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ホテル・旅行業界

業界の現状と展望

急増する宿泊特化型ホテル

急増する宿泊特化型ホテル

ホテルは、宿泊はもちろんレストランやバーなどでの飲食、結婚式や宴会の開催など、さまざまなサービスを提供し、それによって収益を上げている。最近はホテルメイドのパンやお菓子、アメニティーグッズなども人気が高い。こうしたフルサービスホテルに対し、宴会場を持たず宿泊に特化したサービスを提供するいわゆるビジネスホテルの新規開業が、インバウンド需要の拡大に伴って増加した。

ホテル業界は、ホテルの運営サービスと、土地・建物の開発投資という2つの側面がある。大型ホテル施設を自ら所有しサービスを提供するようなケースは、いまでは少数派となりつつある。
近年のホテル施設は、投資法人や不動産会社、鉄道会社などが所有し、ホテルの運営を専門業者が行うケースが増えている。日本に進出してくる海外ブランドホテルなどではこういったケースが多い。
国内では、御三家といわれる帝国ホテル 東京、The Okura Tokyo、ホテルニューオータニや、マリオット・インターナショナル、ヒルトン・ワールドワイド、ハイアットホテル&リゾーツ、IHGホテルズグループなど外資系ホテルが高級ホテルとして知られている。他にも、ザ・プリンス(西武)、東急ホテル、阪急ホテル、都ホテル(近鉄)、ホテルメトロポリタン(JR東日本)などの鉄道系ホテルや、三井ガーデンホテル(三井不動産)、ロイヤルパークホテル(三菱地所)、ヴィラフォンテーヌ(住友不動産)などの不動産系ホテル、ビジネスや宿泊に特化したホテルが特徴のアパグループ、ルートイングループ、ドーミーインを展開する共立メンテナンスなど、多種多様な事業体によるホテルがある。

宿泊料金の上昇で収益拡大のホテル業界だが、人材不足が課題に

観光庁の「宿泊旅行統計調査」によれば、2022年12月時点の宿泊業を営むホテル、旅館、簡易宿所、会社・団体の宿泊所などの施設数は6万1,359施設。ただし従業者数が100人以上の大型の宿泊施設は1,096施設で全体の1.8%にすぎず、10人未満の宿泊施設は4万7,695施設と全体の77.7%を占めている。

コロナ禍で宿泊客が激減し、2020年5月には宿泊施設全体の客室稼働率が12.9%に落ち込んだこともあったが、GoToトラベルキャンペーン全国旅行支援が後押しとなって稼働率は徐々に回復。2023年4月には入国者に対する水際対策が撤廃され、海外からの来訪者は右肩上がりで急回復した。日本政府観光局(JNTO)の資料によれば、2023年10月に単月で初めてコロナ前の2019年同月を上回った。2023年の訪日外客数は2,506万6,100人となり、年間でも2019年比で78.6%まで回復。2024年は、コロナ前を超えるとみられている。客室稼働率も回復傾向にあり、2023年8月からは全体で60%を超える水準で推移している。2019年10月の水準には達していないものの、2023年10月の客室稼働率はシティーホテルが75.0%、ビジネスホテルが74.5%と高い水準をキープしており、上昇傾向にある。

ホテル業界各社はこれまでも、コロナ禍における収益確保を目指して、国内観光旅行客やマイクロツーリズム客の獲得、長期滞在プランの提供など、多種多様なイベントやプランを繰り出す工夫を凝らしてきた。行動制限や水際対策がなくなり、観光やビジネス需要の回復とともにホテル業界の収益は改善。ややもすれば客室稼働率重視で価格を抑えていた面もあったが、円安効果で訪日する外国人客の増加もあり、特に都市部や有名観光地の客室単価は上昇幅が大きく、収益改善につながっている。
一方でホテル業界全体の課題が人材不足だ。正社員だけでなく客室清掃やレストランなどでもその傾向が見られ、空室があっても人員不足で客室稼働率を思うように上げられないというケースもある。

