
食品業界
業界の現状と展望
豊かな国民生活の実現に貢献する食品産業
調味料・油・小麦粉などの食品原料(食材)、パン・菓子・冷凍食品などの加工食品、ビール・清涼飲料水・コーヒーなどの酒類・飲料などを開発・製造し、消費者に提供する食品業界。消費者のニーズに応じた、安心・安全でおいしい食品を提供することで、豊かな国民生活の実現に貢献している。
農林水産省の「農業・食料関連産業の経済計算(概算)」によれば、2021年における農業・食料関連産業(農林漁業・食品製造業・関連流通業・外食産業など)の国内生産額は、前年比0.3%減の108.5兆円となったが、全経済活動の10.5%を占めており、依然として大きな規模だ。部門別では、農林漁業が12.4兆円(全体比11.4%)、食品製造業が36.5兆円(同33.6%)、関連流通業は35.4兆円(同32.7%)、外食産業は19.1兆円(同17.6%)となった。
2021年はまだコロナ禍の最中で、外食産業部門の支出が減少していることがデータからも読み取れるが、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の位置付けが、2類から5類に変更されたこともあり、近年は、外食の利用者や頻度も増加傾向にある。加えて、ロシアのウクライナ侵攻で穀物類が高騰し、さらに円安の影響で輸入コストもアップ。原材料費だけでなく電気代や人件費も上昇したことから、各社は値上げを決断。価格転嫁を進展させたため、2022年、2023年は多くの品目が値上げ、2022年以降の数字は前年比増が見込まれる。
コロナ禍で消費行動に変化。魅力的な商品開発と海外展開がさらに重要に
「食」は人間にとって欠くことができないだけに不況に強い産業とされているが、少子高齢化が進む国内食品市場については決して楽観できる状況とは言い切れない。
さらに、コロナ禍での経済活動の自粛は、生産・製造・加工・流通・販売など食に関わる業界に大きな影響をもたらした。コロナ禍で、冷凍食品への需要が高まるなど、消費行動も変化した。冷凍食品は、これまでは業務用としてのニーズが高かったが、近年は家庭用のニーズもより一層高まっており、各社は新製品を続々と市場に投入。日本冷凍食品協会の統計資料によれば、生産量ベースで家庭用の冷凍食品は増加傾向にあり、2020年に大幅拡大。2021年には家庭用が業務用を上回り、以降も増加が続いている。
コンビニやスーパーなどの小売店では、冷凍食品専用スペースを拡大するなど、新製品の開発と販売に力を入れている。例えば、ローソンは冷凍おにぎりを実験販売。消費期限がのびることで店舗への配送回数を減らせるため、物流の効率化が期待できるだけでなく、店舗での食品ロス削減効果も見込んでいる。
一方で、食品業界は原材料費の高騰に見舞われた。ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響も加わり、原材料費増は加速。食用油や小麦などの価格だけでなく、原油高で包装資材や物流費用、電気代なども上昇。企業の業務改善や効率化だけではコストアップは吸収できず、食品業界の企業は2022年頃から商品の値上げに踏み切った。値上げは、多くの品目に拡大し、2023年に入っても値上げラッシュは続いたが、年末には大きな値上げを掲げる企業は少なくなり、いったんピークアウトしそうな状況だ。他方、消費者の節約志向は根強く、メーカーのブランドであるNB(ナショナルブランド)から、大手スーパーとメーカーが共同で生産するいわゆるPB(プライベートブランド)へ需要が流れている商品もある。また、安価でボリュームのある新商品を販売する大手メーカーも登場。差別化がしづらいといわれる商材が多い食品業界においては、価格が上がっても訴求できる魅力的な商品開発はますます重要な要素となっている。さらには、少子高齢化で国内消費減少が懸念される食品業界にあっては、海外売上比率を高めることも重要だ。
求められる「食の安全」への高レベルでの意識と対応
徹底した衛生管理が求められる食品業界。「食の安全」については高い意識が必要不可欠だ。近年、食品に金属片やプラスチック片、虫、カビなどの異物が混入していたとして、メーカーが自主回収するケースが増えている。
数千万個単位の個数で自主回収するケースもあり、異物混入による自主回収は、企業経営においても大きな影響を与えることになりかねない。SNSなどを通じて異物が混入している写真やメーカーとのやりとりを録音した会話などの情報が拡散する可能性もあり、対応を誤ると、これまで築き上げたブランドイメージや信頼を一瞬にして失ってしまうことになる。食品メーカーには、製造の質だけでなく、その後の対応も高いレベルが求められている。
業界関連⽤語
植物肉と培養肉
植物肉とは、大豆などの植物性の材料を使って作られた人工肉で、ハンバーグやハム、ソーセージなどの加工品がある。世界各国で研究・開発が進んでおり、見た目や味わい、食感は、動物性の肉とあまり変わらない商品も登場している。国内でも研究開発は進められており、2023年6月には雪国まいたけが、きのこを主原料とした代替肉の開発に成功したことを発表。年度内に最初の製品を販売することを目標に準備していることも明らかにした。
健康志向や動物保護意識の高まりもあって、植物肉への関心は強く、世界的にも需要は増加傾向にある。また近年は、動物性の肉以外の素材を由来とする新機軸の代替肉や、エビ・卵といった食材の代替食品の開発も進んでおり、すでに販売されている商品もある。
