するというマイナス面もある。業務提携や経営統合、自社ECサイトの強化などで収益の改善を図っている。
他方、しまむらのように複数のブランド展開をしつつ、商品をアパレルメーカーから仕入れて販売することに特化している会社もある。仕入にかかわる原価は高くなるが、物流・出店・販売面でのローコストオペレーションを意識した仕組みを構築。低価格で確実に販売することを目指しており、堅調な業績をあげている。また、ネット上に独自の販売プラットフォームを展開し、アパレル商品の販売で収益をあげる企業もある。

EC(e-コマース)で拡大する通信販売

コロナ禍で、外出自粛や在宅勤務が浸透。買い控えや衣類のカジュアル化が進んだこともあり、ファッション関連の売上は大きく落ち込んだ。その後、売上は回復傾向にあるが、多くの業界で商品の値上げが続いていることもあって、ファッション関連への支出はコロナ以前と比べて、まだ完全回復とは言い切れない。総務省統計局の家計調査年報によれば、2022年の1世帯あたりの月間支出(「被服及び履物」)は7640円と、2019年の9074円を上回れていない。
ファッション業界においても、消費者意識の変化やニューノーマルに対応できるビジネスモデルへの転換が求められている。低価格品では、金額だけでなく他社との差別化が、また、値上げした商品でも機能性が高いなど商品力の高さが肝要になるだろう。
加えて、これまでは店舗での販売が中心だったが、スマートフォンやタブレットを用いて、インターネットを通じ買い物をするBtoC-EC(消費者向け電子商取引)に各社注力している。ファッション業界に限らず、実店舗を運営する多くの小売業が改めて実店舗の存在意義を再考し、消費行動の変化に対応する動きをみせている。メーカーやブランドだけでなく、個人が企画・製造した商品を自社のECサイトで直接販売するケースもある。D2C(Direct to Consumer)といわれるビジネスモデルで、実店舗を構えたり、小売業者を介したりする必要がないため、コストを抑制できる。また、SNSを通じて消費者とダイレクトに対話できるため、商品への要望や意見を商品開発マーケティングに生かせる。

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、2022年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、前年比9.91%増の22兆7449億円だった。
2022年のBtoC-EC市場で、「衣類・服装雑貨等」のEC化率は21.56%。「書籍、映像・音楽ソフト」の52.16%や「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の42.01%と比較すると、まだEC化率が高いとは言えない。ただし、「衣類・服装雑貨等」の市場規模は2兆5499億円と、「食品、飲料、酒類」の2兆7505億円、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の2兆5528億円に次いで大きい。オンライン接客、商品の現物をチェックしてからECサイトで購入できるショールーミング店舗の設置、ECサイトでの購入商品の店頭受け取りといった工夫をさらに進展させることで、一層の市場拡大に期待がよせられている。

業界関連⽤語

プレオーガニックコットン

無農薬栽培を始めて3年未満の綿のこと。 有機栽培綿であるオーガニックコットンは、3年以上農薬や化学肥料を使っていない土地での栽培が認証の条件となっており、生産者は生産開始から認定されるまでの3年間は生産量と収入が減るために、その期間に栽培された綿を「プレオーガニックコットン」として販売しようという動き。農薬などの影響は少なく、環境に優しい素材といわれている。

RFID

Radio Frequency Identificationの略で、ICと小型アンテナが組み込まれた電子タグ。電波を介して情報を読み取る非接触型の自動認識技術で、商品のセキュリティーや、生産、在庫、物流管理などで利用されている。また、いま人がどこにいるのかというプレゼンス情報を管理する目的での利用にも注目されている。

SPA

Speciality store retailer of Private label Apparelの略。商品企画から製造・販売までを自社で行う企業で、日本では製造小売業といわれている。米国の「GAP」が自らを定義した言葉といわれており、国内では「ユニクロ」や「無印良品」などがよく知られている。需要変動のリスクをすべて負うことになるため、消費者ニーズに素早く対応する必要があり、販売情報を速やかに追加生産に結び付けるQR(Quick Response)体制が重要とされる。

CtoC-EC(消費者間電子商取引)

メルカリ」や「ラクマ」などのフリーマーケット専用のアプリケーション(通称「フリマアプリ」)が有名。アパレル・服飾関連商品は取引が多く、中にはインスタグラムに新しいコーディネートを投稿することだけを目的に、次々と服を買ってはフリマアプリで販売するという人もおり、アパレル・服飾業界の電子商取引に与える影響を指摘する声もある。

BOPIS

BOPISとは、「Buy Online Pick-up In Store」の略で、「ECサイトで購入した商品を、実店舗で受け取る購入スタイル」のこと。購入者には、宅配される時間を気にせず自分の好きなタイミングで受け取れる、送料がかからない、自宅の最寄りの店舗で受け取れるなどのメリットがある。一方、メーカー側には実店舗に寄ってもらうことで、“ついで買い”を期待できる、宅配よりも物流コストが安いなどのメリットがある。

SHEIN(シーイン)

中国発のアパレルECショップで、世界各地で販売を行っている。低価格と幅広いユーザーに対応できる多様な商品が特徴で、実店舗を持たず自社ECサイトを通じて消費者と直接取引を行っている(direct-to-consumer、DTC、D2C)。アメリカのZ世代に認知されだしたことをきっかけに、アメリカで大ブームとなり、いまでは積極的に世界展開を行っている。SHEINの日本語サイトによれば、一万人の従業員を抱え、150以上の国と地域にサービスを提供しているとのこと。日本には2021年に本格進出し、原宿に常設のショールームをオープンしている。なお、自社工場を有しておらず、1000を超えるサプライヤーに商品を発注している点も特徴だ。

どんな仕事があるの︖

アパレル・服飾関連業界の主な仕事

マーチャンダイザー(MD)
市場動向やシーズンのトレンドをいち早くつかみ、「売れる商品」を予測する。そのうえで予算や商品内容の構成、販売方法までを手掛け、ブランドの方向性を決める全体の要となる。

デザイナー
生地や染色などに関する深い知識の他、トレンドをつかむマーケティングの才覚、営業やプレスと協力していくためのコミュニケーション能力など、センスのほかにも幅広い技能が要求される。

パタンナー
デザイナーがイメージした服を実現するため、型紙(パターン)をおこす。
製品の品質を左右する重要なポジション。

プレス
アパレルメーカーや繊維会社、あるいは販売店、輸入商社などの広報部門で、自社製品をマスコミや消費者にアピールする。ブランド戦略の中核を担う。

バイヤー
自社のブランドポリシーやトレンドに合致する商品を見つけ出し、買い付けてくる。消費動向の把握のほか、トレンドを読むための情報収集能力などが求められる。

エリアマネージャー
自社のチェーン店舗を複数統括し、担当する地域の特性を理解し、売上を向上させ、利益を上げるための戦略を担う。

ショップマネージャー
ショップの運営全般にわたる最高責任者。在庫管理、売上管理、スタッフの教育や、エリアマネージャーと協力して販売戦略の策定と実行をする。その他、自ら接客を行うこともある。

ファッションアドバイザー
ショップの店頭にて接客を行う販売スタッフ。ショップの店頭にて商品の提案やコーディネートのアドバイスなどの接客を行う販売スタッフ。

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アパレル・服飾関連業界の企業情報

※原稿作成期間は2023年12⽉28⽇〜2024年2⽉29⽇です。

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