旅行予約はインターネットが主流に

旅行予約はインターネットが主流に

旅行業界は、交通、宿泊など旅行に関する商品を仲介あるいは企画して販売する。消費者のニーズやトレンドを読み取り、航空座席やホテル、現地での観光などを組み立てて、パッケージツアー(募集型企画旅行)を企画する。
そのツアーを仕入れて消費者に販売するのが旅行代理店だ。旅行会社の多くは旅行代理店の機能も持っている。
鉄道会社や航空会社、バス会社などが代理店業を行っているケースもある。

最近はネットでの旅行予約が主流になりつつあり、老舗旅行会社も小規模店舗を減らし、その分ネット販売や大規模店での販売に力を注ぐなどして、収益率アップを図っている。近年はパッケージツアー(募集型企画旅行)ではなく、ホテルや飛行機、鉄道などの交通手段、現地ツアーなどの手配(手配旅行)を、個人や企業、団体にかわって手掛ける業務をメインとする旅行会社も多い。
老舗旅行会社とネット旅行会社だけでなく、ネット旅行会社間の競争も激しくなっている。

深刻な人材不足。現在と将来を見据えた対応が求められる旅行業界

日本政府観光局(JNTO)の推計によると、水際対策の撤廃もあり、2023年の訪日外客数は2,506万6,100人に増加、伸率は前年比で554.1%増と急回復した。国別では、韓国が695万8,500人と最も多く、台湾(420万2,400人)、中国(242万5,000人)、香港(211万4,400人)、アメリカ(204万5,900人)と続いている。コロナ前の2019年との比較では、年間の訪日外客数は78.6%まで回復した。10月には2019年同月比で100%を超えており、回復が遅れている中国人団体観光客が加われば、2024年はさらなる増加に期待できそうだ。
国内旅行は、底堅い日本人観光客に加え、インバウンド需要もあり堅調だ。一方で海外旅行は円安の影響もあり、厳しい状況が続いている。法務省出入国在留管理庁によれば、2023年の日本人出国者数(*)は962万4,152人。近年増加傾向にあるとはいえ、年間で2,000万人を超えていた2019年と比較すると50%にも満たない。
国内においては人材不足に加えて、原材料費や人件費の上昇もあり、2024年は旅行業界各社の実力が試されることになりそうだ。コロナ前には社会問題化していたオーバーツーリズムへの対策を求める声が、再び大きくなっていく可能性もある。

業界関連⽤語

FIT:Foreign Independent Tour

団体旅行パッケージツアーではなく、個人で海外旅行に行くこと。個人手配旅行ともいわれる。海外観光旅行が自由化された1964年からしばらくは、団体旅行やパッケージツアー で海外に行くことがほとんどだったが、海外旅行経験者が増えるにつれて旅行目的も多様化。格安海外航空券の登場もあり、一般的になってきた。近年は、ネットで航空券やホテル、レストラン、送迎などが手軽に予約できることもあり、FITで旅行する人が増えている。

マイクロツーリズム

自宅から1時間程度を目安とする、同一都道府県や近隣の都道府県など近場への旅行のこと。地元の魅力をこれまであまり興味を示さなかった人たちに知ってもらえるので、新しい旅行の形として注目されている。

オーベルジュ

フランスで発祥した、郊外や地方にある宿泊施設を備えたレストランを指す。都会の騒がしさから離れ、その土地で生産された野菜、肉、魚介類などの新鮮な食材を使った料理が味わえることが特長。ホテルとの違いは、レストラン主体で営業している点が挙げられる。

Airbnb(エアビーアンドビー)

Airbnb(エアビーアンドビー)は宿泊施設を貸し出す人向けのウェブサイトを運営している。
外国人訪日客の増加で宿泊施設が不足していることや、空き部屋を活用し収入を得られるとあって、日本でも登録物件数は増加の一途にある。

ただし、分譲マンションでは、見知らぬ旅行客が出入りすることで所有者同士が対立したり、賃貸物件をAirbnbに登録したりするトラブルも発生している。

ハラール認証

インドネシアやマレーシアなどはイスラム教徒が多く、来日にはイスラム教の戒律に対応した食事やサービスの提供が必要で、その代表が、「ハラール」。

旅行客の積極的受け入れには、食事やサービスなどがイスラム法の基準に合致している証明であるハラール(イスラム法において合法なもののこと)認証が必要。ハラール認証には、禁止されている食材が含まれていないかだけでなく、食材の保存方法や、加工、調理の過程が正規の手順に従ったものであるかどうかも重要となる。