一方で、動物から採取した細胞を培養して作られるのが培養肉。日本でも政府が培養肉の研究を後押ししており、実際に食べられる培養肉の開発に成功し、試食を実現した研究チームもある。安全基準や既存の畜産業との競合といった論点も多いが、将来発生する可能性が高いとされる「タンパク質危機(人口増加や環境の変化によって、人口に対してタンパク質の需要と供給のバランスが崩れること)」の解決策の1つとして、培養肉への期待は大きい。
特定保健用食品(トクホ)と機能性表示食品
双方とも、健康への働きを表示できる保健機能食品だが、2つの食品の大きな違いは国(消費者庁)の審査の有無。特定保健用食品は、事業者が最終製品によるヒトでの試験を実施、科学的に根拠を示した上で申請し、食品ごとに許可を取得する。一方で、機能性表示食品は、最終製品による試験は必要なく、文献や論文の引用によって科学的根拠を示せる。製品開発にコストと時間がかかる特定保健用食品に対し、機能性表示食品は既存の文献や論文を引用でき、消費者庁への届け出が受理されれば商品を販売できる。
賞味期限と消費期限
農林水産省の定義によれば、お弁当や洋生菓子など、長く保存が利かない食品に表示されているのが消費期限。開封していない状態で、表示されている保存方法に従って保存したときに、食べても安全な期限を示している。 一方、スナック菓子・缶詰・ソーセージなど、主に常温や冷凍で、比較的長期間保存が利く食品に表示されているのが賞味期限。開封していない状態で、表示されている保存方法に従って保存したときに、おいしく食べられる期限を示したもので、賞味期限を過ぎるとすぐ食べられなくなるわけではない。
昆虫食
将来的な食糧不足に対する有益な対策の1つとして考えられているのが昆虫食だ。国内でもイナゴやハチの子が食べられていることは知られているが、アジアや南北アメリカ、アフリカなどの国々でも古くから昆虫が食されており歴史は意外と古い。タンパク質やミネラルなどの栄養価が高く、牛や豚などの家畜と比べて小規模な土地で養殖できるなどメリットも大きいため、グローバル規模の大手食品企業も昆虫食に注目している。
ラベルレス飲料
商品名や成分などの法定表示はダンボールに記載し、フィルム状のラベルをなくしたペットボトル飲料。数年前からEC(ネット通販)専用の商品として発売されていたが、自宅で過ごす人が増えたことや、廃棄時にラベルをはがす手間が省けることなどがあり、人気が高まっている。各社とも、差異化を図ろうと、ボトルの形状やデザイン、配送用ダンボールなどにこだわった商品開発に力を入れている。
遺伝子組み換え食品とゲノム編集食品
遺伝子組み換えでは既存の遺伝子に別の遺伝子を挿入することで、新たな特徴を持つ食品を作り出しており、厳格な国の安全性審査を受けることが義務付けられている。他方、ゲノム編集では、食品の遺伝子の一部を切り取ることで、これまでと異なる新たな特徴を持つ食品を作り出している。もともとある遺伝子を切るだけなので、これまでの品種改良や自然界で起こる突然変異と同じような仕組みと考えられており、企業にはどのようなゲノム編集をしたのかといった内容の届け出は求めるが、遺伝子組み換え食品のような安全性審査は不要とされている。
ゲノム編集食品には、アレルギー物質が少ない卵や血圧を下げる成分が多いトマト、肉厚のマダイなどがある。ただし、安全性や表示方法などに関してはさまざまな議論があり、アメリカとEUでも対応が異なるなど、課題もある。
空気からタンパク質を作る
文字どおり、微生物と空気内の二酸化炭素や水などを原料にタンパク質を作り出すことに成功している企業がある。フィンランドのソーラーフーズ社は、独特の手法で「ソレイン(Solein)」と呼ばれる、粉末状のタンパク質を開発。成分の多くがタンパク質で、必須アミノ酸のすべてを含んでいる。シンガポールでは、「ソレイン」を原料にしたアイスクリーム「Solein Chocolate Gelato」を提供するレストランも登場している。
一方、アメリカのエア・プロテイン社は、空気中に含まれる炭素などの成分をもとに「エアミート(Air Meat)」と名付けられた代替肉(タンパク質)を作り出すことに成功している。
どんな仕事があるの︖
食品業界の主な仕事
マーケティング市場をリサーチ・分析し、新商品の開発や既存商品のリニューアルを考案する。商品の魅力を消費者に伝え、購買意欲をかき立てるようキャンペーンの企画・立案なども行う。
商品開発
原料の選定から、調合、賞味期限の設定など、工場での生産システムの検討を行い、商品を作る。
営業
スーパーやコンビニなどの小売店に自社商品を売り込む。売上をアップさせるため、キャンペーンなどの企画も行う。
広報
マスコミや消費者からの問い合わせに対応する。消費者との接点が多く、近年の食の安全に対する関心の高さから、誠実かつ迅速な対応が求められる重要なポジションといえる。
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食品業界の企業情報
※原稿作成期間は2023年12⽉28⽇〜2024年2⽉29⽇です。
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