OTA

OTAは、Online Travel Agentの略で、実店舗を持たずネット上だけで取引を行う旅行会社のこと。航空券や国内外の宿泊施設の手配、宿泊と航空券をセットにしたダイナミックパッケージ、旅行保険商品などを取り扱っている。問い合わせにはメールやチャットで対応し、24時間いつでも検索や閲覧ができ、ネット上で決済まで完結するので、利便性を求める顧客の支持を集めている。

MC(マネジメントコントラクト)

ホテル(宿泊施設)運営方式の1つで、国内では外資系ラグジュアリーホテルで採用されていることが多い。ホテル経営には、所有、経営、運営の側面があり、御三家を含めた独立系や鉄道系といった日本のホテルや旅館の多くは、所有者が直接経営と運営を行う、所有直営方式が多い。一方で、ホテルの所有と経営(従業員の帰属など)は不動産会社などのオーナーが担い、ホテルの運営のみ高いブランド力を持つ専門のオペレーター会社(マリオット・インターナショナルやヒルトン・ワールドワイドなど)に委託する方式をMC(マネジメントコントラクト)方式という。他にもリース方式フランチャイズ方式といった運営方法もある。

MICEとBPO

MICEとは、法人や学会などの会議や研修「Meeting」、報奨旅行「Incentive Travel」、学会開催や国際会議「Convention」、展示会やイベント開催「Exhibition/Event」の頭文字をとったもの。会議やパーティーの会場、参加者の宿泊施設、鉄道・飛行機・バス・ハイヤーといった交通機関などの手配を一括で請け負うことが多く、一般の観光旅行よりも消費額が多いため、旅行会社にとってもメリットが大きい。
また、BPOとは、Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の略。旅行業界が得意とする、受付、問い合わせ対応、入金・支払い・精算業務、手配など、これまでの経験とノウハウを生かして、自治体や企業、団体などからの要望に応じてさまざまな解決策とサービスを提供する。自治体から受託した新型コロナワクチン接種事業もその1つで、コロナ禍にあっても旅行会社の収益を支えた。

どんな仕事があるの︖

ホテル業界の主な仕事

ホテルクローク
宿泊予約の受付、チェックインからチェックアウトまでに生じるさまざまな手続きやサービスを行う。ホテルの利用客への各種案内も担当。

宿泊予約
電話やメールなどでの宿泊予約に対応。空室状況や料金を確認し、受け付ける。

コンシェルジュ
レストランの案内から観劇・映画の予約まで、お客さまの質問やリクエスト全てにこたえる案内役。さまざまな情報に精通することが求められる。

バンケット
日本のホテルにおいて大きな売り上げを占める「宴会」を仕切る。

企画
季節ごとのイベントやディナーショー、ブライダルプランなどのイベントを企画し、集客を図る。

旅行業界の主な仕事

・カウンターセールス
来店した顧客にパッケージツアーや航空券などを営業・販売する。顧客のニーズを読み取り、プランを提案するなどコンサルティング能力が求められる。

・団体セールス
企業や学校、各種団体など大口の顧客を訪れ、旅行商品を営業する。顧客の要望に合わせて企画を立て、ツアーの場合は添乗も行うなど、その旅行商品に関する全ての業務に携わる。

・企画
旅行商品となるパッケージツアーなどを企画する。売れる企画を立てるためには、アイデアはもとよりマーケティング能力も必要。

・仕入れ
航空券、鉄道など交通機関の座席やホテルの部屋を仕入れる。仕入れた座席・ホテルから企画が立てられることもあり、企画セクションとの連携が大切。

・手配
現地での観光バスや食事、ガイドなどを手配する。旅行には日程変更やキャンセルがつきものなので、状況に合わせて臨機応変に対応しなければならない。

・ツアーコンダクター
パッケージツアーに同行し、旅行者の引率やスケジュール管理、時にはガイドも行う。最近は専門の派遣会社に登録して仕事をするケースも増えている。また、外国語を話せる方が有利なことも多い。海外添乗の場合、資格が必要。

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ホテル・旅行業界の企業情報

※原稿作成期間は2023年12⽉28⽇〜2024年2⽉29⽇です。

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